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亡き貴方のために揺り籠を - Squall Of Scream [ENG translated]

 "Liken the moon on the surface of water to a cradle"
"And use this as sending your spirit back there"
水面の月を 揺り籠にして
君を彼方へ 彼方へと送ろう


This is NOT official!
Japanese lyrics -> English translated by Seiga (just a Japanese fun)

*This is a teaser video (The song starts at 1:34)

光りを遠ざけ 夜闇に隠れる
月明かり照らす紅
二人を映して

 To hide under the dark night from lights 
 The blood moonlights,
 Show two of us on the surface of water

刹那に散りゆく 運命と知っても
幼き私に 優しく偽る

 Even if we're helpless in the face of the destiny
 I tell my younger self a little white lie

この身を置きざる 時を呪って閉ざす
君が今
震えた声で 祈るようにささめく
最後の言葉を

 You holding a grudge against the time leaves yourself behind
 Whisper like praying in shaky voice at the moment
 The last word is …

微笑みながら 交わす誓いが
切なく告げる 終わりの調べを
月夜の明けを 灯にして
君を彼方へ 彼方へと送ろう

 The promise we made with smiling together
 Make a sorrowful tune that tells the end
 Liken the dawn is breaking to a fire
 And use this as sending your spirit back there

泣き方を忘れ 笑い方を忘れた
君が今
かすれた声で 祈るように囁く
最後の言葉を

 You who can't remember how to cry and smile
 Whisper like praying in losing voice at the moment
 The last word is …

forget me
 もう忘れて

微笑みながら 流す涙が
儚く告げる 永遠の離別(わかれ)を
水面の月を 揺り籠にして
君を彼方へ 彼方へと送ろう

 The tears running down your cheek with smiling
 Tell me you'll never to return
 Liken the moon on the surface of water to a cradle
 And use this as sending your spirit back there

――――――――――――――――――――――――――――――――――


 以下、日本語での所感。

〇「揺り籠」の意 希望にも絶望にも転じる言葉

 曲名・歌詞に含まれる言葉「揺り籠」ですが、同サークルの楽曲中で多数使われた言葉でもあります。個人的な見解ですが、この言葉には複数の意味があり、それらを統合してまとめるならば、最も近い言葉として「箱舟」があると考えます。

 「揺り籠から墓場まで」とはよく言いますが、これは、生まれてから死ぬまで、物事が始まってから終わるまでを指す言葉です。「揺り籠」は「母体から産み落とされた始まりの因子がすくすくと育つ初めの場所」の比喩として一般的に使用されます。

 SFのような話でもよく「箱舟」はモチーフで使用され、滅びた世界で人類から続く種が、ここではないどこかで自分達の生を継承してくれることを願い打ち上げる。というのをよく見かけます。SFでは「箱舟」技術力の結晶でもあり、同時にとても「祈り」に近いものでもある。自分がもう存在しない遠い時間を経た後、誰かが、この道の先を見せてくれることを願う行為。それが「箱舟」の意であり、「揺り籠」の意であると思うのです。また、箱舟を打ち上げる行為は希望に満ちたものですが、打ち上げる背景としては、現状への絶望が多分に含まれており、箱舟は、滅んだ理想と、それが続く希望の二つが込められている、と考えることができます。

 この楽曲としては、曲名が、「亡き貴方」なので、「貴方」はもう蘇らないという絶望を孕みながら、「揺り籠を」ということで、この想いが何かの形になることを祈る希望を胸に、(歌詞の中で)「彼方へと送る」、つまり、現状を絶望し、「揺り籠」という想いの箱舟を放つ意で、別れを告げている。


〇「輝く夜の君へ捧ぐ」の揺り籠

もう終わってしまってもいいよ
君のいない世界ならば
一人だけの永遠など
虚しいだけだろうから
もう二度と触れることさえ
叶わないというのならば
輝く夜の君へ捧ぐ
想いの揺り籠を

 - 1st Album "I'll be right here." より "輝く夜の君に捧ぐ"

 この曲と同様に揺り籠が歌詞中に使われる「輝く夜の君に捧ぐ」ですが、
「亡き貴方のために揺り籠を」と歌詞を対比させると、諸々気付くことがあります。

  以下、左側が「輝く夜」、右側が「亡き貴方」。

許されない運命 ⇔ 刹那に散りゆく運命
雫落とし微笑む君 ⇔ 微笑みながら交わす誓いが
かすれる声 震える指 ⇔ かすれた声で祈るように囁く

 ふたつの歌詞は状況がとてもよく似ています。二度と再会できない運命の中で藻掻く歌い手が描写されており、最後に「揺り籠」を放つところまでも一致しています。

もう二度と触れることさえ叶わないというのならば
 輝く夜の君へ捧ぐ 想いの揺り籠を

 ⇔ 水面の月を揺り籠にして 君を彼方へ 彼方へと送ろう
 瞼に佇んだ君が
 微笑(わら)ってくれますように
 ⇔ 泣き方を忘れ 笑い方を忘れた
   君が今
   かすれた声で 祈るように囁く
   最後の言葉を

 ただ、ふたつの曲の歌詞は決定的に異なる点があり、それは「自分自身で未来を諦めている(なるべく自分の中でしっかり見切りをつけている)」か、「相手の言葉によって半ば強制的に隔絶されている(自分の中の答えなのか、相手の望みなのか切り分けできていない状態で箱舟を放つ)」ことではないか、と思います。一言に集約するならば、「自分で決めたか、相手に決められたか」。

もう終わってしまってもいいよ
君のいない世界ならば
一人だけの永遠など
虚しいだけだろうから
もう二度と触れることさえ
叶わないというのならば
輝く夜(よ)の君へ捧ぐ
想いの揺り籠を

泣き方を忘れ 笑い方を忘れた
君が今
かすれた声で 祈るように囁く
最後の言葉を
forget me

 「亡き貴方」の曲の中で支配的なのは、最後のサビの前に入る言葉"forget me"だし、曲展開の印象としても、相手からの拒絶が飛び出る"forget me"の印象がとても強いのです。恐らく歌い手は、二度と再会できない運命に対し答えを見つけることがないまま、相手の"forget me"の一言を尊重して揺り籠を送っている。
 一方の「輝く夜」では自分自身で「もう終わってしまってもいい」と見切りを付けており、これは自発的でネガティブな諦めというよりか、もう変わらないならばせめて変わる部分だけは、という想いさえも感じさせるような歌詞(もう二度と触れることさえ~、や、たとえ忘れてしまっても瞼に佇む君が~、など)が続きます。

 自分の中で整理を付けて希望の灯として揺り籠を送るか、
 相手の言葉を尊重して絶望の穴埋めのように揺り籠を送るか、
 それがこの二曲の決定的な分水嶺であり、歌い手の心情の「納得の度合い」が、曲の雰囲気にとても表れていると思うのです。


 補足的ですが、「亡き貴方」と同じく絶望の側面を大きく照らした曲として、「少女は一人、その風景とともに」も似ている部分があります。

 「奇跡なんて起きてくれなかった」「揺蕩う私だけ置き去り」と、期待を裏切られたように歌うこの曲でも、せめてもの希望、置き去りの過去を踏み越えた希望として「揺り籠」が用いられます。

消えかけた信仰と
人々の忘却と
在りし日の記憶を
揺りかごに

変わる心と
消える景色と
消えゆく私を
揺りかごに
 - 1st Album "I'll be right here." より "少女は一人、その風景とともに"

 このように、Squall Of Screamの中で、「揺り籠」は多く用いられるモチーフです。まるでループものの世界観で次のループに悲劇の解決を託すような、道半ば倒れた夢追い人がまだ足の動く仲間に願いを託すような、滅びた世界で次の人類が遠い地で育つことを夢見るような…そんな意味合いを持つ箱舟を揺り籠と例え、「二度と逢えない二人がもう一度出逢える日を(ありもしないかもしれなくとも)心待ちにしている」ことを示しているように感じます。

微笑みながら 流す涙が
儚く告げる 永遠の離別(わかれ)を
水面の月を 揺り籠にして
君を彼方へ 彼方へと送ろう

 - 3rd Album "Everlasting Hope" より "亡き貴方のために揺り籠を"

 「水面の月」とは、実体のない幻のようなもの、という意味を持ちます。「輝く夜」では「(恐らく歌い手自身の)想い」を揺り籠として未来へ放ちますが、「亡き貴方」では実体のない、(恐らく歌い手自身のものになっていない、相手の言葉が主体の)想いを揺り籠として未来へ放ちます。

 相手の言葉を尊重し未来を選択する姿勢は正解の形の一つとしてありますが、自分の気持ちに見切りを付けられないまま、納得ができないまま、相手の言葉を頼りに答えを出すのは、ある種の依存でもあるのかもしれません。ただ、二人を分つ絶望の運命への猶予がほとんどない状態で、例えば僕自身が同じような体験をしたとして、ちゃんと見切りをつけて未来を選択できるかというと、ちゃんと自信をもって、そうだ、と答えることはできません。多くの場合別れは突然に訪れるものであり、想定もしていない時があり、だからこそ、「亡き貴方」のような納得のできない別れが多数あると思うのです。
 「輝く夜」は見切りをつけた意思の強い別れとして、美しい。「亡き貴方」は見切りをつけた相手と、相手によって見切りをつけざるを得ない自分との意思の対比が美しい。まるで自分だけが、強い運命と強い相手の意志に置き去りにされたような、肉体的にも精神的にも独りぼっちであるかのような、「実態としての別れ」に誠実な曲が「亡き貴方」なのかもしれない、と思います。


-extra *.rom-

光りを遠ざけ 夜闇に隠れる
月明かり照らす紅
二人を映して
 hikari o toozake yoyami ni kakureru
 tsukiakari terasu aka
 futari o utsushite

刹那に散りゆく 運命と知っても
幼き私に 優しく偽る
 setsuna ni chiriyuku sadame to sittemo
 osanaki watashi ni yasashiku itsuwaru

この身を置きざる 時を呪って閉ざす
君が今
震えた声で 祈るようにささめく
最後の言葉を
 kono mi o okizaru toki wo norotte tozasu
 kimi ga ima
 furueta koe de inoru youni sasameku
 saigo no kotoba o

微笑みながら 交わす誓いが
切なく告げる 終わりの調べを
月夜の明けを 灯にして
君を彼方へ 彼方へと送ろう
 hohoemi nagara kawasu chikai ga
 setsunaku tsugeru owari no shirabe o
 tsukiyo no ake o tomoshibi ni shite
 kimi o kanata e kanata eto okurou

泣き方を忘れ 笑い方を忘れた
君が今
かすれた声で 祈るように囁く
最後の言葉を
 naki kata o wasure warai kata wasureta
 kimi ga ima
 kasureta koe de inoru youni sasayaku
 saigo no kotoba o

forget me

微笑みながら 流す涙が
儚く告げる 永遠の離別を
水面の月を 揺り籠にして
君を彼方へ 彼方へと送ろう
 hohoemi nagara nagasu namida ga
 hakanaku tsugeru towa no wakare o
 minamo no tsuki o yurikago ni shite
 kimi o kanata e kanata eto okurou