見出し画像

[英詩]Bob Dylan, 'Series of Dreams'

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

英詩のマガジン の本配信、今月3本目です。歌われる詩の2回めです。今回はボブ・ディランのアルバム 'The Bootleg Series, Vol 1-3: Rare & Unreleased 1961-1991' (1991年、下) に収められた 'Series of Dreams'です。名盤 'Oh Mercy' (1989) のアウトテークです。

画像1

録音は1989年3月23日。オーヴァダブは1989年3月30日。録音スタジオは、New Orleans の The Studio / New York の Messina Music Studios (オーヴァーダブ 1991年1月). プロデュースは Daniel Lanois で、録音エンジニアは Malcolm Burn と Mark Howard.

次の参加ミュージシャン。

Bob Dylan - vo, g
Daniel Lanois - g, perc (?)
Mason Ruffer - g
Rick DiFonzo - g
Peter Wood - kbd
Glenn Fukunaga - b
Cyril Neville - perc
Daryl Johnson - perc (?)
Roddy Colonna - ds

(vo: vocal, g: guitar, perc: percussion, kbd: keyboard, b: bass, ds: drums)


プロデューサの Daniel Lanois は、インタビューで、アルバム 'Oh Mercy' のオープニングは本歌にするつもりであったこと、仮題は 'Oh Mercy' であったことを明かしています。つまり、本歌はほんらいは同アルバムの看板の曲だったのです。

最後の最後にディランが本歌をアルバムから外したのは驚くべきことです。ディランは〈詩がまだ完成していないと思う〉 ('Look, I don't think the lyrics are finished;' [ヘイリンが 'Still on the Road' で引用]) と理由を述べたとのことです。ディランの場合に往々にしてあることですが、アルバムに収められていない曲のほうがアルバム収録曲よりすぐれていることがあります。

本マガジンでは、ディランの歌を '100 Songs' に沿って連載中です。今回あつかうのは、'100 Songs' に載っている歌、すなわち、'The Bootleg Series, Vol 1-3: Rare & Unreleased 1961-1991' に収められた録音とほぼ同じ形のものを基本とします。

ところが、実は、これはディランが望んだ形でないのです。元の歌が 1, 2, 3連、ブリッジ、4連という形だったのを、1, 3連、ブリッジ、4連、ブリッジという形に変えてあるのです。つまり、2連を省き、ブリッジを繰返しているのです。おそらく、ブリッジを好んだプロデューサの Lanois の方針によると思われます。そのことを、お断りしておきます。

詩テクストをリクス校訂版に準拠して考えます。

参考文献 は、文字数の関係で別の note にあります。

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(202103)」へどうぞ。

このマガジンは月額課金(定期購読)のマガジンです。月に本配信を3回お届けします。各配信は分売もします。

英詩の実践的な読みのコツを考えるマガジンです。
【発行周期】月3回配信予定(他に1〜2回、サブ・テーマの記事を配信することがあります)
【内容】〈英詩の基礎知識〉〈歌われる英詩1〉〈歌われる英詩2〉の三つで構成します。
【取上げる詩】2018年3月からボブ・ディランを集中的に取上げています。英語で書く詩人として新しい方から2番めのノーベル文学賞詩人です。(最新の Louise Glück もときどき取上げます)
【ひとこと】忙しい現代人ほど詩的エッセンスの吸収法を知っていることがプラスになります! 毎回、英詩の実践的な読みのコツを紹介し、考えます。▶︎英詩について、日本語訳・構文・韻律・解釈・考察などの多角的な切り口で迫ります。

_/_/_/

まとめ

ボブ・ディランの 'Series of Dreams' は、アルバム 'Oh Mercy' のオープニングを飾るはずだった傑作ながら、押韻の面などで未完成におわった。しかし、内容的には傷心のつまった夢と、夢の中の世界と、夢と現実といった多様な側面を扱っており、ディランを考える上では重要な作品。1連と2連の間に本来あった連をディランの意図に反して削除したのが惜しまれる。

動画リンク [Bob Dylan, 'Series of Dreams' (Official HD Video)]


Series of Dreams
Bob Dylan

1連

I was thinking of a series of dreams
 Where nothing comes up to the top
  Everything stays down where it’s wounded
 And comes to a permanent stop
  Wasn’t thinking of anything specific
Like in a dream when someone wakes up and screams
  Nothing too very scientific
Just thinking of a series of dreams

(注)
comes up to the top 「(表面に) 出る」「他に抜きん出る」

ここから先は

6,839字
この記事のみ ¥ 400

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?