見出し画像

MONO その鉄塔に男たちはいるという+ ~見えない恐怖とのたたかい

土田英夫氏の代表作と、その前日譚の新作の併演。いずれも秀作。近未来、前線の国のキャンプから逃げ出してきた男たち。戦闘と死への恐怖、同調圧力や、自分がずれていないかという、孤独への恐れ。手練れの役者たちの軽妙な会話で心の深層を描く、会話劇として素晴らしい完成度。
一方の新作は、倦怠な夫婦と小姑、その友人が、その戦場になる島を訪れる話。夫婦、友情、家族、それぞれが、『それを言っちゃあ、おしめえよ』というところにドンドン踏み込んでいき、傷に塩を塗り込みまくる痛快さ。それが、もう涙を誘うほど物悲しさまで誘う。笑ってみてるけど、実は自分もそうではないかと思わせる現代の心理ホラーでもある。#立川茜 さんのシビアでキレのある演技が印象的。彼女は注目。
どちらも「見えない恐怖とのたたかい」や「信じていたものが幻だったときの絶望」と捉えると、まさに現代の空気そのものだ。22日まで、吉祥寺シアター。