フォークロアっていうのは、ばかばかしいものか
〔アイヴァスが幻視したプラハ ↑〕
この世界の隣にある街(ある意味で異界)の住人が、自嘲気味に語る。
フォークロアっていうのは、ばかばかしいものでね。自分たちの儀式のほうが、あなたたちの世界の規律が秘められている雛形であって、あなたたちの世界が忘れてしまった意味を維持しているのが自分たちだって始終豪語している。ぼくは、それはどうかと思うんだ。
これはアイルランドの妖精の話ではない。チェコの話だ。住人はさらに語る。
ぼくらの街のひとびとは、あなたたちが来る数千年もまえからこの地にいると言っているけど、この誇り高い主張のもとになっているのは、出所のあやしい、偏った、趣味の悪い伝説でしかない。いったいどういった巣穴を這って、ひとのいない空間の片隅や窪地に住むようになったのかは、神のみぞ知るばかりだというのにね。つまり、ぼくらはあなたたちの街に寄生しているんだ。ぼくらの神話は、あなたたちの思考からこぼれ落ちたものでできているんだ。
ミハル・アイヴァスが『もうひとつの街』でこう書く(阿部賢一訳)。
これをぼくらは、いったいどう解釈すればよいのだろう。
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