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渡辺源四郎商店~突きつけられる矛盾

渡辺源四郎商店『どんとゆけ 』
「死刑」という現実を、わかりやすく、身近に丁寧に噛み砕いて、その代わり口移しで無理やり腹に流し込んでくるような、苦しくて、残酷な芝居。これを消化できるのか。死刑の是非が、あっという間に自分事と化す。これは凄い。
続いて『だけど涙が出ちゃう』の当日券に連続で並ぶ。『どんとゆけ』の前日譚とあれば、見逃せない。こちらは死刑とともに、安楽死を通じて死と自己決定権をも描く。もともと口数の少ない人の話す津軽弁が、答えのないテーマへの歯がゆさや苛立ちを増幅し、笑いにも包む。
ネタバレになるが、この二作、死刑員という仮想の制度の下での死刑執行場面を描く。犯罪被害者の遺族が死刑員として執行を決定し、自らの手で刑を執行するのだ。
執行官は淡々と、「手を下すのはご自身ですから」と手続きを進める。
そこで顕れる様々な矛盾、残酷、憎悪と寛容。罪を憎んで人を憎まないこと、人が人を裁くこと。それがどういうことか、観客は笑いとともに突きつけられる。
青森を地盤とする「なべげん」。初めて見たが、その純朴さ、直球ぶりに衝撃を受けた。次回が待ち遠しい。