pH調整剤で知っておきたいこと
前回は、世の健康志向に応える形でpH調整剤の使用が増えつつあるようだということを書きましたが、食品添加物が話題に上がるときは「発がん性」のように、健康に悪影響を及ぼす可能性が有るのか無いのかといったものが多いようです。たしかに、発がん性なんてあって欲しくはありませんから、誰だって気になります。それらを含めて、今回は体への影響を考えてみます。
ある記事によれば、pH調整剤に発がん性は認められないとの記載がありました。また、これ以外の記事を探してみても発がん性があるという記載は見つかりませんでした。調べた記事の数や範囲等から考えれば多少限定的になりますが、それでも発がん性についてはどうやら考えなくてもよさそうな感じだったようです。もちろん、pH調整剤の大量摂取をすればどうなるかは分かりません。しかし、この成分だけを大量に摂取するというのは現実的ではありませんので、通常の摂取量なら発がん性の問題は考えなくても構わないようです。
それ以外で健康上の影響となると、いくつかの内容の記事が出て来ます。例えば、たった今「通常の量の摂取なら発がん性は考えなくてよさそうだ」と書いたばかりですが、条件が変わると発がん性を視野に入れる必要が出てくることを書いた記事を見つけました。
「どういうこっちゃ?」となるのですが、pH調整剤として認められている物質である「安息香酸」や「安息香酸Na」という物質が使用されている場合は要注意のようなんです。ビタミンCと一緒に添加すると、ベンゼンという発がん性を持つ物質に変化することが分かってきたんです。この場合も「量」の問題がありますので、全てが危険ということではないでしょうが、まだまだ分からないこともあるようです。
その他の問題として、pH調整剤が腸内細菌に影響を及ぼす可能性も話題に上がっています。この辺りは具体的なデータを探しきれなかったこともあって、詳細なところは不明でした。ただ、食品の中の環境と人間の腸の中の環境はまったく違いますので、食品に含まれているpH調整剤の量で腸内細菌に影響を及ぼすということは、考えにくいのではないでしょうか。
もう一つ、リン酸の化合物もpH調整剤として使われているようですが、これを大量に摂取するとカルシウムの吸収に影響が出るのではないかという記事がありました。カルシウムとリンは生体内でも拮抗状態にある場合がありますので、可能性が全く無いわけではありません。また、カルシウム以外のミネラルの吸収も妨げることになりますので、その辺りの影響でいわゆるキレやすいとされるような、イライラした人に変貌してしまう可能性も秘めています。残念な事ですが、発がん性などであまり用いないpH調整剤がある一方で、リン酸化合物のように使いやすくて重宝されるようなものがあったりすると、どうしてもリン酸化合物の使用が増えてきます。
厄介な事ですが、上記に加えてもっと深刻な問題があります。食品添加物の全部が対象ですが、食品衛生法によってヒトの健康を損なう恐れがないとの調査結果を踏まえて、許可されたものが使われています。しかし、pH調整剤として使用される物質の場合、多くは使用基準(量や対象となる食品)が定められていないという現状もあります。pH調整剤は量が多いと味に影響が出てくることもあるので、使用される量には自ずと限度があるとされています。ただ、一部の例では添加物メーカーが心配するほどの量となっているというのも現状です。それが先に書いた「キレやすい」というようなイライラしたヒトを作り出している可能性が無いとは言い切れないのが、pH調整剤の恐ろしいところかもしれません。
さて、このような記事の内容を読むと、次の文章(これもある記事を参考にしました)の「厚生労働省の調査では、日本人の添加物の摂取量は設定された許容量に対して大幅に下回っていた」といったコメントにツッコミを入れたくなります。調査した時期は何年頃で、対象者はどういった人で何人くらいだったのか、その年齢構成や生活水準などはどうだったのか、対象になった添加物は何かなど、肝心なことが何も分からないコメントだと感じました。そのためでしょうか、「pH調整剤を使用している食品を過度に避けなくても構わないのではないか」という意味のコメントに対して、そうだと思う以外にも食品を選ぶ必要があるんじゃないかとか、自分で基準を決める必要があるんじゃないかとか、何かモヤモヤしたものが残りそうに感じました。これを読んでくれる皆さんはどう感じますか。
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