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their world - Draw the Emotional【和訳】

この悪夢からは決して逃げられないから
私だけを信じて

ゆよゆっぺ氏主催の音楽サークルDraw the Emotionalの東方アレンジアルバム“ Funny party in the Fog ”から1曲、their worldです。

叙情系やエモの流れを汲むギターリフが特徴的ですが、
全体的に輪郭がぼやけており、ディレイ気味なシンセのサウンドもかなり前に出ています。
要するにバンドサウンド中心なのにとても綺麗な曲です。泡みたいなシンセの音が光る。そしてアウトロのギターはゆよゆっぺ氏特有の16分オクターブでめちゃくちゃエモい。

歌詞に移りますが、
their worldとは守りたい世界ではなく、憎んでいる対象のようです。

※MVが公式から出ていないためリンクを割愛させていただきます。


Every moment
Passing us by
Like someone else
It’s so cold

全ての時間が
他人事のようにすり抜けていく
酷く冷たくて

I can tell you
This world harm to you
So just trust me
Only me

分かっているでしょう?
世界があなたを蝕んでいるの
だから私だけを信じて
私だけを

Like a fairytale
We are the plot of the story
It’s just dreaming

よく出来た話ね
私たちの生きる時間は、長い物語の一幕でしかなくて
夢の中にいるみたいに現実味がなくて

Like a game
We are never in the real world
Being played by others

これは誰かの物語なの
三人称視点で操作される私たちは
生きている存在じゃないの

Someone smiles down at us
In an evil way
They won’t let us leave from here
Won’t let us…

誰かが私たちに微笑む
とても人のものとは思えない笑みで
決して私たちを離してくれない
独り占めしようとする

We are just running in circles
In a world with no truth
“守れない、”
The wicked smiles

私たちは円の中を走り続けているだけ
真実のひとつもない世界で
「守れない」
蔑む笑いが聴こえる

Envy, resentments, and grudges are everywhere
This world wastes you away
How can I save you?

嫉妬、恨み、怨念
そんなものばかり溢れる世界が
あなたを爪弾きにする
どうすればあなたは救われるの?

Like the picture
Everything seems shallow
In short moments

写真みたいに時間が切り取られて
全てが平面的に見えてしまう

Like a song
Our emotions are being written
But we know what’s real

歌の詞のように
私たちの感情が書き綴られる
だけど何一つ現実味がないの

Someone smiles down at us
In an evil way
They won’t let us leave from here
Will not let us…

誰かが私たちに微笑む
とても人のものとは思えない笑みで
決して私たちを離してはくれない
独り占めしようとする

Every day I wonder
If I could escape with you
To get a life for happy end

考えてしまうの
もしあなたに固執するのをやめて、
幸せな終わりを手にすることができるなら......

We’ll never wake up from this nightmare
You just trust me
I will save you

この悪夢からは決して逃げられないから
私だけを信じて
あなたを救ってみせる

I am just living for you
In a world with no truth
“守りたい。”
That’s all I say

嘘に塗れたこの世界で
あなただけのために生きるの
「守りたい」
私が言えるのはたったそれだけ

Tell me all of your truths
And let me keep them safe

あなただけの秘密を教えて
それを守り抜いて見せるから

We only have each other
Never let them hurt you… never

私たちは決して1人じゃない
あなたを傷つけさせはしないわ

I’m going to save you
I’m going to save you

守ってみせる
守り抜いて見せる

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訳す前はてっきり原作キャラクターの特徴を活かした歌詞になっているかと思ったんですが、
これは誰かを対象とした歌と言うよりも、物語を俯瞰する何者かを憎んでいる、というメタ視点の歌になっています。


自分という存在が自分の意志で動いているという保証はどこにもありません。
自分の意志で動いているように思えても、それは誰かが上手くそうなるよう仕掛けた意図かもしれませんし、
何ならこの歌のように、画面の向こう側の誰かが僕らがを操作している、創作している可能性は否定できません。

陰謀論じみてますし、哲学じみてますし、現時点で答えの出せない問いです。

以前にも書きましたが、人は複数の他者に影響されてはじめて確固たる自身を確立できる、
すなわち相対によって、比較によってはじめて「私は私だ」と言える生き物です。
確固たる自身は絶対では存在しえない。地球上に誰一人いなくなったら、自分が何者かは定義できなくなる。

そう思えば、「ぜんぶ自己責任だ」という論にも無責任さがある程度あって、そう言うあなたのせいで影響されてる面があるんじゃないか、影響によって成り立つ人格だけを批難するんじゃなくて、その影響の大元が大事なんじゃないのか......
......なんて考えると意味わからなくなってきますね。
本当のところ、僕らは一体どこまで自分の意思で動いていて、実のところ、どこまでの行動が罪に問われるのでしょう。

死ぬ気で叶えたい願いも、どうしても伝えたい想いも、
それは自分で育てた意志なんていう大それたものじゃなく、たまたま誰かの影響で培われた偶然なのかもしれません。
本当のところ、叶えたいことなんて、守りたいものなんて、全て偶然で作り上げられた意味の無いものかもしれません。
或いは誰かに作り上げられた中身のない伽藍堂かもしれない。


たとえ誰かに作られたものでもこの思いは本物だ、って叫んでいたいですね。
周りの何かに左右されて1番守りたいものをすり替えてしまう人間にはなりたくないものです。
これはそういう歌じゃないでしょうか。