見出し画像

腸結核の話

結核はまだ絶滅していない

昨今、結核という名前を耳にすることは少なくなりました。ほぼ無くなったといってもいいでしょう、あくまでも「結核」という言葉を聞く機会ですよ。結核という意味を持つ言葉としては時代劇に出て来る「労咳(ろうがい)」がありますが、これは昔の呼び方で、明治以降に結核と名前が変わったといわれています。でも日常的に結核なんていう言葉を聞く機会なんて、テレビの中くらいでしょう。しかし、実際には、結核は別に無くなったわけではありません。

医療機関では今でも時々見かけますし、検査の結果で結核と分かったので転院になったという事例も存在します。年齢が高い人ほど、結核による影のようなものを持っている人の割合が増えていくのも事実です。ただし、影があるからといって発症しているとは限りません。排菌していなければよいのですが、この辺りを判断するためには検査が必要になってきます。

通常、結核菌のグループをそのまま結核菌と呼ぶことはありません。細菌の特徴なども踏まえて、グループとしては「抗酸菌」と呼びます。結核菌は抗酸菌の中の種類の一つとして扱われ、特に細菌の感染症の原因菌として認識されています。

抗酸菌の種類

抗酸菌には結核菌以外にも多数の種類があるって、ご存じでしたか。20種類以上存在していますが、人間に対して病原性があるものは限られています。逆に言えば、ほとんどの種類については問題になることは無いということです。

ヒト型と呼ばれる種類が、いわゆる結核菌です。最近では結核菌群と表現して扱われますが、これが見つかった人(存在が見つかったのではなくて、排菌している状態だと判断された人)については、専門の医療機関で処置が必要になってきます。同時に、その人の身近にいた人たちに対しても、感染していないかどうかの検査を行ないます。

他にも、非定型抗酸菌症と呼ばれる疾患が存在しています。これらはヒト型と呼ばれる結核菌群以外の種類によって引き起こされる疾患の総称で、注意が必要なものとして扱われていますが、ヒトからヒトへの感染は否定されています。

肺に起きた感染症として捉える場合は、呼吸によって菌が拡散される可能性がありますので注意が必要になりますが、それ以外にも結核菌による感染を起こす部位がいくつか存在します。腎臓、リンパ節、脊椎骨(背骨)などが知られていますが、このシリーズの話題である腸も、感染する場所の一つとして挙げられているんです。

腸ではどういった症状になるか

腸も結核菌が感染する場所として知られています。種類はヒト型の結核菌群、でも、どうしてこんなところに感染するのでしょうか。

腸結核は大きく二種類に分かれます。原発性続発性、原発性は他の場所に結核菌の感染が無くて初めての場所である場合を指し、続発性は主に肺に既に感染していて腸にも及んだ場合とされています。以前は肺に結核を持っている人が腸にも感染したという例が多かったそうですが、現在は原発性の症例が増えているそうです。

どんな症状が起きるかというと、一般的な消化器症状と呼ばれるものと同じで、この症状があるから腸結核を疑うというような特徴的なものはないそうです。しかも、時に無症状という例もあるのだとか。

具体的には食欲の低下、体重減少、下痢、発熱、腹痛、下血などで、これでは確かに分かりませんね。中には、嘔吐や便秘といった腸の閉塞に関わりそうな症状が出る場合もあるそうですが、やっぱりこれでも分からないでしょう。

おそらく、多くの人にとって腸結核なんていう病気は浮かんでこないでしょう。先に挙げたような消化器症状が続けば医療機関を受診する場合も出て来ますから、ご本人の免疫力の低下があったり、それ以外にも腸結核を疑うような何かがあれば、検査を行なうことになるかもしれません。ちなみに、感染し易い場所は小腸と大腸のつなぎ目の辺りが多いようです。

大腸の内視鏡で調べたり、その他の血液検査などで調べたりすることになります。治療は肺結核と同じように、結核菌に使う薬を用いるとのことでした。この辺り、治療の詳細は省略いたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?