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静寂ラストダンス - 死際サテライト【和訳】

互いの瞳を縫い付けたなら
あなたは私に振り向いてくれるの?

2017年まで活動していた東方パンクアレンジサークル死際サテライトから1曲、静寂ラストダンスです。

この曲はDARK CASTLE EPが初出、その後アルバムDead SilenceDead Weightでリアレンジされました。
音楽性を少しずつ変えていった同サークルですが、この曲に関しては大きく展開を変えることもありませんでした。
それほどの名曲だったと言えます。

死際サテライトの楽曲は歌詞が公開されていないため、独自に聞き取りを掲載しているサイトForeground Noises様からの転載となります。
文法上不明な箇所もありますが、僕の独断と偏見で汲み取っています。

どうしてあなたはそんなに平気でいられるの。
そんな曲です。

Foreground Noises - 静寂ラストダンス // Seijaku Last Dance
   問題があれば削除しますのでお問い合わせください
/ Please contact me if you're care of the reprinting
※掲載するMVはDEAD WEIGHTに収録されている日本詞版です。御容赦ください。

Scouting out, your eyes see
The soul and they see it bared
Please stop this aching!
Jump, take your heart deeper

あなたの瞳が見たものは何?
剥き出しの本性を暴くことは
心の深淵を覗いてしまう事は
どうしてこんなに痛いものなの?
ねえ、どうして聞いてくれないの?

Big bang, the fire so laid out the sun
It will combine with darkness,
What’cha worse for!?

あんなに光を放って輝いていたものが、暗い影を落としていく
そんなもの、もう見たくないの

Satellites are falling into a darkness of feeling
Did you think I ever should have fallen for you?

輝いていたものが闇へと落ちていく
その中に私も加わって
あなたという闇へと落ち行くんだろうか

Let me take your heart, see if it goes in better when it’s sewn together
Rock and Roll and Rocking to Die

互いの瞳を縫い付けたなら
あなたは私に振り向いてくれるかな
美しいもの、勇ましいもの
みな死にゆくために存在するんだ

Get up and meet up with me emotionally
Shine on and shine on, light your life forever

抑えきれない感情が私を叩き起こす
私は輝くよ
そして永遠にあなたの行く道を照らすんだ

She’s possibly a nightmare, a made up lie
It will combine with darkness
What’cha worse for!?

あなたは嘘で塗り固められた悪夢かもしれない
あの暗闇と同一の存在かもしれない
ああ、そんなはずはないわ

Satellites are falling into a darkness of feeling
Did you think I ever should have fallen for you?
Let me take your heart, see if it goes in better when it’s sewn together
Rock and Roll and Rocking to Die

無数の衛星が暗闇へと落ち行く
その光景に私も加わって、あなたの元へ落ち行くの
互いの瞳を縫い付けたなら
あなたは私に振り向いてくれるの?
美しいもの、勇ましいもの
みな死にゆくために存在するのかな

And you always tell me the same
I can’t say what that means…

あなたはいつも同じことを私に言っていた
私には決して言えないことを

Sometimes your heart sees
The soul and they see it bared
Please stop this aching!
Jump, take your heart deeper
Big bang, the fire so laid out the sun
It will combine with darkness
What’cha worse for!?

瞳が見た物は何?
剥き出しの本性ってどんなものなの?
どうしてこんなに痛いの?
ねえ、振り向いてよ、お願い
太陽のもとで燃え盛る輝きが
暗闇に溶けて消えてしまう光景なんて
もう見たくないの

Satellites are falling into a darkness of feeling
Did you think I ever should have fallen for you?
Let me take your heart, see if it goes in better when it’s sewn together
Rock and Roll and Rocking to Die

無数の衛星が暗闇へと落ち行く
その光景に私も加わって、あなたの元へ落ち行くの
互いの瞳を縫い付けたなら
あなたは私に振り向いてくれるの?
美しいもの、勇ましいもの
みな死にゆくために存在するのかな

Satellites are falling into a darkness of feeling
Did you think -you- ever should have fallen for you?
Let me take your heart, see if it goes in better when it’s sewn together
Rock and Rolling to Lie

無数の衛星が暗闇へと落ち行く
その光景に、私も、あなたも加わって、
あなたの元へ--暗闇へと落ち行くの
この瞳を縫い付けたなら
あなたは私に振り向いてくれるの?
私の心を揺さぶるものは
みんな嘘をつく

It’s you…
あなたも......

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たぶんこの曲は、
瞳を閉ざす前の古明地こいしが、
同じ瞳の能力を持ってもなお平生を保っているに、
なぜあなたは無事で、私は無事ではないの?
と、ぶつける曲......だと思います。

思いますというのは前述の通り、死際サテライトは楽曲の歌詞を公開しないサークルで、この歌詞も有志の方(Foreground Noises様)が聴き取りでなんとか書き取ったものだからです。この曲の真意はサークルにしかわからん。
......という前提のもと、曲の真意に迫りたくて、存在する情報で読み解いた結果が上記の和訳です。

古明地姉妹の設定解説に移る前に歌詞の話を。

Big bang, the fire so laid out the sun
It will combine with darkness,
What’cha worse for!?

あんなに光を放って輝いていたものが、暗い影を落としていく
そんなもの、もう見たくないの

このフレーズは無理くり直訳すると、
太陽が放つ炎は暗闇と同化していくだろう。なんて醜いの
......というところでしょうか。

太陽と宇宙空間(暗闇)の情景を描いているようにも思えますが、この時点では何を例えているのか分かりません。が、この直後で読み取れます。

Satellites are falling into a darkness of feeling
Did you think I ever should have fallen for you?

輝いていたものが闇へと落ちていく
その中に私も加わって
あなたという闇へと落ち行くんだろうか

和訳ではSatelliteを前文のthe sunと関連付けて「輝いていたもの」としました。
そしてこの部分で「輝くものと暗闇」がyouと繋がっていきます。
Satellitedarkness of feelingへとfalling......すなわち落ちていきますし、
I ever should have fallen for you......でもう一度fallというフレーズが使われています。

衛星が宇宙の暗闇へと消えていく光景。
それと同じように、私(こいし)もあなた(さとり)のもとへと落ち行く。
そして、太陽の輝きが暗闇と結合していく光景は醜いと前の歌詞で言っている。

つまり、姉のさとりを、醜いものだと言ってしまっている......んですよね。
それも、かつてはあんなに輝きを放って、頼りになって、支えになっていた姉が、
何かをきっかけに「暗闇」と同質のものだったということを知る

Rock and Roll and Rocking to Dieも訳に悩みましたが、上記を元にするなら和訳のようになるかと......

さて、楽曲のモチーフである姉妹の解説です。

古明地さとり・こいし姉妹は、2D弾幕ゲーム東方Projectシリーズに登場するキャラクターで、設定上いわゆる「サトリの妖怪」です。
体の外側に血管の如く繋がった第3の目を通じて、相手の感情が読める能力を持っています。一字一句違わず考えていることが分かります。
なぜか古明地こいしだけは初登場時点で第3の瞳を閉ざしており、感情を読む能力を失った代わりに自身の無意識を発現させる能力を持ちます。
であるさとりも瞳を閉ざしたこいしの心の中までは読めないと言っていますが、なぜこいしが瞳を閉ざすに至ったのかは明かされていません。

また、姉妹が登場した作品東方地霊殿は「数多くいる妖怪にも疎まれる地底に住まう妖怪」が登場する作品で、姉妹も「疎まれる」対象としてもれなく入っています

これらの理由から、「姉妹は望まない能力を持ち、それに対する周囲の反応に耐えきれず、妹は自ら能力を絶ってしまった」......という二次創作作品が当時流行しました
すげえ不憫なやつら、として取り上げられたわけです。
(まあ後年、姉のさとりは自己評価がクソ高い奴であるという、この解釈とは異なる方向の公式設定が出たんですけど、それはまた別のお話......)

そんな当時のイメージのまま、この曲も生まれたのだと考えます。
疎まれる姉妹。望まない千里眼。
どうしてお姉ちゃんは平気なの?
私だけがこんなに痛いのはなんで?
こんな思いをするならいっそ、瞳を閉ざしてしまえば......

という、瞳を閉ざすに至る経緯としては鉄板の二次創作的解釈です。もはやステレオタイプですが、僕はこの設定を何度見ても性懲りもなく胸が締め付けられる思いがする。
この歌もそういった姉妹の苦悩と悲しみを描いたものではないかと歌詞を読んでいて思いました。

youの対象は様々に読めると思うんですが、sewn together瞳を共に縫い付ける」というフレーズは、同じ第3の目を持つ姉に対してしか言えないんじゃないかな......と思う。
瞳を閉ざしたいとまで思う気持ちを、あなたも一緒に瞳を閉じれば理解してくれるかな......というところかと。

この歌で描かれる姉妹は、
瞳を使って誰かの心を暴いても全然平気」で、
妹だけ心を暴くことが耐えられない」という状況です。
しかもこの能力を持つのは作中この2人しかいないので、
こいしにとってさとりは必然心の拠り所になりますし、その姉に理解されないことは確実にこいしの心を蝕んでいたのでしょう。

Let me take your heart, see if it goes in better when it’s sewn together
互いの瞳を縫い付けたら、あなたは私に振り向いてくれるかな

自己を傷つけることで注目を浴びようとする行為の最たるものは自殺でしょうか。
妖怪にとって能力を閉ざすということは、自身が全く別の存在になるということにほかなりません。それこそ自殺でしょう。

拠り所をなくして、心をギリギリつなぎとめていた姉に微かな希望と後悔を残しながら瞳を閉ざしていく。妖怪として自殺していく。
そんな光景が目に浮かびます。


しかし本当にエモーショナルなバンドサウンドを作るサークルですね……特に叢原セントエルモと思兼インジェクションは傑作中の傑作だと思います。