腎臓の関連事項 BUNとクレアチニンの話
BUNって、何?
BUNとは臨床検査項目の一つで、医療機関を受診して血液検査を行う時には一緒に調べることが多い項目の一つです。BUNは普通、「(血中)尿素窒素」とも呼ばれています。窒素は酸素、炭素、水素とともに、たんぱく質を構成する必須の元素で、BUNはこの窒素の代謝に関わります。窒素はたんぱく質を構成するアミノ酸に含まれていて、代謝の後の処理として、アンモニア(アンモニアは人体に有害なので肝臓で無毒化される)を経て、水溶性で無害の尿素窒素になります。そして血液中を流れて腎臓の糸球体でろ過されて、体外に排出されるという手順です。腎機能が落ちてくるとBUNが体外に排出しにくくなるために数値が上がってきますので、腎機能の指標として利用されている項目です。
間違えやすいのですが、BUNは尿素の量ではなく、尿素を構成している窒素の量のことです。紛らわしく感じるかもしれませんが、臨床検査の歴史を振り返ると、むかしは現在のような測定方法が開発されていなかったために簡便な測定方法が無かったことや、NPN(非タンパク性窒素)としてBUNやクレアチニン、その他の項目をまとめて測定するために共通である窒素の量を調べたなどの理由があり、BUNもその流れで尿素窒素として窒素の量を測定する方法が主流でした。そのため、数値の報告として窒素の量をそのまま報告していたのですが、慣習としてそれが残ったモノと考えています(NPN、あるいは非タンパク性窒素という言葉は、現在は使われていません)。
また、現在では血液を全部使って調べるのではなく、血清の状態で測定することが普通です。したがって、本来なら血液中の尿素窒素の量というよりも、血清中の量ということになるので、正確に記するなら「BUN」ではなくて「SUN」という表現になるのですが、こちらの方も混乱を避けるためか、一般的にはBUNの名前で表現されています。
クレアチニンとは、何?
今度はクレアチニンの話題です。医療機関に縁が少ない(健康な)人であればあまり耳にした経験がないかもしれませんが、BUNと並んでよく用いられる臨床検査項目の一つです。筋肉の代謝に関係していますが、クレアチニンは老廃物の一つとして腎臓から体外に排出されるために、腎機能検査として用いられています。
栄養分の一つとして食事から摂取されたタンパク質は、消化吸収のうえアミノ酸にまで分解されます。アミノ酸の一部は筋肉の合成などに使われ、最終的に代謝産物のクレアチニンの形で血液中に入ります。そして腎臓の糸球体でろ過されると、殆ど再吸収されることなく体外に排出されます。そのためBUNとは経緯が全く異なりますが、BUNと並んで腎機能を調べる項目の一つとして利用されます。
クレアチニンはその人の体の筋肉量を反映すると言われており、男女間で基準値に少し差があります。これを性差と呼びます。性差がある項目は、理由はさまざまですが、少ないながら他にも存在しています(赤血球など)。
腎機能としての関わり
BUN、クレアチニン、ともに腎臓の糸球体でろ過され、尿として体外に排出されますが、腎機能が低下してくると糸球体でのろ過が不十分になり、血液中に溜まってきます。そのため、腎機能低下の際には両方の項目とも、数値が上がってくることになります。
この2項目は腎臓までの経緯が異なることは、先ほど書いた通りです。ただ、BUNよりもクレアチニンの方が、腎機能をよく反映していると言われていますので、両者の数値の様子をみることで、仮に数値が高くても腎機能が低下しているかどうか分からない場合も出てきます。
BUNは脱水症や消化管からの出血、甲状腺機能の亢進などの理由で数値が上がります。そして反対に、肝臓の機能が低下したりたんぱく質の摂取が少なすぎたりすると、数値が低下する傾向にあります。からだに特に問題がなくても、たんぱく質の摂取量でも数値に影響を与えます。
クレアチニンは筋肉の量を反映しますので、高齢者のように痩せてくる傾向にある人は数値が下がります。反対に腎機能以外の理由では、あまり数値が上昇することは無いようです。ただし、クレアチニンは小さな数値で表現される(基準範囲は0.3~1.0程度)ため、少々分かりにくいという難点があることも理解しておかねばなりません。
こういった理由から、クレアチニンの数値に問題が無いのにBUNの数値が大きいような場合、腎機能よりも他の状態を考えた方が良いなど、両方の項目を組み合わせて考えていく事が大切です。
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