権利という言葉について

以下は拙著『日本史の三〇冊』(人文書院)に書いた成沢光『政治のことば』の紹介です。成沢さんのこの本は学術文庫にもありますが、その文庫の解説も書いています。

「権利」という言葉は明治初期に作られたものであるが、「権」は徳川時代においても、前述の「イキホヒ」という意味を保持していた。それをうけて「権利」とは「イキホヒの利」、恣意的な利益主張というニュアンスをもっていた。だからこそ、それに対して「義(ただ)しい務」という言葉が対置されたのだというのである。「権利ばかり主張するな」という種類の説教は、この語のニュアンスからすると当然のことであったということになる。私たちの社会生活は、いまだにそこに呪縛されているのである。これは子供たちが日本国憲法の勉強をする際にはかならず伝えるべき、最重要な政治思想史、法思想史の中心問題であると思う。

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