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Collapse - Counterparts【和訳】

" それも無理なら、僕なしで生き続けてくれ
君が上手くいってくれるなら、もうそれでいいんだ
"


カナダ産叙情系ハードコアバンドCounterpartsの4thアルバム"Tragedy Will Find"から一曲、"Collapse"です。

バンド名のCounterpartsという英単語、日本語で説明するには例文を用いないと難しいです。「(異なる組織で機能が)同等の人・もの」という意味なのですが、この文字だけで意味が分かったら凄いと思いますマジで。
Alternative代替)と意味が近いところはあるのですが、基本的には違う組織において同じ役職をしている誰か、を表すときに使う単語みたいです。
参考はこちら……コレ読んで勉強しました)

正直僕はこのバンドをしっかり追えてはいないので、このバンド名が何を表しているのか正確に捉えることはできません。
敢えて推測するなら「(この曲を聴いているのあなたと違う場所にこそいれど)同様の存在」……でしょうか。
もしくは「(バンドのメンバー同士で全く違う人間に見えるが)本質や役割は同じ物を抱く集団」という意味にも捉えられるかもしれません。

冒頭からまどろっこしい説明になりましたが、
この曲の歌詞は終始そんな感じです。有体に言ってすごく難しかった。
どこぞのSOADBMTHよりもさらに詩的に特化した表現で何を表しているのか読み解くのにめちゃくちゃ苦労します。インタビューでの本人のコメントですら難しい。なんだこのバンドは……なんだこのボーカリストは……ってなりました。

きっと彼の痛みは複雑で難しく、多くの人が理解できるかは分からないものです。
それでも読み解きたい、彼の痛みに迫りたい、という方がいれば、是非お付き合いください。


- Title: Collapse (2015)
- Lyrics: Brendan Murphy
- Album: 4th Album "Tragedy Will Find Us" (2015)


Back-pedaling into the black
But I can still make out the figures
That will threaten my well-being

視界が真っ暗な深淵へと戻っていく
そんな中でも、まだギリギリ見えるんだ
僕の心身の平穏を脅かす群像を

The wind will rise and fall
But never sway from side to side

身体も気分もめちゃくちゃに上下していく
だけど状況は決して変わらない

Progression halted
Encapsulating the fluid weave of death

前進はとっくに止まったんだ
死の螺旋が、これでもかとカプセルに織り込まれていく

Like a garden that contains all of its arrested offspring
We’re afraid to force our legs to break free from the earth
And take the first step towards our insecurity

子供達の足を搦めとる庭のように
僕らはもう、この大地に張った根を抜くことが怖くて仕方ないんだよ
最初の一歩すら、不安定な方へと向かってしまうんだ

Sleep away your selfishness
Slip into collapse
A still-like state of disregard
From which you can’t fall back

君の身勝手を眠って過ごしてしまおう
もうボロボロになってしまおう
無関心に至ってしまおう
君にはそれを見過ごすことはできないだろうね

You never fully moved me
I’ve been embedded in the dust
And my mind has been ravaged by war

でも僕を変えることなんて出来やしないさ
塵芥の中に埋め込まったまま
僕の心は蹂躙されてグチャグチャだ

Pray for farewell as if I was yours to lose
僕は君のものではなくなったんだろう
だからどうか、さよならって言ってくれないか

I would love to love you, if you were someone else
So forgive me for being unresponsive

君が赤の他人だったとしても、僕は君を愛するよ
君を愛することを愛したいんだ
だから許してほしいんだ、無反応だった僕を……

I’m sure it’s hard to train your ears
To hear me crying out for help
With my lips sewn shut by the stitches of my own indecision

一体どれだけの時間がかかるんだろう?
優柔不断で縫い付けられた僕の口が開いて
救いの叫びが君に届くまでには……

So I’ll speak in whispers to permit my throat relief
I bite my tongue
Fill my mouth with blood
And swallow enough to kill me
Before I’m forced to lose more sleep

だからせめて、喉を少しずつ開くために囁くよ
自ら舌を噛んででも
口の中が血で滲んでも
息ができなくなるまで、その血を飲み干すよ
これ以上眠れなくなってしまう前に

So I’ll speak in whispers to permit my throat relief
I bite my tongue
Fill my mouth with blood
And swallow enough to kill me

だからせめて、喉を少しずつ開くために囁くよ
自ら舌を噛んででも
口の中が血で滲んでも
息ができなくなるまで、その血を飲み干すよ

I would love to love you
If you were someone else
Am I fit to walk alone again
Or will you save me from myself?

君が赤の他人だったとしても、僕は君を愛するよ
君を愛することを愛したいんだ
なあ、もう一度一人で歩くほうがお似合いか?
それとも、君が僕を救い出してくれる日が来るのか?

Breathe life into me
Be all that I can see
Or carry on without me
And just know I wished you well

もう一度この体をゆり起こしてくれ
僕に視界を取り戻してくれ
それも無理なら、僕なしで生き続けてくれ
君が上手くいってくれるなら、もうそれでいいんだ

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要するにこの曲は、
君はめちゃくちゃなヤツだったけど、僕は臆病で何も言えなった
僕は君に踏みにじられてボロボロだけど、それでも君を愛してる
どうか君には幸せになってほしい。僕との問題について細かく解きほぐしていくか、新しい誰かを見つけて幸せになってほしい
……と、ズタボロにされながらも歌っています。ものすごく一途です。

恋人を想いすぎて言いたいことを上手く伝えられずに、そんな彼を無反応で無頓着だと受け取った彼女にズタボロにされて、彼女と自分の相性は最悪なのかもしれない、と至ってもなお、
それでも彼女のことを心から愛しているし、なんならこの歌詞の通りです。

I would love to love you
If you were someone else
君が赤の他人だったとしても、僕は君を愛するよ
君を愛することを愛したいんだ

Or carry on without me
And just know I wished you well
それも無理なら、僕なしで生き続けてくれ
君が上手くいってくれるなら、もうそれでいいんだ

まさに歌詞のとおり、自身の優柔不断で縫い付けられた唇を、血を流しながら開いてようやく囁いて……最後には「僕を愛さなくても僕は君を愛してる」と伝えます。
途中で「めんどくせえだろうけどなんとかお互いの課題を解消してくれないか」って歌ってるのでかなり未練タラタラなんですが、それでも最後に残るのは相手への思いやりです。血を流しても、その血で溺れそうになっても、これ以上眠れなくなって気がおかしくなる前に、君が生きたいように生きてくれ、と言葉を残してこの曲は終わります


補足と言ってはなんですが、ボーカルのBrendanがこの曲について語ったインタビューがGenius Lyricsに掲載されていたので、引用して和訳します。

The song is a metaphor for falling out of love with someone,
about how all the beauty is stripped away and you’re left (at least in some cases) hating the person you more or less shared a life with.

この曲は失恋の歌なんだ。
あんなにも美しかったものが少しずつ剥がれはじめて、
少なからず人生を共にしてきた人への憎しみだけを君は残していく。
そんな失恋の歌だ。

After a relationship deteriorates, you look back on the time you spent together.
You can either go over everything with a fine-tooth comb and try and pinpoint how or why it fell apart, or you can be content with the fact that it happened and grow.

関係が悪化してくると、君は共に過ごしてきた過去ばかりを振り返る。
この時君にできることは、
微笑な問題の全てを乗り切り、試行し、
どれほど駄目になっている関係でも正確に見極めるか……
この問題が大きくなっていくのをただ見過ごすかだ。

For the ones who can easily identify peace and tranquility in the midst of tragedy, this is for you.
悲劇の只中で、平穏と安寧の違いを簡単に明確にできる誰か……そんな人が君には必要なんだと思うよ。

最後の一文が特に難しかったんですが、要するに、「平穏と安寧は違う」とBrendanは捉えています。
日本では事なかれ主義と言い、波風立てないで砂上の楼閣の上の平穏に案ずることを安寧と呼びます。逆に真の平穏とは、不安定要素をなるべく突き止めて取り除いた上で成り立つ特別なものです。

僕の職場では「安全は当たり前に達成すべきもの」という風に捉える方が多数なんですが、僕は「安全は数々の危険を取り除いた末に成り立つ極めて特殊な状態」だと考えています。100%安全な場所、100%守られた生活というのは、誰かの血の滲むような努力や経験とそれを知らずに受け取っている人達の錯覚によって成り立っています。
そういう意味では世の中の全ては砂上の楼閣です。何か風やら嵐やらが吹けば、楼閣を築き上げてきた誰かごと吹き飛ばされてしまう。
恋愛においても生活においても社会基盤においても、僕らは誰かの作り上げた仮初の平和の上でたまたま何も起こらないで生きています。
まさしく3.11の8年後にあたる今日ですが、平穏なんて特殊な状態で、それが突然崩れ去ることは往々にしてあります。

彼はそれを自分達の恋愛に置き換えて表現した。
彼自身ボロボロになって耐えている状態を平穏なんて呼ばないでほしいと。
僕らが関係を保つには血のにじむような面倒で途方もない努力が必要だと。
それを拒むなら僕は君に相応しくなかったんだと……


Like a garden that contains all of its arrested offspring
We’re afraid to force our legs to break free from the earth
And take the first step towards our insecurity

子供達の足を搦めとる庭のように
僕らはもう、この大地に張った根を抜くことが怖くて仕方ないんだよ
最初の一歩すら、不安定な方へと向かってしまうんだ

最後に上記の部分についてGenius Lyricsで解説があったので、それを紹介して終わりにしたいと思います。Gardenって何やねんっていう話。

After the pain of betrayal and a bad relationship,he was stuck in a state of fear and depression.
Likening it to plants rooted in the ground,
he is saying that we’re too afraid of being hurt again to move forward in life and experience love again.

裏切りと悪化した関係は強烈で、
彼は恐怖感と抑圧感から抜け出せなくなってしまった。
植物が大地に根を張るように、彼らの心には刻まれてしまったのだ。
前に進むことで傷ついてしまうことや、もう一度愛することへの恐怖が。

恐怖心が根を張って、現状を変えるよりも安寧へと沈んでいってしまった二人が描かれている。その二人が沈んでいる場所のことをGardenと言っているわけですね。

なぜこのフレーズを紹介したのかというと……次回をお楽しみに。