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Blue and Yellow - The Used【和訳】

とりあえずで、君は手を握ってくれて
そうしている間に、君といられる時間がただ消えていくんだ
"


スクリーモ黎明期のバンドとしてSaosinと肩を並べるバンドThe Used
その1st Album"The Used"から一曲です。

ごくごく極小的で個人的な持論として、
「エモ」を語るならSaosinThe Usedを聴いてからだろ、と思っています。
サウンドも歌詞表現も、そしてボーカルの表現力も極まってるんですよね……
こんな歌詞とメロディよく思いつくよなっていう。機微があるよね。

おそらくBlue、Yellowとは「君、僕」だと思います。


Title:Blue and Yellow (2002)
Band:The Used (2001-present)
Album:1st Album "The Used" (2002)
Vocal:Bert McCracken
Lyrics:Bert McCracken, Quinn Allman, Jeph Howard & Branden Steineckert


※音源はアコースティックライブ版です。コード感が神じゃないですか?

and it's all in how you mix the two
and it starts just where the light exists

どうやって僕らという二色は混ざり合ったんだろう
それは明かりの灯る場所から始まった

it's a feeling that you cannot miss
and it burns a hole through everyone that feels it

それは君にとって何の喪失感もない
そのことがただ僕らの心を燃えて爛れさせた

well you're never gonna find it
if you're looking for it
won't come your way

君は何も感じない原因を探そうともしないんだ
見つけてしまったら、もう君は元いた場所には戻れない

well you'll never find it
if you're looking for it

探したって君には見つけられやしないんだ

should've done something but I've done it enough
by the way your hands were shaking
rather waste some time with you

何がするべきだったのは確かだった
でも僕は十分やっていたさ
とりあえずで、君は手を握ってくれた
そうしている間に、君といられる時間がただ消えていったんだろう

and you never would have thought in the end
how amazing it feels just to live again

終わりが来たって、君はなにも思いやしないだろう
あの日々をもう一度生きられたなら
どれほどの感情に襲われるだろう

it's a feeling that you cannot miss
it burns a hole through everyone that feels it

終わりが来たって、君には喪失感の欠片もなくて
ただ僕らの心が燃えて爛れただけ

well you're never gonna find it
if you're looking for it
won't come your way

君は失ったものを探そうともしないだろう
見つけてしまったら、もう君が元いた場所には戻れない

well you'll never find it
if you're looking for it

見つけれるもんか、探したって見つかりやしないさ

should've done something but I've done it enough
by the way your hands were shaking
rather waste some time with you

何がするべきだったのは確かだった
でも僕は十分やっていたさ
とりあえずで、君は手を握ってくれて
そうしている間に、君といられる時間がただ消えていく

should've said something but I've said it enough
by the way my words were faded
rather waste some time with you

もっと言うべきだったんだろう
けど、十分言っていたとも思うんだ
どちらにせよ、僕の言葉は掻き消えて
君といられる時間だけが浪費されたんだ

waste some time with you
君といられる時間をいくつも失っていった

should've done something but I've done it enough
by the way your hands were shaking
rather waste my time with you

何がするべきなのは確かだ
でも僕は十分やったよ
とりあえずで、君は手を握ってくれて
そうしている間に、君といられる時間がただ消えていく

waste some time with you
君といられる時間はもう僅かだ

should've done something but I've done it enough
by the way your hands were shaking
rather waste some time with you

何がするべきなのは確かだ
でも僕は十分やったよ
とりあえずで、君は手を握ってくれて
そうしている間に、君といられる時間がただ消えていくんだ

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手を握り合っても二人の色は混ざり合わなくなってしまって、
終わりが来ても喪失感など得られなくなるほどにまで至って、
ただ迫る終焉を前に、無頓着に時間だけが過ぎていく……という歌詞なんでしょう。

いくつか読み解く必要のある箇所が存在します。
itの回数が多くて、しかも最初にそれが何なのか説明されず歌が始まります。

and it's all in how you mix the two
and it starts just where the light exists

どうやって僕らという二色は混ざり合ったんだろう
それは明かりの灯る場所から始まった 

この時点でitが何かは全然明言されてなくていきなりandで歌が始まります。

it's a feeling that you cannot miss
and it burns a hole through everyone that feels it

それは君にとって何の喪失感もない
そのことがただ僕らの心を燃えて爛れさせた

次の歌詞でようやくitが何か、が出てきます。
itとは「喪失を感じることができない君の気持ち」。
つまりここまでの4行は、

and it's all in how you mix the two
and it starts just where the light exists
it's a feeling that you cannot miss

and it burns a hole through everyone that feels it
僕らは分かりあってたはずだった
明かりが確かに灯る場所で、その感情は失われた
君にとって、僕らが終わってしまうことへの恐れがなくなり
その事実が互いの心を焼いてしまったんだ

ということですね(こっちのほうが良い訳かもしれない……)

lightがある場所なのに起きているのは悲しいこと、なので少し読み解くのが難しいんですよね。
普通の日常の中で、明かりが確かに灯る生活の中で、
それ(互いの愛)は徐々に失われ、突然に終わってしまったのでしょう。

あーーーーー良い歌詞だなあ。詩的だ。
2行目とかstart(始まる)、light(明かり)が使われていて一見すごく希望的に見えるのに、その裏に暗躍する主語のitとは「失われた互いの愛情」であって……lose(失う)を一言も使わずに愛と明かりが突然に消えてしまったことを表現してる。凄いなあ。

by the way your hands were shaking
rather waste my time with you
とりあえずで、君は手を握ってくれて
そうしている間に、君といられる時間がただ消えていくんだ

ここも「なあなあで続いていったことで突然に愛情が終わる時間が迫っている」のがわかる歌詞なんだよなあ。
愛は急に終わったけどその兆候は前にも何度もあったっていう。
それを何とかするべきだったけど、僕はできる限りをもう尽くしたよ、っていう。

歌い手は愛したかったんだろうなあと思います。
持てる限りを尽くしたといいながら、もっとできたことがあったとも思っていて、つまりは何か中途半端でつっかえたまま、
相手側が興味を失くした、というところで愛情は終わってしまう。
でも本当に興味を失くしていたのはどちらなのでしょう?
興味を失くしていたけれど、興味を再び持とうとしていたのはお互いだったのでは?

なんだかこんなに後悔のように、だけど終わってしまったかのように歌うのは、両想いから始まって互いに潮が引くように終わっていったからじゃないのかなあ。
あの日々ばかりが思い出されるし、その感情を今も取り戻したいと思ってるけど、もうかつての情熱は戻ってこないし、それは君も僕も分かっているんだ、っていう……

一方的に惚れた腫れたの話じゃなくて互いに思いあって互いに引いて行ったんですよね。なんだか高次元の愛情に思える……のはきっと、喪失感や相手への責も少し描きつつ「憎しみ」がほぼ描かれていないからでしょう。

愛の裏返しは憎しみとはよく言いますが、興味のバロメータとして最低なのは憎しみではなく無関心でしょう。
そこに至るまでに怒りがあった、という歌詞はよく見るんですが、
愛から無関心へと直接飛ぶ歌詞はあんまり見ないように思います。
そこが奇妙で、互いを思うという点で最大の愛から最低の無関心へと叩き落すような落差がエモーショナルな表現になっているんでしょうか。

うーん。うまく理解できない思いを言語化しようと試みたんだけど、どちらかというと行間を勝手に妄想しただけかもしれない。

何にせよ、解釈が様々に分かれる歌詞というのは素敵ですよね。
大勢の人間にとって映るものが違う鏡のような歌なのでしょう。


(このライブ音源、この歌詞の後に嫁さんと娘の話してて微笑ましいね……)