不妊治療 ④KLC(加藤レディスクリニック)

 2021年8月、D3(生理開始3日目)でKLC(加藤レディスクリニック)の初診に夫と向かいました。

 結局ご近所クリニックの先生には話さないまま、紹介状なしで予約を取りました。もう数ヶ月はタイミングで頑張った方が良い、と勧めてくれた先生に話しづらい気持ちと、また何かあればお世話になりたいと思ったためです。私たちの場合、結果的に早くステップアップして正解でしたが、無闇にステップアップを勧めないご近所クリニックは良い病院だったと思います。
 この後たくさんの不妊治療専門クリニックを調べ、実際に複数足を運ぶことになりましたが、「患者のために必要以上の検査やステップアップを勧めない」という選択ができるクリニックは本当に貴重だと感じました。

 KLCの大きなビルと、あまりにたくさんの人がいることに圧倒されながら、私はここで妊娠できるんだ…!と少しわくわくした気持ちで院長先生とお話ししました。私の「ピックアップ障害を強く疑っている」という主張をふむふむと聞き、これまでの検査結果を一通り見た先生は「何にも問題なさそうですね。じゃ、今周期で採卵しましょう!」とさらりと言って診察は終わりました。

 これまでの検査で足りていなかった項目の採血や尿検査をして、夫婦あわせて2万円ほどだったと思います。D10でまた来院するよう指示され、HPに書いてあったとおり本当に何の薬も渡されずに帰宅しました。

 KLCは年中無休でネット予約ができ、朝は7:30から開いています。幸運なことに私の会社は前後1時間までのフレックス出社と1時間単位での有給取得ができたため、受診してから出社しても1〜2時間ほどの時間休で済みました。突然「11時頃までには出社します」と不思議な休み方をし始めた私に、同僚も上司も明らかに戸惑っていました。でも、不妊治療のことは絶対に会社に言わないと決めていました。

 通常のKLCの受診の流れは、
① 受付してまずは採血(どの看護師さんもとてもとても上手です)
② 30分〜1時間ほど待ち内診室でエコー(無いこともあります)
③ さらに30分〜1時間ほど待ち診察室で先生とお話
④ お会計と処方箋(お会計は毎回ではありません)
というものです。それぞれ階が異なり、次どこへ向かうべきかメールで知らせてくれます。 

 内診室は5部屋くらいあり、少し時間差を設けて何人かが一気に呼ばれます。内診室は奥で繋がっていて、先生が横に移動しながら数人のエコーをどんどん見ていきます(ここでは一緒にモニターは見られますが、詳しい話は聞けません。どうしても気になることがあれば一言二言聞くくらいです)。数人分のエコーが終わると、これまた5部屋くらいある診察室に移動して、先ほどの数人が順番に同じ先生とお話しします。

 先生の指名は一切できず(どうしてもNGな先生がいれば、受付に申し出ると避けてもらえると聞いたことがありますが、真偽の程は分かりません)、毎回違う先生に当たることもあります。クリニックとしての方針がきっちり固まっているので誰が診ても同じ治療になるし、逆に毎回違う目で見ることで見落としや偏りを防ぐ、というのが目的のようです。

 数人のグループ内での順番にもよりますが、内診台に上がってから結構長く待つこともあります。先生との仕切りのカーテンはありますが、長く待つ場合もタオルはかけてくれる時とそうでない時がありました。そして、横の内診室との間に壁はありますが、奥が繋がっているため会話は全て聞こえてしまいます。

 私はもうこの頃には内診台にも抵抗がなくなっていましたが、横並びの内診台を先生がどんどん診察していく様子は、やはり正直言って異様でした。
 診察室でのお話も、先生によってかなり差がありました。きちんと名札をして「お待たせしてごめんなさいね、何か聞きたいことはある?」と言ってくださる先生もいれば、名札もしておらず、こちらが最低限聞きたいと思って質問する言葉を途中で遮る先生もいます。丁寧に話をしないからと言って治療技術が無いという訳でもなく、正直大勢の先生がいすぎて最後までよくわかりませんでした。

 KLCは比較的安く、本当に大勢の患者さんを最低限の待ち時間で捌き(とはいえ待ちますが)、高い技術力で全国トップレベルの結果を出しています。丁寧さや気持ちの面への配慮を求めることは難しい状況にある病院だと思いますので、傷ついたり気持ちが落ちてしまう人には、通院にあたって家族や周囲の心理面でのサポートが不可欠だと感じました。

 先に結果を書いておくと、私はKLCに3周期通い、2回採卵しましたが、残念ながら移植に至らず妊娠できませんでした。ただしKLCへ通ったことは無駄ではなく、私たちの治療には必要なプロセスだったと考えています。
 3周期でKLCから撤退した経緯はまた詳しく書きたいと思いますが、KLCでの治療方針・方法が私たちの状況には合わない(効率的でない)と判断したことと、その時期に私の心が壊れてしまったことが原因でした。

 KLCは「最後の砦」と呼ばれるとおり、他院では妊娠できないであろう多くの患者さんを救っています。ただ、国際的にも国内で見てもかなり独特な治療法をとっていることは、もっと知られても良いのではないかと思います。体外受精において「薬をなるべく使わない」ということは、決してメリットだけではありません。

 余計なお世話ではありますが、これから通院を検討されている方や、KLCで長く結果が出ていない方は、本当にご自身の状況に合った治療か否か、よく検討していただけたらと思います。

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