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胆汁と胆石の話

胆汁って、いったい何だ?

胆汁は胆嚢から十二指腸に出てくる消化液の一種ですが、胆嚢で作られるわけではありません。この辺り、カン違いされている人がいるかもしれませんが、胆嚢ではなく肝臓で作られます。肝臓で作られた胆汁は胆嚢に入って濃縮されたうえで、食事の後に十二指腸に出てきます。胆嚢は胆汁を濃縮して溜めておく袋です。

胆嚢を取ってしまうと胆汁を溜めて置く場所がなくなってしまいます。肝臓は胆汁を作っていますが、ずっと作って肝外に流し続けている状態です。それを胆嚢が受けて、集めて濃縮しながら貯蔵しておき、食事によってこれを十二指腸に送り出すという働きをしていますから、胆嚢を取り去っても胆汁自体が無くなるわけではありません。ただし、胆嚢がこの利用を効果的に行なえるように調節していたわけですから、これが無くなることによって、胆汁利用の効率がかなり落ちてしまいます。その結果、脂っこいものを食べるとお腹を壊す人が出てきたりするわけですね。

もう一つ、胆汁には消化酵素は含んでいません。この辺りもカン違いしやすそうなところですね。では、どんな成分が含まれているのか、この辺りが気になりませんか。

胆汁の成分を羅列してみます。

胆汁酸
 脂肪に働きかけて吸収しやすくします。
 小腸で吸収されて肝臓に戻る、腸肝循環を行なう
胆汁色素(ビリルビン)
 古くなった赤血球が処理された時にできる成分
 血流に乗って肝臓に集められた後、胆汁に排出される
コレステロール
 体外に排出する重要なルート

胆石

胆汁が何らかの原因で病気を引き起こすことがあります。有名な例は胆石でしょうか。
これは胆道に石が出来た状態を総称した呼び名ですが、その石、出来た場所によって微妙に名前が変わってきます。胆嚢の中にできた場合は「胆嚢結石」、胆嚢を除いて肝臓から十二指腸の出口までにできた場合は「胆管結石」、肝臓の中で出来た場合は「肝内結石」と呼んで区別します。このあたりはちょっとややこしい。

一番多いのは胆嚢結石で、全体の8割ほどを占めています。そして残りのほとんどが胆管結石、肝内結石は全体のわずか2パーセントほど過ぎません。現在の日本人は食生活の欧米化が進んでおり、それに伴って胆石症も増加の傾向にあると言われています。成人ではなんと、10人に1人は胆石を持っているともいわれているのだとか。

その胆石ですが、人の話によるととても痛いのだそうですが、一方では全く痛くなかったとか、気が付かなかったとか、そんな声を聞いたりもします。どういうこと?

胆石の多くは胆嚢結石でしたので、これを例に考えてみましょう。胆汁は食事のあとに担当からでて、脂肪の消化を助けたりするものでした。ですから、胆嚢が収縮して胆汁を絞り出すような動きをすることになります。ギューッと胆嚢が収縮した時に、中に石があるとこれが胆嚢の内側にしっかりと当たって、それで「イテテテッ」となるようですね。右の肋骨の下の方であったりみぞおちのあたりであったり、右肩の方に放散する痛みであったりするとのことです。

それに対して、痛みを感じないために本人が気づかないような症例も存在しています。全体の2割から3割ほどがそれにあたるそうで、こういった症例ではこの石を取った方が良いのかどうか、昔から議論が分かれているようです。ケースバイケースでしょうが、処置によっては胆嚢を取り去ることもありますので、慎重に判断しなければならないとされています。

胆石の原因はというと、コレステロールが一番多いのだとか。これも全体の80パーセントほどを占めているとされています。ここにも、日本人の食生活の欧米化が表れていますね。残りはビリルビンカルシウム結石や黒結石が挙げられます。ビリルビンカルシウム結石は胆汁の細菌感染が原因ともいわれたりしていますが、黒結石についてはよく分かっていません。


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