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85/1096 フライト・トラブル

85日目は、宣言通りに飛行機の中で書いている。
今はなにより、飛行機の中にいるということがとにかく有り難い。というのも、今回の旅ははじめからトラブルに見舞われたのだ。
しかし、毎日投稿を途切れさせるわけにはいかない。そこへの執念がこんなにも強いことに自分でも驚いている。

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昨夜のこと。わたしはいつものように日本の朝の時間に合わせて毎日投稿を更新した。そして、日本に発つためにいよいよ荷造りを終えようというところだった。深夜12時過ぎ、あと5時間もすれば家を出なくてはならない。

そんな時間に、今回飛行機を利用予定だったエアフランスからメールが入る。静かな時間に突然響き渡る受信音がやけにけたたましく感じられた。
こんな時間に送ってくるとは、何かの最終確認だろうか…そう思いながら開封した。

するとそこには、この直前に絶対にあってはならないベリーベリーバッドな知らせが書かれていた。
「運行上の理由により、あなたの予約便は欠航となりました。大変申し訳ございません。どうかこの謝罪を受け入れてください。」

…な…な…なにこれ…

言うまでもないが、ショックで凍りついた。
呼吸を忘れながらそれでもとにかく読み返す。やはり同じことが書いてある。
…どうしたらいいの…!!
まとまりかけていた荷物の中で、スマホの画面を凝視したまま動けなかった。

これはもしや新手のスパムメールなんじゃないか?
予約の段階からわたしにミスがあったのか?!
エアフランスは管理が超ずさんなのか??
これはそもそも正しい情報なのだろうか???

何かの間違いであってほしいと思いながら英語やイタリア語で書かれたメールをさらに何度か読み返す。そこで、やはり間違いではない、わたしはフライトを失ったんだ…と理解した。

予定通りに日本に行く可能性がなくなったどころか、代替便の連絡が来るまで日本に行く目処の立たないという状況だ。

最悪の事態の想定が、止められない…止まらない。かっぱえびせんのように…!

このままフライトが当初の予定より数日でも遅れればイベントやセッションの中止もありうる。お申込みくださって準備をしていてくださる方々への申し訳なさで悲痛な思いだった。そのときにしなくてはならない作業などが次から次へと頭に浮かんでくる。

最悪だ……

とりあえは今の状況を急いで事務局や前夫などに知らせる。彼らと情報を共有したあと、眠気も吹き飛んでしまったわたしは、もしかしたらすぐにも届くかもしれない代替便の案内を起きて待つことにした。

みんな…ごめん…こういう事態だってあり得るってこと、想定してなきゃいけんかったよね…
次回からはもっと慎重になるわ…そしてもう、金輪際エアフランスは使わんよ……

わたしは荷造りとフライトに向かう緊張感から解放されてしまったことにすらも罪悪感を抱きながら、役どころを失って静止した荷物たちと一緒に、部屋でひとり膝を抱えて途方に暮れた。

そして思ったのだ。こんな時こそベストを尽くそうと。なによりも自分のために、そしてそこから世界の平和に貢献するのだ。

「おっしゃゲームやんべ」

そこからわたしの感覚で15分ほどゲームを楽しんだ頃だった。エアフランスからいつになるとも知れなかった代替便の案内メールが届く。

代替便は、元の便よりほんの数時間ほどあとのものだった。
助かった!これなら予定になんの影響もないままだ!ういゃっほーい、危機一髪だったぜー!!

時刻は午前3時になるところだった。ゲームを始めて2時間が経過していた。おかしなことだ。

とりあえず、こうしてなんとか事なきを得てわたし達は朝家を出てヴェネツィアのマルコ・ポーロ空港へ向かった。

時間に余裕はある。チケットも手元にある。
さしたる問題のない状態の、この余裕、この安心感…幸せはそう、いつだって、今、ここに…

空港でのんびり待っていると、チェックインカウンターに人が並び始めた。わたしは空港内のどこかでほっつき歩いて仕事の電話をしている夫に連絡して落ち合い、カウンターでフライトが欠航になり別便に変更になった旨を伝えた。

あとは日本に向かうだけ…寿司、納豆、めかぶ、一平ちゃん露店の焼きそば…!!

エアフランスのスタッフからは、あっさりとこう言われる。「アリタリア航空の便に移したの!だからアリタリアのカウンターに行って」
なにやらとても清々しく、行けば大丈夫…!すべてが整っているわ!言うて笑顔で見送るお姉さん。
良かった…君がいるならエアフランスはいい会社さ…そうだろう?麗しきシニョリーナ…

わたしは彼女の笑顔に癒され、こうしてすべてを許す慈愛の心で意気揚々とアリタリア航空のチェックインへと向かったのだ…

しかし…本番はここからだったのだよ諸君…

アリタリアのカウンターでは、ファニーな顔の少し禿げ始めたお兄さんが超速の貧乏ゆすりとともに対応してくれた。

ファニ禿げ超速ゆすり「パスポート見せて〜、えーーーーと、フライト変更したのね、うーーーーーん、うん、君たち搭乗者リストにないや」

夫「リストにないって、、ここに来るように言われて来たんですよ?11時20分発の〇〇便です」

禿げ速「ないなー、ない。ここじゃ埒あかないから、チケットコントロールのカウンター行って」

わたしたち「……わかりました」

怪しい…怪しすぎるよ…何がって?雲行きがだよ!!搭乗者リストに入ってないって、それは、それはもしかしたら、もんの凄いピンチなんでねーか?!

本気で競技中の競歩の選手みたいな移動をかましてチケットコントロールにたどり着き、事情を話す。
エアフランスから予約便欠航になったで〜代替便はアリタリアやで〜言われてアリタリア行ったら、禿げ速がリストにないって言ってんだけど。

チケットコントロールのお姉さんは、20秒ほどカチャカチャパソコンをいじっていたと思ったら、最後にパシーンと勢いよくエンターキーを押して、ありますよ、大丈夫。今行けば見つけてもらえます!と、便秘が解消した時のような爽やかな笑顔で言ったのだ。

だから信じた。俺らにだって、まだ人を信じる気持ちが残ってた。ふいー危なかった、助かったぜ〜の一歩手前まで行ってた。

アリタリアに戻ってみると、禿げ速は居なくなっていて、代わりに肌のめちゃめちゃ浅黒い、顔筋がかなり発達して表情が変わるたびにいちいち変顔になってしまうサバサバしたオバハンが待ち構えていた。

俺らエアフランスで欠航になって代替便もらってここに来たら禿げ速に見つからん言われてコントロールカウンター行ったらあるやんか言われて戻って来たで。

肌黒変顔サバサバ「ああ?そうなの?どれどれ……うーーん?ないねえ、見つからないねえ」

夫「コントロールカウンター行ったらあるって言ってましたよ」

黒サバ「ちょっと電話で聞いてみるわー」

夫「おねしゃす」

黒鯖「あーモシモシぃ?あのねえ、ここに欠航便の人が来ててさ、こっちで乗れるはずって言うんだけどね、ないのよ見つかんないの。だからどうにもなんないの。わたしあと5分でゲート閉じるから、どうしようかと思ってさー」

わたし「(5分でゲートが閉じる…!!)」

黒鯖「ないない、名前でも苗字でも行き先でも検索したけど、ないのよねー、うん、よろしくね」

黒鯖「あのねえ、人が来るからちょっと待って」

うちら「……ハァ……」

これはヤバイ。ゲート閉じたらもうアカンのでは…?明日にも組んだ仕事が待ってるんだぞ!!涙 頼むよ大丈夫なはずだろ?!そうだと言ってくれよ!!!涙

やってきた金髪キビキビお姐さん「(15秒ほどパソコンをいじって)あったし普通に。」

ぐぉらお前らぁあああああああああーー
お前らとにかくあれだぞーーーーーーー
なっとらんわいろいろなっとらんわあああああ
白髪相当数増えたのわかるよねぇええええ??

というわけで、やっと乗ってやっとこうして書いている。暗かった楕円形の窓の外はパステルカラーの色見本のようなグラデーション。
朝だ。日本上空まであと少し。

お会いできるみなさん、ありがとう。
人生の時間は人の命の時間。互いに大切に会おう。。

というわけで、今日は成田までの道中を日記にした日であった。
また、明日ね!!

※結局成田からの電車でやっとアップできました…

毎日無料で書いておりますが、お布施を送っていただくと本当に喜びます。愛と感謝の念を送りつけます。(笑)