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03、ピロリ菌は胃の中にいる

・疑問

前回はピロリ菌がいる胃とはどんな場所かといったことについてを書いてきました。ここで一つ疑問が出て来ます。胃の内容物はその後の消化吸収を安全に行うために、胃酸によって殺菌されるはずです。なのに何故ピロリ菌はその中にいて平気なのか、そういう疑問です。胃酸を浴びているにもかかわらず、なぜピロリ菌は死滅せずにいるのか、今回はその辺りについて書いていきます。

確かに胃酸は、胃の内容物の中にいる菌をほぼすべて死滅させるほどの威力を持っています。ですから、じつは生きた乳酸菌などの善玉菌を食事として摂取しても、胃で全部死滅してしまっているのが実情なんです。胃酸には善玉とか悪玉とかを区別する機能はありませんから。

この話は別の機会に譲るとして、ピロリ菌はどうやって胃酸の中で生き延びているのかですね。

具体的に行われているピロリ菌の生き残り戦略を紹介すると、「胃の表面に穴をあけて、頭を胃の粘膜の中に突っ込んでいる。加えて、ピロリ菌の体は粘液の中にある。だから、胃酸の影響を受けない」という方法です。

ピロリ菌は胃の表面の粘膜に頭を突っ込んでいますので、粘膜には傷がついている状態です。これも胃に対しては負担ですね。傷口付近は炎症を起こしているはずです。

加えて、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を出すことが知られています。このウレアーゼ、臨床検査の分野ではよく知られた名前で、尿素窒素という物質の測定には欠かせないものなのです。その話は横に置いて、ウレアーゼは胃の中の尿素を分解してアンモニアを作りだすという働きを持っています。

アンモニアはアルカリ性ですから、ピロリ菌の周囲の胃酸が中和されてしまいます。その結果、胃酸の効き目が無くなるので生息できるというわけです。部分的に胃酸が効力を発揮できない場所があるということは、その付近の胃の内容物は殺菌がうまく出来ていないという事にもつながります。

さらにこのウレアーゼ、ピロリ菌に感染する時には口から食べ物と一緒に入って、胃まで移動する時に一役買っているといわれたりもしています。

この話、特にウレアーゼの件は私にとって意外でした。ウレアーゼなんて毎日接している名前の一つでしたから、それがこんなところで変に活用されていたなんて、意外というよりも呆れたといった感じです。こんなものまで利用して生き延びようなんて・・・、これも生物ですから仕方ないことですね。


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