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『シャン・ノース 秘密の唱法: ジョー・ヒーニの場合』

『シャン・ノース 秘密の唱法: ジョー・ヒーニの場合』 (2021)

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アイルランド語の無伴奏歌唱 (シャン・ノース歌唱) について日本語で書かれたおそらく唯一の書。アイルランド西部コナマーラ地方のシャン・ノース歌唱の名人ジョー・ヒーニの歌唱法の〈秘伝〉について、それを教わったショーン・ウィリアムズ博士から教わった著者が記した本 (アマゾンで購入可能)。

ショーン・ウィリアムズ博士は次の論文でこの内容を明らかにしている。

Sean Williams, 'Melodic Ornamentation in the Connemara Sean-nos Siging of Joe Heaney' ('New Hibernia Review', vol. 8, no, 1, 2004)

唱法の内容は、アイルランド語詩 (および英語などの強勢拍律言語の詩すべて) における韻律の内容と深く関る。シャン・ノース歌唱は、アイルランド語詩の構造と密接不可分であるからである。

アイルランド語詩の韻律の中心原理の核をなすのは強勢の配置である。それを知ることから韻律の構成原理を考えることが可能になる。したがって、この唱法を理解する前に、アイルランド語詩の韻律の体系について一通り頭に入れておく必要がある。その目的に資する本が世界で一冊だけ出ている。次の書である。

Virginia S. Blankenhorn, 'Irish Song-Craft and Metrical Practice Since 1600' (Edwin Mellen P, 2003)

現在でも、アイルランド語詩とシャン・ノース歌唱の伝統は、アイルランド語話者の中に生きており、毎年秋にアイルランドで開催されるアイルランド語芸術年次大会のオリアダ杯において、アイルランド一の名人が決定される。聴衆は、唄われるアイルランド語歌の歌詞を熟知している。歌唱者は一語でも間違えれば、その場で歌唱をやめる。

2021年度のオリアダ杯を獲得したのは、グィー・ドールの Máire Ní Choilm であった。

本書の著者は彼女に会ったことがある。また、オリアダ杯を獲得した歌い手2人からシャン・ノース歌唱を教わったことがある。

#アイルランド語 #オリアダ杯 #シャンノース

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