見出し画像

ある日の訪問看護から♯3


介護用ベットはひょっこりひょうたん島


ある日、出勤すると所長から
『 もんず、今日は完全防備の用意してね』と告げられる。
コロナ以外で完全防備の指示は、
1つしかない。

荒野への訪問だ。
これは私が勝手に心の中でそう呼んでいるのだが。

所長と一緒にとある団地へ向かう。
普通のどこにでもあるような団地。
その中のあるお宅へ訪問が開始。
息子さんとお母さんの2人暮らしのお宅。
息子さんはどうしても仕事が休めないとの事で、今回はケアマネージャーさんと訪問看護師で訪問。

玄関を開ける。

昼間なのにかなり薄暗い。

ものすごい埃の山と蜘蛛の巣。
そこでマスク、ガウン、手袋、フットカバー、キャップ装着。
次のお宅への訪問があるゆえ、汚染防止のため防備する。
とにかく埃の山と蜘蛛の巣。
カーテンビリビリ。
襖傾いている。穴だらけ。
所々謎に湿っている床。

テーブルの上に埃&蜘蛛の巣だらけの遺影が2つ。

衣類かなにか、わからないが何かが散乱。
万年床以上の万年床。真っ黒布団。

申し訳ないが、まさに
ホーンテッドマンション🕷🕸
又は
日本昔ばなしへタイムスリップ

よーく見るとそこに長く伸びた白髪の小さなお婆さんが丸まって横になっている。
頭が少し見えるくらいまで、布団をかぶっている。

この方が今回の患者さん。
声をかけると、顔をあげ眩しそう。 
「だれ?」

かなりお風呂にも入っていなかったのだろう、皮膚はガサガサになり、髪の毛は後頭部に小枕サイズの塊に…

とにかく足の踏み場がなく、
訪問バックを置くとこさえない。

そんな時に役立つのが、
45Lのゴミ袋⟡.·*.
ゴミ袋数枚持っていると色々役立つ。
とりあえず、それを広げバックを置く。
仕事するスペースを確保する。

体温・血圧・脈拍・酸素飽和度などを測定し確認(バイタルサインチェック)。
全体的な観察をする。
会話はできるけど、耳が遠いな。
「痛いとかはないけど、歩きたいのに歩けないのよ。」って。
お腹が張ってるな。
皮膚が黄色いな。
何だか口の中が血だらけだぞ。
手足がちょっと拘縮してる。
失禁している。褥瘡ができてるな。
皮膚カサカサだな。etc..…

救急車呼ぶ緊急性はないねとの事で、
とりあえず、
オムツ交換をして、体を拭いて着替えをすることに。

洗浄用ボトルにお湯を入れるため、
キッチンの蛇口をひねる。
蛇口から水が出たその瞬間、

排水溝から小バエ集団が舞う……
             チ───(´-ω-`)───ン


なんとかオムツ交換は終了!
さ、着替えるか!
がしかし、散乱している衣類の中に上着はあるのだが、
ズボンだけがどうしても見つからず…(´∵`ก)
今回はバスタオルをスカート風に巻いて、
息子さんにあとで用意してもらう事に。

訪問診療の先生に状態報告の連絡入れる。

退室して、
所長、ケアマネ、私の3人の口から出た同じ言葉。

                    「まずベットだな」 

色々な事情があり、急に施設に入るとかは難しく、しばしこの生活環境で過ごすしかない。

まずはご本人が安心して過ごせるスペースの確保が優先だ!と。

そこから、ケアマネさんが福祉用具業者に連絡してくれ、
あっという間に介護用ベットが設置⟡.·*.

こういう時、どんなお家でもさささっとベットを搬入&設置してくれる、
福祉用具業者さんの仕事が神がかっていて、
毎度感動する⟡.·*.


荒野に突如置かれたベット⟡.·*.
私にはもう、
ひょっこりひょうたん島にしか見えない(笑)

このベット1台のおかけで、
ご本人の安全なスペースもだが、
ケアスペースも確保される。
とてもケアがしやすいのだ(* • ω • )b

何をどうしたら良いのかわからなかった
息子さん。
いつもの住み慣れた生活スペースの中で横たわっていた年老いたお母さん。
特に異常と感じなかったのかもしれない。

ベットに横になるお母さんを見ると、
お母さんの容態が良くないという事を感じていた。

そこから、様々なサービスを受け入れるようになった息子さん。
訪問診療、訪問看護、ヘルパーさんも入り、お母さんのケアは一気に進み、
お母さんも一時よりはだいぶ元気に⟡.·*.

在宅療養では、
今回の様に何か少しの事が突破口になり、
良い方向に進むことがある。
ちょっとしたことがきっかけだったりする。

しかし、今回の様に生活環境が劣悪であり整っていない場合、そのご家庭の長年の生活環境自体や、それに対する意識を変えるとこまでは難しい。
なもので、ここからどうしていくのか、どうするのが良いのが、ご本人・ご家族の希望は?       次の課題𓂃𖤥𖥧𖥣⋆*

訪問看護では、まず患者さんの体調を維持・安定させ、ご自宅で安心して過ごせるようにする事が役目かなと思います⟡.·*.



最後までお読み頂き、
ありがとうございました☺️












この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?