おっさんの戯言

何度目だろう。
澄んだ青空、朝晩はめっきり冷えて、日中はまだ夏が終わりたくないのかな、と思えるくらいのときもある。

高い空を見上げると、あれが随分昔の出来事のようにも思えるし、ついこの前のことのようにも感じられる。

あいつはずぶ濡れで、笑いとも泣き顔ともとれるような様子で叫んでみせた。

「やれるもんならやってみろ!」と…。

僕はそれが羨ましかたったのか。
今の僕は正しいのか。

あの空はその答えをくれるのか。

なにかが大きな音を立てて水に沈んだ。

受験を控えた10月。
春まではそんな事気にならなかった。打ち込むものがあったから。

夏、どうしたって皆が自分の将来を決めようともがいていた。
でもあいつはいつもそんな事知らん顔でいた。
思えば皆と違うことばかりやって鼻つまみ者だった。少なくとも僕から見れば。

「他人からどう言われたって関係ないね。」

あいつはいつもそうやって反抗ばかりしてるように思えた。

じゃあなんで進学校にいるんだろう?
良い大学に入って立派な会社に勤めたり、偉大な研究をすることを期待されたんじゃないのか?

…でもそれは、本当に自分が望んだことなのか?
誰かに敷かれたレールの上をただ辿ってるだけじゃないのか?

あの頃の僕は多分それを考えることを拒否していたのかな?

10月の澄んだ空は僕を試しているのだろうか。

「お前はそれでいいのか」と…。

会いたい。その答えを知りたい。

あの時驚いて窓から顔を出して見た、
プールで独り水しぶきを上げたあいつに会いたい。
ずぶ濡れで、教師からも見放され、それでも不敵に笑うお前に会いたい。

そうしたら、あいつはまた僕たちに中指を立てるのか。

「やれるものならやってみろ!」と。

10月の空はその答えを僕にはくれない。

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