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不思議な夜 (霧の街)

この街では常に霧がかかっているため、装備をしなければ出歩く事などできない。

元々この街は霧などかかっていなかったが、ある年に起きた戦争が原因となり、この街を取り囲む森が霧を常に出し続ける事態となった。
この霧には非常に濃く、一寸先の様子などほとんど見えなくなり、人々を森へ誘き寄せて帰れなくしてしまっていた。
戦争に対する、森の怒りであった。

そのため、人々は、特殊なお面をつけこの街での生活を営んでいる、

このお面は、特殊な加工と魂が宿っており、
濃い霧の世界を歩くための道を魂が先導し教えてくれるのだ。

男はこの街でお面を作る仕事をしている。
この街では必須のお面であるが、このお面を作るには時間も労力も精神力も削られる。

彼は一級品のお面をつくることができるが儲けはほとんどない。
今は貯金を少しずつ切り崩して生活をしている。

こんなにお面屋が儲からなくなったのもお面を大量生産する工場を政府が作ったからだ。

新たな規則として工場生産以外のお面は厳しく取り締まられることとなり、価格も以前より高騰させ、スラムで暮らすような人々には到底購入することもできない代物となってしまった。

男は、スラムで暮らす人々が安全に暮らせるようにお面を作っては路上で配っているのだ。

男は日々路上裏にある以前の酒屋跡地でひっそりとお面を作り続けている。
お面の作成には、大きく分けて3段階の工程がある。
はじめに、魂を捕まえることから始める。
魂は霊界に浮いているのだが、奴らは前世の記憶は持っていないものの、前世の生き方が反映された性格をしている。
そのため、雑に呼び出すとそれ相応の雑な魂を呼ぶこととなり、装着側にも悪影響となる。

魂を捕まえたら、お面の型を決める。型とは魂の入れ物であり、装着側と魂側とでそれぞれに心地の良いものでないといけない。

そして最後に、決めたお面に魂を入れ込む。
これには、作成者のエネルギーが最も消費され、失敗をすれば逆に自分の魂を霊界に持っていかれてしまう。

男は今日も小屋に籠り新たなお面を作り続ける。
暖炉の火がパチパチと音を立ててこの空間には温もりが満ちている。
するとカランカランとドアが開き、1人の女性が現れた。


続く。






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