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「ほこみち」は、第二のPark-PFIになるのか?

いろいろ思うところがあり丁寧に記事にしたいのですが、取り急ぎ、
備忘録としてアップしておきます。

今、駅前の道路空間がアツい!

日経クロステックで、豊島区や新宿区が大規模ターミナル駅の再編とあわせて、駅前を歩行者中心の道路空間に作り替えようとしている、という記事がありました。

例えば池袋駅では、駅から区役所に向かうグリーン大通りの駅前を歩行者広場として再編し、このようなイメージ図も公表しています。

東京都豊島区が示した池袋駅東口側の将来イメージ。豊島区役所に向かうグリーン大通りの駅前部分を歩行者広場として再編する(資料:豊島区)
※日経クロステックより引用
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/021600982/?SS=imgview&FD=-1841543214

歩行者中心の道路を目指す取り組みは「ウォーカブル政策」とも呼ばれ、居心地がよく歩きたくなるまちなかを作っていこう!という国交省の分野横断による目玉政策でもあります。

都市局や道路局などいくつかのセクションが連携して法改正や税制改正、交付金制度を整えていますが、中でも注目されるのが「歩行者利便増進道路制度」、通称「ほこみち」です。

ほこみちで何が変わるの?

ほこみちは、従来きびしく制限されていた道路区域内の店舗や広告設置の規制が緩和されたり、道路区域内に歩行者が安心して滞留できる空間を設けることができるようになりました。

ほこみち制度の概要
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001327435.pdf

これ、道路空間でイベントをやってきた方や、道路設計に携わったことのある方なら、どれだけ画期的なことかわかっていただけると思います。

道路は本来、無償でだれでも安全に利用できるべきであり、店舗などを設置して通行を阻害したり利益を得ることは認めない、とされてきました。

ところが、車中心社会や郊外型店舗の立地等により中心市街地の衰退が進行する中、地域活性化の文脈の中で道路空間の魅力づくりが見直されるようになってきました。

平成17年には、地域活性化を目的とした路上イベントのためのオープンカフェ設置が認められ、翌年には放置自転車対策として道路上への駐輪場整備が可能となり、平成20年には地域のイベント費用に充当するために道路内での屋外広告が認められるなど、段階的に運用改善がなされていきます。
それらを受けて平成23年に道路法が改正され、道路内に店舗や広告を設置するための手続きが明確化されるとともに、都市再生整備計画に位置付けることで規制が緩和されました。
いわゆる「道路空間のオープン化」です。

国交省資料より引用
https://www.mlit.go.jp/toshi/pdf/tebiki/tebiki_05.pdf

その後、新宿区や札幌市、大阪、福岡など様々な都市で、道路上の賑わい空間づくりが相次いでいきますが、これらは限界もありました。
この頃の道路空間の利活用は「占用許可制度」というものを利用していて、簡単にいえば「道路としての機能を妨げない範囲で『目的外利用してもいいよ』」というものでした。
なので、歩道に十分な空間がない場合は、道路の機能を阻害する可能性があるので、店舗などは設置できないのです。

これらの課題に対して、ほこみちの制度改正ではさらに踏み込んで、道路区域の中にはじめから「賑わいを目的とした空間」を設けることができるようにしたものです。

国交省資料より引用
歩行者利便増進道路制度(ほこみち)の概念


ほこみちは今後、広がっていくのか?

占用許可が受けやすいように道路区域の概念を緩和したこの制度。
沿道飲食店などが道路を占用する際の許可基準を緩和し、歩行者が快適に通行し、なおかつ滞留できる道路としての整備を可能とするものです。
また、通常5年の占用期間が最長20年まで認められるため、民間事業者が空間整備の投資をしやすくなり、道路沿道のにぎわいがうまれることが期待されています。

土木界隈では、都市公園で先行して盛り上がりを見せているPark-PFIの道路版になるか?という期待値も膨らんでいるようです。

 並行して進んでいた土木領域における公共空間活用の取り組みが成果を上げ、都市領域と合流したのが画期的な点だ。国交省水管理国土保全局が主導する河川活用、同都市局公園緑地・景観課が主導する公園活用(Park-PFI=公募設置管理制度)などが全国に広がり、20年末の時点で「次は道路だ」とムーブメントとする機運が高まっていた。
 20年5月には道路法の改正が成立。同年11月にはにぎわいのある道路空間を構築しやすくする前出「歩行者利便増進道路制度(通称:ほこみち)」が創設されている。

21年12月開催の「ホコミチインスパイアフォーラム 2021」の様子。国土交通省道路局が主催し、ほこみちや関連する先進的な取り組みの事例を実践者が報告した。前年の20年の時点で「次は道路だ」という掛け声が上がっていた(写真:日経クロステック)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/021600982/?P=2


私は、平成23年度の道路法改正の際にコンサルタントとして制度検討に関わり、その後もPark-PFI導入を支援するアドバイザーとして公園の民間収益施設導入を進めてきた経験を持っています。
そのため、公共空間の利活用が公平なプロセスで進められていくのは大賛成ですし、道路空間に賑わいを生み出すため道路法改正にまで踏み込んできた点に、道路局の本気度を感じます。

平成29年に法改正(施行)され、その後爆発的に案件数を増やしているPark-PFIのように順調に進むのでしょうか。
個人的には、そんなにうまくいかないと思っています。


Park-PFIより、ミズベリングに近い動きになりそう

公園は道路と違って、もともと滞留することを目的とした空間であり、図書館や美術館などの公共施設に加えて、民間が所有する飲食施設でさえ「公園施設」として法的に位置づけられているのです。
Park-PFI制度は、正式名称を「公募設置管理許可制度」と言い、そもそも公園内に設置することが認められている民間収益施設を、公募プロセスを経ることで事業期間を20年まで延長してあげましょう、というものです。

対して、ほこみちでは、道路区域の中で滞留空間を設けることはできるけど、その空間に飲食施設を設置するのはあくまで例外(占用許可=目的外使用)となります。そのため、もし占用許可を受けた飲食施設が「歩行者の邪魔になっている」と言われてしまえば、20年未満でも許可が取り消され、撤去しなければならない可能性があります。

また、道路区域内に「賑わいを目的とした空間」を設ける必要がありますが、歩行者の妨げにならず滞留空間を設けられる道路が、全国にどれだけあるか未知数です。
ほこみちの対象道路を選定するところから、準備を始めなければなりませんし、おそらく道路管理者と警察との協議にも時間がかかるでしょう。

ほこみちがPark-PFIのように身近な制度になっていくのか。
それとも、河川空間のオープン化(河川敷地占用許可準則の緩和)や『ミズベリング』のように、地域協議会を立ち上げて合意形成しながら、できるところから着実に進める制度になっていくのか(おそらくこっち可能性が高そう)。

しばらく動向を見守っていきたいと思います。



公民連携によるまちづくりや公共施設整備、利活用のアドバイザーを本業にしています。お仕事の依頼もお受けしていますので、ぜひこちらもご覧ください。


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