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Inner Space - Pearls Before Swine【和訳】

"だから、君は君を取り戻すしかないんだ"

東方アレンジサークルPearls Before Swineが参加するコンピレーションアルバムLet's Change The World's End(主催:Squall Of Scream)から1曲です。

参加作品のほとんどをメタルコア・ポストハードコアが占めますが、この楽曲はヘヴィではあるものの、シンセサウンドや透明感のあるボーカルが刺さる、いわゆる「かっこいい」サウンドです。全編英詞。車とかで流したい。

※動画はクロスフェードです。3:30あたりから始まります。

※ところでこのアルバム、DL販売がなく、現行分がなくなると廃盤になります。今回紹介する楽曲も売り切れると二度とFull版聴けないかも……なので、気になれば是非チェックしてみてください。間違いなく名盤です。


you are standing here
even though I want to tell
you don't find me yet

君がそこにいるのは分かってる
伝えたいことがあるんだ
だけど君はまだ、僕を見つけてくれない

In darkness, and I went splashing through the pool, that is all.
暗い水槽の中から、ただひたすらに水面を目指した

stop bless. I focus on my mind.
at last, in the other end of the phone I found you.

呼吸を止めて、覚悟を決める
水面の向こうに、とうとう見つけたよ

till now, here I am here I am, I'm calling you in your side.
can you never feel me, if so I don't call you anymore.

今までずっと、今もそう、君の傍で君を呼んでいるよ
もっと叫ばなければ、もっと強い声を呼ばなければ
君はずっと僕に気付けないままなんだ

but I will not give up as long as I can see you.
I never forget you took me out once from here.

この目に君が見える限り、決して諦めないよ
僕を連れ出してくれた君のこと
絶対に忘れない

till now I'm calling you.
I'm calling you.
I'm calling you.
I'm calling you.

今もずっと呼んでいる
今もずっと叫んでいる
これからも伝え続ける
水面の向こうの君に

I'm calling you.
僕は呼びかけ続ける

I'm standing here, be afraid of the shadow.
it makes me crazy, little bit.
影を恐れて、立ち尽くしている
ほんの僅か、気が触れそうになる

in deep and deep. fire of my life becomes weak gradually.
それでも、深く深く潜って
命の灯は少しずつ衰えていく

stop bless. I focus on my mind.
at last, in the other end of the phone I found you.

呼吸を止めて、覚悟を決める
水面の向こうに、とうとう君を見つけたんだ

till now, here I am here I am, I'm calling you in your side.
can you never feel me, if so I don't call you anymore.

今までずっと、今もそう、君の傍で君を呼んでいるよ
もっと叫ばなければ、もっと強い声を呼ばなければ
君はずっと僕に気付けないままなんだ

but I will not give up as long as I can see you.
I never forget you took me out once from here.

この目に君が見える限り、決して諦めないよ
僕を連れ出してくれた君のこと
絶対に忘れない

till now I'm calling you.
I'm calling you.
I'm calling you.
I'm calling you.

今もずっと呼んでいる
今もずっと叫んでいる
これからも伝え続ける
水面の向こうの君に

I'm calling you.
僕は呼びかけ続ける

I want you to be in the side when I wake.
you stay on my mind.

次に意識が戻ったら、水面の向こうにいるのかな
ずっと想い続けた君のもとに

I'll fall asleep soon, before your eyes.
but you can't touch me, unless you are you.

君の眼前で意識が途絶えていく
そんな僕に、壊れてしまった君は触れることさえできない
だから、君は君を取り戻すしかないんだ

till now, here I am here I am, I'm calling you in your side.
can you never feel me, if so I don't call you anymore.

僕はずっと傍にいるよ
傍で君を呼び続ける
だけど、君が君を取り戻さなければ……
君に僕は見えないだろう

but I will not give up as long as I can see you.
I never forget you took me out once from here.

この意識が途絶えるまで、決して諦めないよ
僕を連れ出してくれた君のこと
絶対に忘れない

till now I'm calling you.
I'm calling you.
I'm calling you.
I'm calling you.

今もずっと呼んでいる
今もずっと叫んでいる
今もずっと求めている
君が戻ってくれることを


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曲名のInner Spaceとは「大気圏」「海面下の世界」「精神世界」……
ようは「浮遊感のあるどこか、地に足つかないどこか」でしょう。
アレンジ元楽曲である「輝く針の小人族 ~ Little Princess」が流れるステージは宙に浮いた城なので、確かに浮遊感があります。
ここでは「海面下の世界」が最もこの楽曲に合うように思います。

Aメロのエコーのようなシンセは海底・水中をイメージさせますし、

In darkness, and I went splashing through the pool, that is all.
暗い水槽の中から、ただひたすらに水面を目指した

冒頭のこの歌詞からも、これは「水中一つ隔てた、向こうの水面にいる君に呼びかける」という歌です。
声を届けたい人の場所までは、果てしない距離があるけれど、
死ぬ気で頑張ったら何とか届くかもしれない
……
呼吸を止めて、その距離に挑むのが歌い手です。

I want you to be in the side when I wake.
you stay on my mind.

次に意識が戻ったら、水面の向こうにいるのかな
ずっと想い続けた君のもとに

Cメロの歌詞はこの旅路の後半をイメージさせます。
呼吸を止めて暗い海底を突き進み、意識も朦朧とし、とうとう届くか分からない、届かないかもしれない……という時点の歌い手の心情。

I'll fall asleep soon, before your eyes.
but you can't touch me, unless you are you.

君の眼前で意識が途絶えていく
そんな僕に、壊れてしまった君は触れることさえできないだろう
だから、君は君を取り戻すしかないんだ

そしてCメロの最後のこの歌詞ですが……良い殺し文句だと思いました。
ようは自己犠牲ですが、
ボロボロでそれでも優しい君なら、ボロボロになって海中を渡った僕を見たら、気を取り戻してくれるだろう……という。
ここまでやったんだから、後は分かるよな」っていう。
ボロボロになった主人公のために、ボロボロになって想いを取り戻してもらう。少年漫画だなあ。熱い曲です。

直接的かつ教訓的に捉えるならば、この曲は、
この曲を聴いた誰かへの激励、かもしれません。


-半分余談-

輝く針の小人族 ~ Little Princess」はこの楽曲のアレンジ元となった東方Project(シューティングゲーム)の楽曲ですが、
そちらも徐々に力を付けて立ち上がっていくような曲展開になっていて、Inner Spaceはその辺りのニュアンスを上手く回収したアレンジ楽曲になっているなあ、と思った次第。

原曲のキャラクターである少名針妙丸は同ゲームの敵キャラクターであり、
物語中「強者に牙剥く弱者」であり、敵キャラでありながら主人公じみた境遇と、弱者が報われる世界のため、という強い想いを持ちます。

僕の想像、或いは妄想に過ぎませんが、強者の前に膝折り、自分を見失った針妙丸に歌い手が必死で声を届ける……という楽曲のようにも思えます。
いや、針妙丸が「君」に声を届ける曲かも。
そう捉えると「君」とは、もしかすると似た境遇を持つ正邪に呼びかけている……うーんこれもまた良い世界かもしれない……と思いますね。

ご興味があれば調べていただきたいのですが、少名針妙丸鬼人正邪という二人のキャラクターがいて、
下克上を共にした仲間でありながらも、前者は本気で自分たちの幸せを願っている人物で、後者はとりあえず良い面をしてる奴を搔き乱したいというだけの妖怪です。
どういうことかというと、
針妙丸は正邪を仲間として信頼していますが、正邪は針妙丸の力をただ利用しているだけ、というモチベーションの違いがあります。
でも針妙丸は根っから良い奴だから正邪を信頼してしまうし心配するんだよな。最後は暴走した正邪を針妙丸が止めに行くんだけど。
二次創作作品の中でも、二人の心情のギャップがよくテーマとして描かれているんですよね……うん……良いよね……

まあ何を言いたいかというと、前述のとおり、
この楽曲を仮に「歌い手 = 針妙丸」が「君 = 正邪」に呼びかける曲なのだと解釈すれば、
必死に呼びかけるし決死の覚悟で水中を潜って正邪に会いに行くけど、
正邪は正直そんな針妙丸にドン引きで何なら目もくれない

……もしくは、
必死に呼びかけるし決死の覚悟で水中を潜って正邪に会いに行った結果
正邪が針妙丸をさすがに心配して取り乱す」かもしれないな、と。

前者ならとことん正邪らしいキャラクターだし、後者だとしたら優しい世界ですね。妄想が捗ります。


*memo*

even though I want to tell
even thoughとeven ifは両者とも「たとえ~でも」と訳せますが、
even thoughは「~であることが確か」な場合、
even ifは「もし~であったら」という仮定の話、に使うそうです。

In darkness, and I went splashing through the pool, that is all.
went + ~ing ...は「...(場所)で~をした」という構文です。
...(場所)に当たるのが "through the pool"です。
goの後はtoで行先を示すのが一般的用法ですが、この構文は例外で、
「...に行った」というより「...で~した」のほうが正しい理解のようです。だからtoを使わない。という。ただ、前後の繋がり的に、the pool(水槽)の中から、水を撥ねに行く = splashしにいく = 水面へと向かう……という意味のように思えました。なのでこういう訳です。

at last, in the other end of the phone I found you.
in the other end、endは「端」の意味で、「(こっち側とは逆の)向こう側の端」を表します。of the phoneと続くので、「電話の向こう側」です。後にI'm calling youが連発されるので、それと対応してphoneなのでしょう。もっとも、訳では「電話」よりも「水槽と水面」を推しているので、一度も電話というフレーズは出てきませんが……