見出し画像

亜硝酸塩のはなし

今回取り上げる食品添加物は「亜硝酸塩」です。じつは、この物質はいくつかの表記があるらしく、ある食品には「亜硝酸塩」と記載があり、別の商品では「亜硝酸ナトリウム」と書かれていたりします。何かルールがあるのでしょうか。そういったことも含めて、今回は考えてみます。

まず「亜硝酸塩」はというと、亜硝酸の「塩」という意味です、ここまでは分かりますよね。その「塩」とは、この場合は亜硝酸と金属やアンモニウムなどの(+)のイオン(陽イオン)が結合してできた化合物の状態であることを意味します。陽イオンとしてナトリウムやカリウムなどが挙げられます。

この亜硝酸塩、水やアルコールに溶けやすいという性質があるために重宝されているらしく、繊維産業などの分野でも使われることがあるのだとか。また、食品の加工や保存の際に用いられます。その時は防腐剤としての利用であったり発色剤としての利用であったりするのが一般的です。このシリーズの文章でも、発色剤のところで取り上げています。

具体的には、食肉製品の保存性を高めるとか、鮮やかな色に発色させるとか、そういった利用方法ですね。

これに対して「亜硝酸ナトリウム」の方はというと、こちらは先に書いた通り亜硝酸の塩の種類の一つですね。こちらも用途としては肉製品の保存性や鮮やかに発色させたりする目的で使用されます。特に、鮮やかなピンク色を与えるという働きが顕著ですね。こういった意味から、以下、両者を分けるよりも亜硝酸塩として一括りにして考えることにします。

さて、「亜」という文字がついてはいるものの、(亜)硝酸と聞けば何か不穏な薬品といったイメージになりませんか。煽っても仕方がありませんが、いかにも「薬品」といった感じの名称ですよね。その意味もあってでしょうか、食品の加工で添加物として用いる場合、厳密な規制が設けられていて、使用にあたっては安全基準が定められているとのことでした。その基準、知っておきたいですよね。

食品衛生法では添加した亜硝酸塩が最終的に残留した時の量を規定しています。これ以上残留していてはいけないという量の事ですね。この残存量のことを「亜硝酸根」というのだそうです。ややこしい名前になっていますが、要するに残存している亜硝酸塩の事なので、これも亜硝酸塩と同じ扱いで構わないでしょう。

食品衛生法ではこの亜硝酸根が、食肉製品では70ppm、魚肉ソーセージや魚肉ハムなどは50ppm、たらこやすじこなどの魚卵類は5ppm以下なのだそうです。

でも、なにかヘンですよね。食品添加物は一般に使用量などが規定されていることになっているのですが、亜硝酸塩だけ残存の量で規定されているって、どういう理由でしょうか。

じつは、亜硝酸塩は食肉中で消費されて減少していることが分かっています。それじゃ発色の方はどうなるのかというと、この残存量でも十分に発色の効果が期待できるために、使用料ではなくて残存量になっているのだそうです。これによって、消費者の口に入る量が制限されて、何かとうわさされる健康被害や健康リスクを下げているんですね。

下げているというと「やっぱり健康被害があるんじゃないか」といわれそうですが、どのような食品でも大なり小なり、何らかの弊害は出てきます。詭弁かもしれませんが、どんな安全な食材でも、食べ過ぎれはお腹を壊す、これだってある意味で「健康被害」の一つですから。

こんなに熱くならなくても良いのですが、不適切な使用や過剰摂取などには注意しなければなりません。次回、亜硝酸塩で生じうる健康被害について、考えてみたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?