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[英詩]Bob Dylan, 'It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)'

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

1964-65年頃のディランが作った歌の中にブルーズ歌手ロバート・ジョンスンの影響が濃いものがいくつかある。特に有名なのは 'It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)', 'Mr. Tambourine Man', 'A Hard Rain's A-Gonna Fall' だ。最初の2つが収められたアルバム 'Bringing It All Back Home' のジャケットにはロバート・ジョンスンのLPが映っている。

['Bringing It All Back Home', 1965]

その頃のディランに影響を与えたのは大きくは四つ、ロバート・ジョンスン、フォーク歌手のウディ・ガスリ、ドイツ歌曲のブレヒト−ヴァイル、フランス象徴派詩人のアルチュール・ランボーだ。だが、実際にはインスピレーションの源は四つどころでなく、数百にのぼる。

以上のことはよく知られているが、ロバート・ジョンスンのブルーズがディランの歌に具体的にどのような影響を与えたかを詩句に即して分析したものは寡聞にして知らない。今回はそれを考えるために、その影響を受けた歌の一つの分析を試みる。'It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)' を取上げる。20連ある。ディランの詩的天才が奇跡的に記録された傑作。

目次
原詩+日本語訳+構文+韻律+解釈
考察

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(201705)」へどうぞ。
この定期購読マガジンは月に本配信を3回配信します。そのほかに副配信を随時配信することがあります。本配信はだいたい〈英詩の基礎知識〉〈英語で書かれた詩〉〈歌われる英詩〉の三つで構成します。2016年11月から主要な内容をボブ・ディランとシェーマス・ヒーニでやっています。英語で書く詩人として最新のノーベル文学賞詩人たちです。

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原詩のテクストの句点は 'Lyrics 1962-85' により、読点と字下げは 'Lyrics 1961-2012' によった。長い詩なので連ごとに原詩と日本語訳と構文と韻律と解釈などを述べる。

It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)
Bob Dylan

1連

Darkness at the break of noon
Shadows even the silver spoon
The handmade blade, the child’s balloon
Eclipses both the sun and moon
To understand you know too soon
 There is no sense in trying.

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