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Nefertiti - SOLITUDE A SLEEPLESS NIGHTS [ENG translated] & Feelings

"Just your sleeping face still dreams the paradise"
「まだ楽園を夢見ている君の寝顔だけ」

This is NOT official!
Japanese lyrics -> English translated by Seiga (just a Japanese fun)

Nefertiti's name, Egyptian Nfr.t-jy.tj, can be translated as "The Beautiful Woman has Come". 

巣食う青痣 渡す花束
プレパラート老ける美しさを笑う

 Bruised skin
 Giving a bouquet
 Präparat is getting decayed, and its beauty is insulted

くじらの産声が聞こえたら次の国さ
今なら届く「同じことを考えていたんだ」

 I'll leave this land when hearing whale's first cry
 Now she isn't out of league
 "That's what I thought too"

映画を泳ぐみたい 汚れた海へ 墜落の滑走路
秒針 脈拍 同じ歩幅

 Like swimming in a movie
 Dive into a dirt see
 The runway is gonna bring down planes
 Second hand and heartbeat have the same pace

指を切り落として針を千本飲んだ
生まれ変われないかもしれない 君のその青色のうえ

 Cut off fingers and swallowed thousand needles
 Mayn't be born again on your blue

冷めていく二つのアールグレイ 遠吠え
「ただ海が見える場所ならどこでもいいの」
  Two Earl Grays are getting colder
  Roaring
  "Wherever I can see a sea, I'll belong to"

醒めていく九月をあの絵の具で覆って
ただ楽園に辿り着いた君の笑顔だけ
 By that paint, Dry September is colored in
 Just your smiling face when gets to the paradise

掬う水嵩 枯らす花束
プレパラート老ける 割れる 音も立てず崩れ落ちた

 Letting water out
 Letting flowers wither
 Präparat is to be decayed, shattered,
 Fell to pieces silently

円らな瞳 一路描いたら思い出した
今なら届く なんて傲慢 勘違いしていたんだ

 To draw round eyes with a single stroke makes me remember
 My arrogant misunderstanding that you're just another person

心で殴るみたい 血の造りが似てて 愛玩具への滑走路
奸計 悪辣 同じ歩幅

 Like hitting with a heart
 The composition of blood is similar
 The runway screws with you
 Schemes and filthy have the same pace

融解温度の一歩手前 刺さった管からだに馴染むまで
覚えていられないかもしれない 君の乾ききった体温(あお)

 Reached almost melting temperature
 Till the needle on a drip fits the skin,
 Mayn't remember your dry temperature(blue)

冷めていく二つのアールグレイ 遠吠え
「ただ海が見える場所ならどこでもいいの」

 Two Earl Grays are getting colder
 Roaring
 "Wherever I can see a sea (even without anything else), ... "

醒めていく九月をあの絵の具で覆って
ただ楽園を見つめている君の背すじ

 By that paint, Dry September is colored in
 Your spine just gazes the paradise

僕の汚れている足さき掠めていく
君が踊るように歩く青色のうえ
慈愛と善意が循環する繋ぎ目のことを思っている

 Your blue has gone past by my filthy toes
 Your blue on which your toes dancing walk
 Thinking about the link of the circulation of loving and just trying to help

冷めていく二つのアールグレイ 遠吠え
顔も名前も姿さえもそこに無くとも

 Two Earl Grays are getting colder
 Roaring
 Wherever even without the face, the name, and the figure isn't there……

醒めていく九月をあの絵の具で…
剰え葬った美しい記憶を称えるなら
“まだ楽園を夢見ている君の寝顔” だけ

 By that paint, Dry September is…… Moreover,
 if I were to choose a buried beautiful memory,
 Just "your sleeping face still dreams the paradise"

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日本語で解説したり、訳の理由など明かします。 [sorry, explained JP only]

 散乱された単語、イメージの羅列が印象的な歌詞です。以前英訳した同バンドの楽曲Ikarosとは異なり、過去曲のように感情の起伏が顕著に表れる場所も少ない。その分、歌い上げるサビには詞にとってとても重要なことを詰め込んでいる。

 「ただ海が見える場所ならどこでもいい」という彼女の言葉。
 ただ楽園を純粋に見つめる君が美しかったという憧憬。
 憧憬する人物を憧憬するという詞。
 憧憬。

 そんなモチーフが歌詞中、MV中、ネットでのリリース情報中に張り巡らされています。あくまで一個人が拗らせながら解釈をした結果の産物ですが、何か楽曲の意図を掴む一助になるのであれば幸いです。

 僕にはこのツイートが楽曲の詞のほぼ全てを表しているように感じます。

〇ボーカルにとっての女性像、あるいは特定の憧れ

 楽曲中ではボーカルの田村義樹と女性が登場し、彼女を見つめるシーンや彼女を額縁に収める演出などがあることから、詞の内容はボーカルが女性に対し抱く感情、瞳に映る女性像、憧憬の対象である女性について、であると推測されます。

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女性を額縁に収める。彼女はどこかを見ている

 ボーカルにとっての憧憬の対象が特定の人物であるのか、あるいは女性全体を示すのかは不明ですが、恐らく二つは楽曲の中で混ざり合って存在している。これは多くのラブソングで見られる、曖昧なイメージを振りまいて多くの人の恋愛感情を呼び起こさせる手法とは少し異なるように感じます。あくまで根幹は自身の憧憬像

 重要なのは、ボーカルが憧憬する対象である女性もまた何かを憧憬しているということです。チェス盤、地球儀、オリーブ、紅茶、『悪の華』、海。彼女は常に何か何処かを見つめて、MV中で二人の視線が交わる機会はほとんどありません。

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 オリーブを見つめる憧憬の対象。憧憬が憧憬する様。青。

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「坂道の上で手を振る君」。MV中で視線が交わる機会の一つ。

 これらがボーカルの視界として描写されるMVとなっています。

〇「青」「海」「体温」「楽園」の意味

 歌詞中ではMVで表現される風景に対し、歌い手が何を考えているのか、何を要求しているのかが描写されています。細部を見ていく前に、歌詞中に時折登場する「青」について説明の必要があります。

指を切り落として針を千本飲んだ
生まれ変われないかもしれない 君のその青色のうえ

 Cut off fingers and swallowed thousand needles
 Mayn't be born again on your blue

 歌い手は「君のその青色のうえ」に生まれ変われないことを悔いている、悲しんでいる、あるいは罪悪感を覚えているように見えます。
 「指を~」より、嘘に対する罰を自ら執行している。嘘とは、この歌詞以前にある"今なら届く「同じことを考えていたんだ」"であると見受けられます。この推測をもとにすれば、歌い手は女性に対し、同じものを見ているということを伝えようとしている。また君の青色とは、君にとって重要なもの、憧憬する対象であり、つまりは君の憧憬の対象になりたいという願いが込められている。きっとこれは、あわよくば女性の憧憬の対象になりたいという気持ちが表れている。

 「憧憬の対象になりたい」はとても人間的でエゴ的な感情です。露悪的な言い方をすれば、相手を意のままに操りたいということであり、もっと一般的な言い方をするならば、自分の思い通りになってほしいという主観的な願い。それは醜い感情と思われることもあれば、人間が人間足るために必要であるという見方もあります。
 それについて否定したり肯定したりする意図はこの歌にはありませんし、個人的には、「憧憬の対象になりたい」はこの歌において二の次三の次、特別重要なことではないと思っています。

 「憧憬の対象になりたい」は、「憧憬する君が美しい」という歌い手最大の感情にとっては合理的な選択でしかない。第一の願いは後者である。歌詞からはそう強く感じます。君の青色のうえに生まれ変わりたいのは嫉妬でしかない。それは人間としてとても重要な感情だけれど、しかし最も望んでいることにとってはさして重要なことじゃない。

〇「美しさ」とは - MV中のモチーフ

 Nefertitiとは「美しい人が訪れた」という意味ですが、楽曲やMVは明確に「美しさ」を定義しているように見えます。それは単に女性だからとかいう理由ではなく、その人の根幹、姿勢を見つめているもの。

 それが顕著に表れるのはMV中に登場する2つのモチーフです。

〇称えられた「辛抱強い愛情」が枯れる

 1つ目のモチーフはサムネイルにもある「青い紫陽花」。花言葉は「辛抱強い愛情」。この花が常にボーカル義樹の眼前に飾られています。

巣食う青痣 渡す花束
プレパラート老ける美しさを笑う

 Bruised skin
 Giving a bouquet
 Präparat is getting decayed, and its beauty is insulted
掬う水嵩 枯らす花束
プレパラート老ける 割れる 音も立てず崩れ落ちた

 Letting water out
 Letting flowers wither
 Präparat is to be decayed, shattered,
 Fell to pieces silently

 この花束は前述の紫陽花、もしくはガーベラ(MV中に挿入される「花で例えるならガーベラ」)であると考えられます。もし仮にガーベラだとして、花言葉は「崇高美」「神秘」がポピュラーです。
 この歌詞が、紫陽花だとすれば、「辛抱強い愛情」を称えた後(渡す)、称えられたそれは失われていきます(枯れる)。ガーベラだとすれば、「神秘」「崇高美」を称えた後、称えられたそれは失われていきます。
 MV中でボーカル義樹の眼前の紫陽花が枯れる描写がなく、彼がいない場面で枯れてしまっていることから、個人的には歌い手が彼女へ「辛抱強い愛情」を称え、そして称えられた「辛抱強い愛情」は何かがあって枯れてしまった、ということを指しているように思います。仮にガーベラを指しているとしても、彼女の崇高性や神秘性という魅力が失われていく様を表現しています。

 「彼女の神秘性という魅力」の要因は「何かを憧憬する姿勢そのもの = 辛抱強い愛情」であり、あわよくばその憧憬に生まれ変わりたかった。でも生まれ変わりたい理由は、自分が彼女の憧憬の対象になれば、「憧憬する彼女を守ることができる」から。自分であれば、他人と違って変えられる、維持できる。しかし他人はままならないもので、意図せず崩れてしまうもの。だから自分が憧憬になることで「憧憬する彼女を守りたかった」。
 しかしそうはならなかった。君の青色には生まれ変われなかった。そうして、称えた彼女の「辛抱強い愛情」は崩壊した、あるいは彼女が自ら壊した。花束は枯れた。九月は乾いた。

 「憧憬する君が美しい」
 それがこの歌が暗に示す最も美しい言葉だと強く感じます。

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髪を切るのは失恋のためというように、気持ちが断ち切れる。
この後彼女は一番の歌詞のタイミングで弄んだチェス盤を机に打ち付け、
手袋までして空気に触れないよう包んだ地球儀のラッピングを剥がす。

〇グスタフ・クリムトという画家の姿勢

 もう1つのモチーフは「憧憬する君が美しい」という意見を強固にします。それはMV中で女性が赤のインクで×を突きつけ、その後ボーカル義樹が〇を何重にも描く、「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅱ」の絵です。

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彼女が否定した思想を、肯定し直す

 以下、その作者について出典です。

グスタフ・クリムト(1862年7月14日-1918年2月6日)はオーストリアを代表する画家、(中略)中心となるモチーフは女性の身体で、率直なエロティシズム表現が特徴である。
「私の自画像はない。私は自分自身にまったく関心がなく、他人のことばかり、とくに女性、そして他の色々な現象ばかり興味があった。私に特別なものはない。私には、これといって見るべきところもない。(後略)」 - グスタフ・クリムトの発言

 この絵画の作者であるグスタフ・クリムトの発言からは、絵画を手段として憧憬する「女性」について探求し表現するひたむきな姿勢が見て取れます。また、「私にはこれといって見るべきところもない(自画像を描かない理由)」の発言からは、彼が自身の風貌を飾るためでも威厳を誇示するためでもなく、ただ無私に、ただ一心に何かを見つめている姿勢が見て取れます。

 この絵画を飾るMV中の女性は、おそらくこの画家の姿勢に興味を持った。画家が自分を度外視してまで憧憬する女性像というものに関心を惹かれた。そしてそれはきっと、歌い手の目に映る彼女の像ととても良く似ていた。無私で、真摯に、「楽園を見つめる君の背すじ」が、彼女にとってのグスタフ・クリムトとよく似ていた。彼女がそこまでして見つめる青色に関心を持った。その青色のうえに生まれ変わりたいと願うくらいに。

 しかし、何らかの原因で女性は「憧憬を抱いていたこと」を憧憬ごと破壊してしまう。とうとう彼女は絵画に×を描き殴る。それはちょうど、「憧憬するという姿勢そのものを否定する」という行為。それはすなわち、「自分を度外視してまで自分に取り込もうとした生き方を否定すること」。歌い手が最も「美しい」と思っていた、憧憬する姿勢そのものを否定した。

〇歌い手が取った行動「醒めていく九月を、乾く九月を」

 歌詞中に登場する「九月」という単語は、同バンドの楽曲Dry Septemberの曲名に由来します。ボーカル義樹曰く、NefertitiはDry Septemberと繋がった楽曲となっており、関連性を感じる歌詞が見受けられます。

坂道のうえで微笑む君
坂道のうえで手を振る君
もういない もうどこにもいない
目が潰れたまま 手探りのまま 同じ夢を見ようとしている 嬉しかった
だって届かないから 解れる茶色い髪 その大きい目で何を見ていた?
痺れて覚束ない右手を振った 今だって だって届かないから

 Dry Septemberとは何なのか、Nefertitiの楽曲を通して理解することができます。

醒めていく九月をあの絵の具で覆って
ただ楽園に辿り着いた君の笑顔だけ
 By that paint, Dry September is colored in
 Just your smiling face when gets to the paradise
醒めていく九月をあの絵の具で…
剰え葬った美しい記憶を称えるなら
“まだ楽園を夢見ている君の寝顔” だけ

 By that paint, Dry September is…… Moreover,
 if I were to choose a buried beautiful memory,
 Just "your sleeping face still dreams the paradise"

 九月が「醒める」ことと「乾く」ことは恐らく同義で、歌い手の憧憬である女性の憧憬が自壊していく様を表していると考えます。

 憧憬が乾き、青が乾き、海が見える場所ならと言い放った海すらも見放し、憧憬を抱いていた自分自身をも否定する姿勢を見た歌い手は、ただその記憶を、過去を称える。

冷めていく二つのアールグレイ 遠吠え
顔も名前も姿さえもそこに無くとも

 Two Earl Grays are getting colder
 Roaring
 Wherever even without the face, the name, and the figure isn't there……
醒めていく九月をあの絵の具で…
剰え葬った美しい記憶を称えるなら
“まだ楽園を夢見ている君の寝顔” だけ

 By that paint, Dry September is…… Moreover,
 if I were to choose a buried beautiful memory,
 Just "your sleeping face still dreams the paradise"

 かつて夢中になったグスタフ・クリムトの姿勢を女性が否定したとしても、歌い手はその上で肯定して見せる。それは美しいものだと称える。「まだ楽園を夢見ている君の寝顔」を称える。醒めていく、乾いていく九月を絵の具で覆う。保存する。

僕の汚れている足さき掠めていく
君が踊るように歩く青色のうえ
慈愛と善意が循環する繋ぎ目のことを思っている

 Your blue has gone past by my filthy toes
 Your blue on which your toes dancing walk
 Thinking about the link of the circulation of loving and just trying to help

 無私で、夢中で、真摯な姿勢が美しかった。たとえその眼に自分が映らなかったとしても、その美しさを心から愛していた。相手を想う慈しみと、自分のエゴを通す善意の違いを考えながら、憧憬を手放そうとする彼女に何かできないかを考えていた。その結果の行為は、ただ、グスタフ・クリムトの絵を、楽園を夢見ている顔を、肯定すること。

〇九月が乾くその前に、届いてほしい

 この歌の物語は「最も美しい、憧憬する君の喪失」であり、
 この歌のメッセージは「憧憬する君の喪失を防ぐ」「水嵩を掬わせない」「九月を乾いた記憶として称えさせない」というところではないか、と考えます。いわばこれは、「二度と失わない」という決意でもある。

 ボーカル義樹は女性という存在に強い羨望を持つことを時折語っていますが、彼が美しいとする女性像はあくまで「女性そのもの、全体」ではなく、むしろ特定の女性の持つ魂のような部分を、スピリチュアルな言い方を辞めれば志のような部分を見ているように感じます。
 僕個人としてはそこに強く惹かれました。彼は狭義の失恋である「彼女の目から自分が外れた」を歌っているのではない。もっと別な、「彼女の最大の美しさが自壊した悲しみ」を歌っている。それかって前者と変わらず、自分の抱く美的価値観を押し付けるエゴかもしれません。
 しかしそれでもなお、憧憬を抱く姿勢そのものはとても美しいと思います。それは男女に関係がない。それは万人に言えること。どんな恐怖も、どんな外圧も振り切ってひたむきかつ真摯に、夢中に何かを見つめる姿は美しい。現実という雨がしとどなく降ろうと、憧憬そのものが崩壊しようと、それを憧憬していた過去を恥じ入ることなく誇る。きっとそういう強さが、辟易してしまいそうな現実には必要だと思います。どんな状況でも何かを見据えるその強さこそが美しい。
 歌い手はとても強い。憧憬する行為を馬鹿馬鹿しいと諦めた対象を、そんなことはあるものかと何度も〇を描く。その屈強な肯定をまざまざと見せつけられました。

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 "TO DIE BY YOUR SIDE(君の傍で死ぬ)"には、
 「君の憧憬になって生涯共に過ごしたい」のほかに
 「君の憧憬を守るために身を賭したい」の意もあると思うのです。


-英訳解説-

指を切り落として針を千本飲んだ
生まれ変われないかもしれない 君のその青色のうえ

Cut off fingers and swallowed thousand needles
Mayn't be born again on your blue

 「指を切り落として針を千本飲んだ」を純粋に英訳するなら "Cross my heart, and hope to die(神に誓って、嘘だったら死んでもいい)"の方が自然ですが歌詞を純粋に訳しました。訳注としては "Cut off fingers and swallowed thousand needles" means "Cross my heart and hope to die". といったところか。
 また、「青色」を統一してyour blueと訳しています。個人的に読み取った「青色 = 君の憧憬 」としてyour longingと悩んだのですが、これも純粋に原文通りの訳にしました。文学的な歌詞なので、英語的にも読解の過程がある方が楽しいと思いますし、何より僕の解釈と異なる解釈も存在するかもしれませんので……

冷めていく二つのアールグレイ 遠吠え
「ただ海が見える場所ならどこでもいいの」

Two Earl Grays are getting colder
Roaring
"Wherever I can see a sea, I'll belong to"

 この「海が見える場所ならどこでもいい」という発言は、歌い手にとって彼女を憧憬しある種の嫉妬を抱くの根源となる発言。最初は「その隣に自分が入れたら」だったのが、「自分がいるかどうかは関係がない」「君にとっての海そのものになれなければ共にいられない」となり、「眺められている海にも、僕を見ない君にも、嫉妬を覚えた」なので、直接的に言うならWherever I can see a see (even without anything else)、あるいは(even without you)になるかも。とはいえ僕は記事中でも述べた通り「羨望の対象に入りたい」よりも「憧憬する君が美しい」の主張が肝だと考えているので、敢えてwithout youを足すような真似はしない。……まあそもそも、言外のことを付け足すのは英訳としてどうなのって感じかもしれないけれど。

心で殴るみたい 血の造りが似てて 愛玩具への滑走路
奸計 悪辣 同じ歩幅

Like hitting with a heart
The composition of blood is similar
The runway screws with you
Schemes and filthy have the same pace

 愛玩具は直訳でadult toyだけど、「愛玩具にしてしまう = 弄ぶ、バカにしておちょくる」という意味でscrew withを用いた。滑走路が君を弄ぶという意訳。だってadult toyで画像検索したら目も当てられない惨状ですもの。

僕の汚れている足さき掠めていく
君が踊るように歩く青色のうえ
慈愛と善意が循環する繋ぎ目のことを思っている

Your blue has gone past by my filthy toes
Your blue on which your toes dancing walk
Thinking about the link of the circulation of loving and trying to help

 「善意」は恐らく肯定的な意味ではない。でなければ慈愛と善意に繋ぎ目は生じない。繋ぎ目が生じるということは、明確に違いがあるということ。
 「慈愛」は相手の欠点まで包み込む慈しみの情を感じるが、「善意」はあくまで主観的な善が発露してしまう現象に思える。
 両者の違いとして「善意は独りよがり」という前提があるのでは?と考えると、善意は直訳でgoodwillだが、英英辞典で調べると「慈善」を表す単語が説明として挙げられたため、慈愛と重複する意味になると考え没にした。そこで「良かれと思って」と訳せるtrying to helpを採用。
 ある種の弱さも含めて肯定・否定を選択できる愛と、弱さを看過できず助け「ようとする」善意は違う。


-extra: *.rom-

巣食う青痣 渡す花束
プレパラート老ける美しさを笑う
sukuu aoaza watasu hanataba
Präparat fukeru utsukushisa wo warau

くじらの産声が聞こえたら次の国さ
今なら届く「同じことを考えていたんだ」
kujira no ubugoe ga kikoe tara tsugi no kuni sa
ima nara todoku onaji koto wo kangaeteita nda

映画を泳ぐみたい 汚れた海へ 墜落の滑走路
秒針 脈拍 同じ歩幅
eiga wo oyogu mitai yogoreta umi he
tsuiraku no kassouro
byoushin myakuhaku onaji hohaba

指を切り落として針を千本飲んだ
生まれ変われないかもしれない 君のその青色のうえ
yubi wo kiriotoshite hari wo senbon nonda
umare kawarenai kamo sirenai kimi no sono aoiro no ue

冷めていく二つのアールグレイ 遠吠え
「ただ海が見える場所ならどこでもいいの」
samete iku futatsu no Earl Gray tooboe
tada umi ga mieru basyo nara doko demo ii no

醒めていく九月をあの絵の具で覆って
ただ楽園に辿り着いた君の笑顔だけ
samete iku kugatsu wo ano enogu de ootte
tada rakuen ni tadori tsuita kimi no egao dake


掬う水嵩 枯らす花束
プレパラート老ける 割れる 音も立てず崩れ落ちた
sukuu mizukasa karasu hanataba
Präparat fukeru wareru oto mo tatezu kuzure ochita

円らな瞳 一路描いたら思い出した
今なら届く なんて傲慢 勘違いしていたんだ
tsubura na hitomi ichiro egai tara omoi dashita
ima nara todoku nante gouman kanchigai shite itanda

心で殴るみたい 血の造りが似てて 愛玩具への滑走路
奸計 悪辣 同じ歩幅
kokoro de naguru mitai chi no tsukuri ga nitete aigangu eno kassouro
kankei akuratsu onaji hohaba

融解温度の一歩手前 刺さった管からだに馴染むまで
覚えていられないかもしれない 君の乾ききった体温
yuukai ondo no ippo temae sasautta kuda karada ni najimu made
oboete irare nai kamo shirenai kimino kawaki kitta ao

冷めていく二つのアールグレイ 遠吠え
「ただ海が見える場所ならどこでもいいの」
samete iku futatsu no Earl Gray tooboe
tada umi ga mieru basyo nara doko demo ii no

醒めていく九月をあの絵の具で覆って
ただ楽園を見つめている君の背すじ
samete iku kugatsu wo ano enogu de ootte
tada rakuen wo mitsumete iru kimi no sesuji

僕の汚れている足さき掠めていく
君が踊るように歩く青色のうえ
慈愛と善意が循環する繋ぎ目のことを思っている
boku no yogorete iru ashisaki kasumete iku
kimi ga odoru youni aruku aoiro no ue
jiai to zeni ga junkan suru tsunagime no koto wo omotte iru

冷めていく二つのアールグレイ 遠吠え
顔も名前も姿さえもそこに無くとも
samete iku futatsu no Earl Gray tooboe
kao mo namae mo sugata sae mo soko ni naku tomo

醒めていく九月をあの絵の具で…
剰え葬った美しい記憶を称えるなら
“まだ楽園を夢見ている君の寝顔” だけ
samete iku kugatsu wo ano enogu de
amatsu sae houmutta utsukushii kioku wo tataeru nara
mada rakuen wo yumemite iru kimi no negao dake


-extra2* 音源こちら-

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