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ショートコントのようなホントの話⭐️

 「ピーンポーン」
 玄関のチャイムが鳴った。
「はーい」
「ムニャムニャムニャ」
 ん?
 日本語ではない言葉をしゃべっている。
「はーい」と外をのぞくと、丸いメガネをかけた背の低い丸顔の女性がいた。見たことのない顔だけれど、思わずドアを開けてしまった。
 女性はスマホを手にグッと一歩近寄ってくる。
 わっ! 何者? 押し売りか? 玄関に入り込むような勢いだったので、一瞬ひるんだ。
 女性はスマホの画面をわたしに見せる。
 画面には、「石」と書いてあった。
「石? ストーン?」
 日本語が話せないようなのでとっさに英語で聞いてみた。
 うんうんと女性はうなずく。
 石でなにをするのだろう? 
「あっ! 隣の人?」
 指をさすと、うんうんとうなずく。 
 お隣さんはアジア系の外国人。その人と一緒に住み始めた外国人女性だった。

 以前、ベランダにお隣から、食用の大きなカニがわんさかと押し寄せ、わたしはパニックになったことがあった。魚介類の好きなお方なんだなと知った。ときどき、ベランダで「ゴンゴン」という大きな音が響いていた。石でなにかをつぶしているような音だった。食用に使うなにかを作っているのかなと想像していた。
 だから、石が必要なのかなと考えた。

 スマホの「石」という字をわたしに見せながら、女性はジェスチャーでコップを持って飲むふりをした。
「えっ?! 石を飲むの?」
 ビックリしていると、女性は慌ててスマホになにやら言葉を入力して、変換した。
 画面には「氷」と記されていた。
「あ~氷ね、ごめん、ないの」
 女性は、「わかった」というような表情をした。

 確かに、氷は石みたいな形をしているね。
 まるでショートコントのような会話だった。






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