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臓の病気、ネフローゼ症候群の話

どんな病気か

ネフローゼ症候群という名前は、聞きなれない人がいるかもしれませんが、腎臓の病気としてはよく耳にするものです。

どういった病気かというと、血液中のたんぱく質が尿に漏れ出し、それによって低たんぱく血症を引き起こすというものです。また、同時に浮腫(むくみ)が生じてきます。もっとも、浮腫は必須ではないようです。

通常は先行する病気がない状態で発症する例が多く、全体の90パーセントほどを占めているとされています。小児ではこれを「特発性ネフローゼ症候群」と呼び、成人では「一次性または原発性ネフローゼ症候群」と呼びます。また、原因がハッキリしている場合(糖尿病など)以外は、腎生検で確定診断が必要となる例がほとんどです。

症状を詳しく

血液中のたんぱく質(アルブミン)が尿中に漏れ出るのですが、尿に過剰に出てしまうため、高タンパク尿となり、同時に低アルブミン血症を引き起こします。このアルブミンというたんぱく質は、通常では腎臓の糸球体から体外に出ることはありません。ですから、ネフローゼ症候群とは糸球体の病気でもあります。

見た目で分かりやすい状態といえば、たんぱく質を多く含む尿なので、尿の泡立ちが多く見られるようです(タンパク尿であれば泡立ちは見られますが、泡立つからといってタンパク尿とは限りませんが)。とは言っても、タンパク尿であったり、低アルブミン血症であったり、これは医療機関を受診して検査をしてみて、初めて分かることが多いでしょう。普段の状態からはなかなか分からないことが多いのですが、尿の泡立ちが強くみられるような場合は、タンパク尿を疑ってみてよいでしょう。

また、血液中のタンパク質(アルブミン)が減少するために、血液中の水分の保持が難しくなります。その結果、水分は血管の外に逃げてしまいます。さらには、血液中の水分が少なくなるため、腎臓はナトリウムを保持して水分保持に努めようとしますので、塩分の尿への排泄も難しくなってきます。この塩分、体外に出すつもりだったものにもかかわらず体内に残してしまうので、全身の浮腫(むくみ)につながってしまいます。全身がむくんでしまうくらい水分が溜まると、それに応じて体重も増えてきます。

合併症として、水分の都合で血液が濃縮されたような状態になるために、血液が凝固しやすくなることがあります。これは血栓を起こしかねない、危険な状態です。他にも、感染症になりやすくなるなどのリスクも加わります。

こういった症状、なかなか自分ではわかりにくいことが多いようですね。健康診断などで初めて分かることも多く見られます。

その他

診断基準などは今回は記載しませんが、治療としてステロイドがよく使われるようです。症例にもよりますが、ステロイドを使って尿タンパクを抑え、腎臓の機能回復を図ることがほとんどです。特に、小児の特発性ネフローゼ症候群の場合では、ステロイドを投与することで80~90パーセントの症例が完全寛解するとも言われています。ただし、自然寛解はまれなのだとか。全てがこのように上手くいくわけではありませんので、医療機関で受診の際にご相談ください。

塩分が体に溜まりやすくなることから、浮腫(むくみ)のある場合や食事療法を行なうことも必要になってきます。塩分の摂取量を制限することで、ネフローゼ症候群による浮腫も軽減につなげることが可能になります。

ネフローゼ症候群を全体として考えれば、中には再発する恐れも十分にある症例も存在します。そのため、治療が終わった後も定期的に診察と検査を受けること、家庭でも定期的に尿タンパク検査を行う必要があります。こうして再発を出来るだけ早く発見して、早期治療を始められるようにしておくことが、ネフローゼ症候群での合併症を抑えるためにも重要です。

治療で用いるステロイドは副作用も多い薬剤だと言われていますので、考えられる症状(成長障害、肥満、高血圧、糖尿病、消化性潰瘍、骨粗しょう症、うつ病など)が出て来ないように、服用中は注意が必要です。特に小児の成長障害は起きやすい副作用なので、再発が多い場合はステロイドに頼らない治療が必要です。

さらには、肥満を合併しやすいという傾向があるため、運動制限や過度な安静をしないような注意が必要です。

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