［英詩］Bob Dylan, 'Dignity' (1)

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」（2016年3月1日—2022年11月30日）の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

英詩のマガジン の本配信、今月2本目です。歌われる詩の1回めです。今回はボブ・ディランのアルバム 'Greatest Hits Volume 3' (1994年、下) に収められた 'Dignity' です。名盤 'Oh Mercy' (1989) のアウトテークです。

録音は1989年3月13日。オーヴァダブは1989年3月28日。録音スタジオは、New Orleans の The Studio. プロデュースは Daniel Lanois で、録音エンジニアは Malcolm Burn と Mark Howard.

次の参加ミュージシャン。

Bob Dylan - vo, p
Brian Stoltz - g
Tony Hall - b
Cyril Neville - perc
Willie Green - ds

(vo: vocal, p: piano, g: guitar, b: bass, perc: percussion, ds: drums)

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自伝でこの歌についてディランはこう言っています。

この抒情詩的な運びの歌を、旋律の変化とともに録音するのと、ロキンのケージャン・バンドとで録音するのとでは、天地ほどの違いがある。(4章)

ディランはデモ・ヴァーションが非常に気に入っていたのに対し、プロデューサの Daniel Lanois は、Rockin' Dopsie [Alton Jay Rubin] and his Cajun band の伴奏で再録音すべきだと主張しました。そのバンドでは 'Oh Mercy' 所収の 'Where Teardrops Fall' が録音されています。

それで、そのバンドで録音してはみたものの、ディランは次のように自伝で書いています。

何度も録音した、テンポやキーまで変えたりしながら。ところが、いきなり地獄にほうりこまれたようだった。(4章)

結局、その歌は 'Oh Mercy' に入ることはなかったのです。

＊

まことに不運。［ヘイリンは、本歌を、1980年代ディランの4枚における芸術的方向性を決めながらも捨てられたエース級作品の一つに挙げています。すなわち、'Caribbean Wind' (1981), 'Foot of Pride' (1983), 'New Danville Girl' [Brownsville Girl] (1985), 'Dignity' (1989)］

本マガジンでは、ディランの '100 Songs' に沿って取上げているところなので、今回は同書に入っているヴァーション ('Greatest Hits Volume 3' 所収版) を扱います。

ただし、そのヴァーションは、数え方によりますが、ブリッジも1連と数えると、ぜんぶで16連あり、2-3回に分ける必要があります。

デモ・ヴァーションにピアノ弾き語りのものがあります ('The Bootleg Series, Vol 8: Tell Tale Signs' [2008] 所収)。そちらは8連で、音楽的には非常にすばらしいものです。ひょっとしたら、それも取上げるかもしれません。

＊

詩テクストをリクス校訂版に準拠して考えます。

参考文献 は、文字数の関係で別の note にあります。

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「［英詩］コメント用ノート(202102)」へどうぞ。

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【取上げる詩】2018年3月からボブ・ディランを集中的に取上げています。英語で書く詩人として新しい方から2番めのノーベル文学賞詩人です。(最新の Louise Glück もときどき取上げます)
【ひとこと】忙しい現代人ほど詩的エッセンスの吸収法を知っていることがプラスになります！ 毎回、英詩の実践的な読みのコツを紹介し、考えます。▶︎英詩について、日本語訳・構文・韻律・解釈・考察などの多角的な切り口で迫ります。

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まとめ

ボブ・ディランの 'Dignity' には、dignity を探し求めるさまざまの人々が登場する。現代の「うつろなる人」も、貧しい人も dignity を探し求める。天使のことばも人間のことばも、dignity について教えてはくれない。

動画リンク [Bob Dylan, 'Dignity' (Fuengirola, Spain, 4 May 2019)]

原詩＋注＋日本語訳+韻律+解釈

Dignity
Bob Dylan

1連

Fat man lookin’ in a blade of steel
Thin man lookin’ at his last meal
Hollow man lookin’ in a cotton field
　For dignity