腰痛ファンタジー

今、世界がいつもと違って見える。恋をして薔薇色の世界が見えているのか、違う。昨日から腰が痛すぎて、黄土色、湿布色の世界で私は生きている。

私は腰が弱い。
高校の体育祭、前日のボーリングで腰を痛めて欠場したくらいだ。
最近は、久々にスポーツをしてぎっくり腰になることがよくある。
今回もそれだ。軽い気持ちで行った土曜日のフットサルが重い結果をもたらした。
ラインから出そうな浮き球にスコーピオンみたく触ろうと足を上げたら、ピキッと音がして、腰に激痛が。
いつものやつかと思いながら、まだ痛みがあまりなくプレーを続けたが、帰ってきてから痛みが強くなった。
寝たままが楽であるが寝がえりをうっても激痛が走り、起きようとしても激痛が走る、なにをしても痛い。
なにをするにも慎重に、腰を上げて右足左足と一歩一歩ゆっくりゆっくり歩く。
脳から信号を出しているのがわかりやすい動きだ。
腰って生活の基盤になっているんだなぁと思った。

ぎっくり腰から一夜明け、調べてみたら、安静にしているより動いた方が直りが早いらしい。
リハビリになるし、湿布が欲しかったので開店ほやほやのドラッグストアに行ってきた。
ただ、玄関開けたら世界がいつもと違った。
まず玄関開けるのでさえ、一度腰から崩れたくらいだった。
マンションから出たら、何も持たず放りだされたように感じた。
手すりがない…痛いときにすがれるものがない…一度崩れたらどうやって起き上がるんだろう…
そんな心配をしながら外を歩いたことがなかった。
自転車や車の動きが怖いので、注意しながら進路を選択する。
周りの状況が本当に怖かった。
こんなとき、あいさつ代わりにどついてくる友人がいたらどうしようかと思ったが、大阪の地にそんな友人はいないと気づいて、安心より寂しくなった。
腰に負担がないように歩いていたら、二足歩行ロボットASHIMO(覚えてる?)のような動きになっていた。
やっとの思いで駆け込んだ、ドラッグストア。
階段よりスロープで入店。
いつもなら、本当に買いたいものを悟られないようにぶらぶらほかの商品も見つつ本命の商品を買っている。
買う材料から今夜のメニューを悟られるのが嫌な性格だ。
ただ、今回ばかりは最速で店員さんに湿布の場所を聞き最短ルートで湿布を獲得し店を出た。
いつもの店員さんにポーカーフェイスは貫けていただろうか。
そんなことより帰り道も周囲に気を付けながら帰った。
マンションの上がっていくエレベーター内、重力に腰が耐えられなくて、どんどん重心が下がっていった。
エレベーターに手すりがあって本当に良かったと思った。

やっと帰宅して湿布を張って椅子にもたれて今、これを書いている。
思うと、世界が違って見えたといっても、高齢の生活を先取りしただけのようだった。
湿布色の世界ではバリアフリーの施策は結構ありがたい、周囲が結構怖いという発見があった。
いつもぎっくり腰は一週間もしないで治り、もとの生活に戻る。
世界が変わる経験は珍しくほかにも発見があるのだろうか。
発見はいつも行動から生まれる。
まず、昨日からの服や皿がそのままになっているそれらを片付けなければいけない。
重い腰をゆっくりあげてASHIMOが稼働する。


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