70講 女が男を知り、男が女を守り、子供が生まれる(第二八章)

70講 女が男を知り、男が女を守り、子供が生まれる(第二八章)

 女が男を知り、男が女を守り、二人は世界の原初の谷間に行く。そこでは永遠の徳(いきおい)が赤ん坊のなかに復ってくる。女が男の白い輝きを知り、男が女の黒い神秘を守れば、二人は世界の秘密を映す式盤となる。式盤には永遠の徳が満ちて、無極の場所がみえる。こうして女が男の栄誉を知り、男が女を恥辱から守れば、世界を流れる渓川になり、谷には永遠の徳(いきおい)があふれ、その風格にふさわしい大木(「樸(あらき)」)も復ってくる。人間は、この大木を切って器にして使うのだ。しかし徳(いきおい)に満ちた有道の士は、そのままで国を代表できる。大材を製するには、できるだけそれを割らないことだ。
 
知其雄、守其雌、為天下渓。為天下渓、恒徳不離、復帰於嬰児。知其白、守其黒、為天下式。為天下式、恒徳不差、復帰於無極。知其榮、守其辱、為天下谷。為天下谷、恒徳乃足、復帰於樸。樸散則為器。聖人用之、則為官長。故大制不割。

其の雄(おす)を知り、其の雌(めす)を守れば、天下の渓(たに)と為る。天下の渓と為れば恒徳離れず、嬰児(えいじ)に復帰す。其の白を知りて、其の黒を守らば、天下の式と為る。天下の式と為れば、恒徳は差(たが)わず、無極(むきよく)に復帰す。其の栄を知りて、其の辱を守らば、天下の谷と為る。天下の谷と為れば、恒徳は乃(すなわ)ち足り、樸に復帰す。樸を散ずれば則(すなわ)ち器と為(な)り、聖人は用いれば則ち官の長と為(な)る。故に大制(たいせい)は割(さ)かず。

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