金利の勉強① 金利と債権

1.金利の決定要因

中央銀行は経済の状況に応じて、他の銀行に貸し付ける際に適用される金利をコントロールする。この金利を政策金利(=基準金利)と呼び、債権市場における短期金利(1年未満)をコントロールする。

景気拡大時
景気が拡大してインフレが高すぎるとき、政策金利は引き上げられる。そうすると、銀行の貸し出し金利も上がり、企業の借り入れ費用も上がるので、企業活動が減速する。また銀行の預金金利が上がるので、消費者は貯金を増やし、消費が減る。これにより経済活動は冷却される。

景気後退時
景気拡大時とは逆に、政策金利が引き下げられることで、銀行の貸し出し金利が下がり、企業は借り入れを増やして事業への投資を加速する。銀行の預金金利も下がるので、貯蓄の魅力が薄れる。

2.名目金利と実質金利

名目金利とは預金金利などの表面上の金利。実質金利とはインフレやデフレを考慮した実質的な金利。

実質金利=名目金利ーインフレ率

例)チョコレートで考える
インフレ率が2%のとき、100円のチョコは1年後に102円となっている。このときチョコ1個の価値が変わっていないとすると、お金の価値が下がっていることになる。つまり現在の100円の価値=チョコ1個分、1年後の100円の価値=チョコ0.98個分ということ。
このとき、もし名目金利が2%で1年後に償還される債権を1万円で購入した場合、1年後に受け取れる金額は1万200円となるが、インフレ率を考慮すると、現在も1年後も購入できるチョコの数は100個となり、同じになる。つまり実質的な金利は0だということになる。

3.長期金利と短期金利

短期金利は政策金利によって決定するが、長期金利は市場での需要と供給によって決まる。
中央銀行が政策金利(=短期金利)を下げると、インフレ率が上昇し、市場は債権の実質金利の低下を懸念する。このため債権発行者は、金利を高めに設定した新たな長期債を発行する。
この短期債と長期債の利回りの関係を示す曲線をイールドカーブと呼ぶ。

4.金利が債権に影響を与える理由

金利が上昇すると債権価格は下がり、金利が下降すると債権価格が上がる。

中央銀行が政策金利を下げると、インフレによる実質金利の低下を嫌って既存の長期債券を購入しなくなったり、売り始める。結果として既存の長期債権は需要(買い手)が少なくなり、供給(売り手)が過多になるため、債券市場での価格が下がる。債権価格が下がると、今度は価格が下がった分だけ償還時の実質的な利回りは良くなる。

例)1万円の10年債で名目金利2%の債券
価格が1万円のままなら、償還されたときに戻ってくるお金は1万円×1.02の10乗で約1万2千円なので、リターンは2千円。
価格が9千円に下がっていたときにその債権を購入したら、その債権が償還されるときに戻るお金は上と同じ1万2千円だが、取得金額が下がっているのでリターンは3千円に増えている。このときの実質金利を計算すると約2.7%。になっている。

上記のように名目金利(債権が発行されたときの利回り)は変わらないが、債券価格の変動により実質的な利回りが変わるため、米国債の金利は日々変動する。

5.金利上昇は債権にとって良いこと?悪いこと?

短期的には金利が上昇すると債権価格は下がるので、債権購入者のポートフォリオにはマイナスの影響。しかし、満期を迎えた債権の資金を、新たに利回りの高い債権に再投資すれば、長期的にはプラスになりえる。

6.債権に関する用語

ここまでは理解しやすいように、名目金利や実質金利という言葉をつかっていたが、債権では次のような用語を使う。

市場の実勢金利
 通常は国債利回り

クーポン(表面利率やクーポンレート)
 債権の名目金利のことで、4の例で言うと2%

利回り
 債権の実質金利のことで、4の例で言うと2.7%

プレミアム
 金利が下がっている局面では、過去に発行されたクーポンの高い債権の価値が上がり、額面金額より高く売れる(債権価格が上がる)。この額面金額と債券価格の差額(プラスの差額)をプレミアム(追加料金)という。

ディスカウント
 金利が上がっている局面では、過去に発行されたクーポンの低い債権の価値が下がり、額面金額より安くなる(債権価格が下がる)。この額面割れの状態をディスカウント(額面割れ)という。

金利リスク
 金利の変化がもたらすリスク



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