見出し画像

ものづくりや創造のお話 - はじまりはいつも「心の揺らぎ」から

こんにちは、代表の江藤彰洋です。

お陰様で2024年9月9日で法人として4年目を迎えることができました。まだまだ経営基盤を整えながらの歩みではありますが、ここまで拘り抜いて仕事ができていることは素直に嬉しいです。本当に皆様いつもありがとうございます。

せっかくの節目ですので、今回の記事では私たちミチクサ醸造所の根幹でもあります「ビール作り」や「モノづくり」、ひいては「何かを生み出すこと」についてどのような考えを持っているのか。ちょっとだけ熱を込めて話していけたらと思います。

内容はやや肉厚ですが、本質的にはほぼ全ての社会人の方に関わりのあるお話ですので、誰にとっても読み応えのある面白い記事になっていると思います。

ぜひ最後まで読み進めて頂けると幸いです。


前略:
心の揺らぎから全て始まる

突然ですが、私は以前、商品開発や町づくりなどの仕事をされている経営相談員の方から以下のことを助言的に語られたことがあります。

「水でも麦でも何でもいいからさ、とりあえずそれらしい物語を作って地域の地ビール・クラフトビールを名乗ったらそれでいいんだよ。メディアや自治体、町の人達からはチヤホヤされるし、簡単に売上が立つよ。誰も何もわかってないしわかろうともしないんだから、結局何だって良いんだよ。」

皆さんはこの発言から何を感じますでしょうか。私自身は違和感を感じつつも、これもまた一つの事実なのかもしれないなとも思いました。複雑な心境にさせられる発言であることは否めません。

さて、ここでこの発言の是非を問いたいわけではありません。今回の本題でもある「ものづくり」について話を展開する上で、敢えてこのような入り方をしてみました。

共感や違和感など、人それぞれに何らかの心の揺らぎがあったと思います。その感情を大切に、今回の代表ブログは読み進めて頂けると幸いです。

それでは本題に入ります。


小さな問いかけ

私たちは今年の春から正式に「オリジナルビール開発支援サービス(通称:ミチクサOEM*)」をスタートしました。

このサービスは創業前の2018年頃からずっと思い描いてきた取り組みでして、ミチクサの考え方や大切にしている価値観そのものを表現した一つの手段であり作品とも言えます。

世にいうOEMとは「他社のオリジナルブランド商品を請け負って作ること」を指しますが、私たちのOEMサービスは「ご自身の手で作って頂く」が前提であり、私たちはほぼ全く手を出しません。

かと言って、よくある体験型サービスの類か?と言うとそれも違います。

これまで需要が無かったからなのか、イメージと一致する言葉が見当たらなかったので仮称で「ミチクサOEM」と呼んだりしてますが、少なくともニッチな取り組みであることは間違いないでしょう。

そんな状況下、それでも敢えてこの形でOEMを開始したということは裏を返せば「本当はこういう取り組みが大切だと思うんだけど、どうかな?共感してくれる人いるかな?」という、私たちからの小さな問いかけでもあります。

今回はそんなミチクサOEMというサービスの話に触れていくことで、ミチクサ醸造所の輪郭がさらにはっきりしてくると思いまして、そんなお話をしようと思います。


そもそも「オリジナル」とは何か

さて、改めてOEM(Original Equipment Manufacturing)とは「他社のオリジナルブランド商品を作ること」を指すわけですが、オリジナル商品のことを語る以上、絶対に避けてはならない最も大切なことがあります。

それは「オリジナルとは何なのか」というお話です。

巷には「オリジナル⚪︎⚪︎⚪︎」が溢れています。魅力的なものもあれば、魅力的には感じられないものも沢山あります。同じオリジナルでも何かが違う。その二つの違いは一体どこにあるのでしょうか。

”オリジナル”という言葉の表面をなぞると「独自の」や「ここだけの」みたいな意味合いになり、ただの希少性や差別化の話に陥りがちです。実際そのように言葉を使われている方が多いと思います。

しかし、本来の意味は「始まり」や「起源」を表す言葉です。そのオリジナル商品は何の起源になり得るのか。その商品の先に何を見ているのか。それが「オリジナル」を語る上で大切なことなのです。

つまり商品という名の一つの「点」の話ではなく、その奥に有機的に広がる「線」や「面」「立体」を感じられるほどの「点」なのかどうか。それこそが熱量やセンスなどと呼ばれるものたちの正体であり、人の心に響く力になっているのだと思います。

ちなみに間違っても短絡的なマーケティング思考などから導き出せる話ではありません。

その人・その作り手・その企業が、普段からどんなことを考えているのか、何を大切にしているのか、何のために何をしてきたのか、どんな存在で在りたいのか。

そんな生き様や在り方、大切にしている価値観への強い拘りや執念の中から生まれ落ちてくる一欠片の小さな結晶、それこそが「点」である。そんなお話です。

お金をかければいくらでも表層を装うことはできますし、後から素敵な物語を描くことだって誰でも簡単にできてしまいます。しかし人間は不思議なもので、本能的にそれらを嗅ぎ分ける力が備わっていたりするわけですね。

私たちはこの本来の意味に立ち返った上でオリジナルビールの開発に関わりたいと思っていますし、それが私たちにとってもお客様にとっても、そして今の社会にとっても大切だと考えます。


ミチクサOEMについて

「オリジナル」の話をしたところで、改めてミチクサOEMの話に戻ります。今一度説明すると、ご自身でビールを仕込んでいただくサービスです。めちゃくちゃシンプルですが、要はOEMなのに請け負わないのです。

お代を頂いて「便利さや安心感」を提供する一般的なOEMに対して、ミチクサOEMでは「不便さや不安」を終始内包します。しかも部分的でfunnyな体験ではなく、朝から晩までのhard & heavyな超実践です。

つまりこのサービスは、ビールという切り口から「ものづくりのリアル」を提供しています。そして目指している着地点はビールではなく「オリジナル」の方なのです。

ビール作りというのは、汗かく・汚れる・ヘトヘトになる。その上どんな味になるのかは究極作ってみないことにはわからない。完成品にはついつい言い訳を入れたくもなるし、手に取って頂いた時には嬉しさよりも緊張が勝る。目の前で飲んでくれる人の表情は本当は怖くて見られない。大丈夫だろうかとドキドキする。

・・・これこそが本当に自分で作った自覚のある人の本音です。誰よりも期待しているからこそ常にどこか不安で、そう簡単には「美味しいビールを作りました!」「こんな工夫でこんな味にしてみました!」なんて言えないはずなのです。

ものづくりを仕事にしている人はこの葛藤を何度も乗り越えてきたからこそプロなわけですが、私は皆さんにプロの醸造家になってほしいなんて1ミリも思っていません。ビールの作り方を完璧に理解して欲しいとも思いません。

ただ、喜びと不安と緊張と期待と…言葉では言い表せないあらゆる感情と向き合い、包括し、その上でその先の誰かに出来上がったものをお届けする。受け取って頂く。

そのような葛藤や心の揺らぎを経ていくことこそが「オリジナル」を、つまりは自分だけの価値軸を見つけていくことができる。それがものづくりにおいて本来最も大切なことなのではないだろうか。何かを生み出すとは、そういうことではないだろうか。

そんなことを思ってこんな形のOEMサービスに至りました。

もはや全くOEMではありませんが、そこに顕在的あるいは潜在的にでも価値を見出してくれた方々がいるからこそ、全国からわざわざ福岡県の片田舎にまでビールを仕込みに来てくださるのです。


私たちが届けたいこと

私たちはビールおよびビール事業を通してどんな価値を届けられるのだろうかと、ずっと真剣に考えてきました。今でも毎日問い続けています。

しかし、究極のところ私たちが届けられるものはほんの些細なものです。それよりも皆さんが皆さんの中で当たり前に大切にしていること、大切にしてきたこと。そこにビールという切り口からもあかりを灯せるように頑張る。

烏滸がましい話かもしれませんが、それに尽きると思っています。

そんな考え方のもとにミチクサ醸造所では様々な取り組みの方向性やポリシーが決まっていきます。ミチクサビール「FOC(フォク)」の話だってそうですし、このサービスももちろん同じです。

だからこそ、ビールを作りたいと思うキッカケは何だって良いのです。人それぞれに色んな動機がありますから、それを何かで無理やり上書きしたいとは思いません。

ただ、そこにもう一手間を加えることの大きさだけは知って頂きたいのです。その一手間には大切だったものを見つめ直させてくれる不思議な力があります。しかもそれは周りにやさしく伝播していきます。あたたかい気持ちの輪が広がるのです。

そうやって、皆さんの心が何となくにでも「満たされた」と思ってもらえる何かを精一杯届けていきたい。それが私たちミチクサ醸造所です。


作るより育む、育まれる

最後まで読み進めてくださりありがとうございました。なんとこの記事を書き上げるのには約2ヶ月超かかりました(汗)

クラウドファンディングの記事がA面ならば、この記事はB面に当たるかもしれません。冒頭でもお伝えしましたがそれくらい私たちの根幹に関わる内容でしたので、何度もリテイク・リメイクを繰り返し、緊張しながら公開しています。

それでもこうやって手間と時間をかけて紡いだ言葉たちは少なくとも私たち自身の糧となり土壌となって、またそこから次の新しい感性が芽生えてくる。ものづくりと同じですね。

ミチクサOEMはお客様にはもちろん、私たちにとっても手間のかかる不便なサービスです。その手間や不便さが全ての方々に必要とは思っていません。

ただ、「そんな選択肢があるんだ!」とは知ってもらいたいし、その上で自分たちにとって何が大切なのか・何が重要であるのかを改めて考えたりして、心の揺らぎや躍動を大切にしながら自らの意思で選んでいただく。

そこには大きな意味がありますし、そうやって一つ一つのことを積み重ねていく。それが育み育まれていくということであり、それがものづくりだと思います。

以上です。もし最後まで読んでくださった方がいたとしたら、直接会った時にでもSNSでもいいのでちょっとしたご感想を頂けると嬉しいです。ご精読ありがとうございました!

ミチクサ醸造所HP - オリジナルビール製造(OEM)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?