無音が嫌な話。

今、換気扇の音が聞こえる。
キーボードを叩いたのでキーボードの音が聞こえ、それをやめたらまた換気扇の音だけが聞こえる。換気扇は換気と言いながらも空気を外に出しているだけに感じる。このままでは部屋の空気が薄くなり、体が浮き始めるのではないかと妄想する。1人暮らしを始めて無音を意識するようになった。そんで無音を感じるのが嫌だ。今の部屋は日中こそ飛行機が真上を通るため音がするが、部屋の遮音性が割と高く隣室の音は耳を澄まさないと聴こえない。無音が嫌でレコードやテレビ、ラジオを流し、換気扇を付ける。先輩に、一人暮らし始めて「換気扇の音を聴いています」と言ったらひどく驚かれて心配された。ただ、今連載中の朝井リョウの小説でも無音が嫌で一人暮らしの男が意図して換気扇を付けるシーンがたしかあったから、1人暮らしではあるあるだと思っている。換気扇ではなく、上下左右の部屋の音に耳を立てるときもある。壁に耳あり障子に目あり、隣室に私おり、である。音がしないと世界から阻害されている、取り残されていると体が感じるのだろうか、生理的に無音が気持ち悪い。どうでしょう、一人暮らしの方はこの無音の嫌な感じわかりますでしょうか。そんなことを考えながら換気扇の音を聴いている。

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