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5周年記念作『いつもの木曜日』

8月26日は、私にとってとても大切な日です。
どの日をデビュー日とするかは人それぞれだと思いますが、私は『木曜日にはココアを』の発売日としているので、私の作家としての誕生日なのです。

おかげさまで、今日、無事に5周年を迎えました。
たくさんの方々の支えでここまで書き続けてこられたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

そして今日、『いつもの木曜日』が宝島社より発売となりました。
『木曜日にはココアを』の、その後ではなく「その前」のスピンオフ12編+特別掌編の計13話です。
作家5周年を記念して、絵本のような作りに仕上げていただきました。

この作品は、『木曜にはココアを』が2020年の3月8日に第1回宮崎本大賞を受賞したことから生まれました。

授賞式のため宮崎行きの計画を立てようとしたころ、誰も予想しなかったコロナ禍が始まり、いったい何が起きているのか、何が正しいのか、どうすればいいのかわからないまま、時勢の考慮で私は横浜にとどまることに。
宮崎の書店員さんたちがくす玉を割ってお祝いしてくださった動画を観て、涙をぼろぼろ流した日のことを鮮明に覚えています。

それでもまだあの頃は、この事態がこんなに長引くとは思っていなかったのです。
今はこらえよう。延期になっただけで、必ず会えるから、会いたいから、それまでは自分にできることをしよう。
そこで私が始めたのが、毎週木曜日に『木曜日にはココアを』のスピンオフを書いてネットにアップする、ということでした。
全12話なら12週。
3月12日(木)に第1話をスタートさせると、最終回の第12話は5月28日(木)になる計算でした。そのころにはきっと私たちは日常を取り戻していて、私は宮崎に行ける。そんな願いを込めて、私は毎週、物語を書いていきました。

しかし状況はおさまらず、12話を書ききってから2年の月日が流れてしまいました。私はまだ、宮崎に行けていません。

でも、嬉しいことに、宮崎本大賞をきっかけに宮崎の書店員さんや図書館さんとの繋がりができ、それは今も続いています。
椎葉村のkaterie内にある図書館、ぶん文bunさんでは2021、2022年と続けてオンラインイベントを開催していただきました。
私にとって宮崎は、遠い場所だけれどとても近い位置に存在しています。

そして「宮崎本大賞」も4回目の準備が始まったそうで、私もなんだか嬉しいです。
私が賞をいただいた第1回目のときは突然「受賞しました」とお知らせを受けてびっくりしたのですが、その後、候補作から選ばれるスタイルになり、そして第4回目である今回は、なんと、実行委員さんによるショートストーリーの連載がスタート!
年を追うごとに進化していく宮崎本大賞、これからもますます大きく発展していかれることを願っています。

宮崎本大賞のnote及びショートストーリーの連載はこちらです。
著者・小宮山剛さんは、前述の椎葉村図書館「ぶん文Bun」のクリエイティブ司書さんです。


宮崎本大賞をいただいていなかったら『いつもの木曜日』の物語はこの世に存在しなかったでしょう。
出版社から依頼されたのではなく、私がただ書きたくて書いた小説です。
編集者チェックもなく、当時は書籍化されることも考えず、この不安な状況が早く鎮まりますようにと、祈るような気持ちでキーボードを叩いて更新していました。

5周年という節目に、それをこんな素敵な一冊にまとめてくださった宝島社さんに感謝します。

ただ書きたくて書く。
作家として最も大切なその想いが封じ込められた、初心を思い出させてくれる作品になりました。

装画は、『木曜日にはココアを』から何作も表紙を手掛けてくださっているミニチュア作家の田中達也さん。お忙しい中、お受けくださいました。
中にも、登場人物の面々が田中さんのフィギュアで出てきます。

ココアの主人公による12編の他、もうひとつ、マスターの掌編がプロローグとして入っています。
これは、宮崎本大賞受賞時に宮崎の書店さん向けにフリーペーパー特典として書き下ろしたもので、このように書籍として残せたことが嬉しいです。

もう5年、まだ5年。
どちらの気持ちも、同じぐらいあります。
だけどここから何かが変わるわけではなく、やはり、一歩一歩足を踏みしめることを大事に、自分なりのペースで進んでいこうと思います。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします!