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グローバルティーチャー賞について(3)

 さて、毎年Top50に選ばれると、Global Teacher Prizeのウェブで紹介されます。

 今回は、2018年を中心に、私が実際に出会った先生を何名か紹介したいと思います。(チョイスは完全に私の独断と偏見です。)

◆通勤に1週間!Sir of Himalaya(ネパール)

 まずは、ネパールのBinod Shahi先生。2018年のTop50です。

 彼の場合、自分の勤務する学校に到着するのに1週間以上かかります。

 まずセスナで西ネパールへ向かい、そこから8日間のトレッキングで山を越え川を渡り、ドルパ族という少数民族が暮らす地域へ向かいます。彼は、そこで教鞭をとっています。

 電気も電話もなく、「学校」「カリキュラム」といった概念のなかったドルパ族の地域では、最初はなかなか受け入れてもらえなかったそうですが、現地の言葉を覚え、ともに暮らすうち、徐々に受け入れられていったとか。

 彼に、「なんかできることある?」と聞くと、「あんまり外国の支援は受けたくない」と言われてしまいました。

「ネパールは、外国に頼りすぎている。でも、そうじゃなくて、僕らは僕らで国を作って行かないといけないんだ」

 現地の人は彼のことを"Sir of Himalaya"と呼ぶそうです。

◆遠隔授業で難民キャンプに教育を(ベルギー)

次は、ベルギーのKoen Timmers先生です。

 訳あって、KoenとはGTP以前から知り合いでした。私に「応募してみたら?」って言ってくれたのも、彼です。2017年にTop50、2018年にTop10に選ばれています。

 彼の何がすごいって、ブランディングと行動力がすごい。ベルギーのいち教師でありながら、現地の人道支援団体と協力して、ケニアのKakuma難民キャンプにスカイプで世界中の先生に授業をしてもらうProject Kakumaを立ち上げています。

 そしてTop10に選ばれた後は、UNESCOと協力し、ケニアのみならず、同様の学校を世界各地に作る"Innovation Lab School”というプロジェクトを開始します。

 2020年初頭、Kakuma難民キャンプには、遠隔授業ができる校舎と、動画でまなべる校舎が完成しました。今後は、パレスチナやタンザニアにも作る予定をしているそうです。

 そしてKoenと同じ2018年に同じくTop10に選ばれたのが、オーストラリアのEddie Woo先生。

◆公立高校の数学教師兼YouTuber(オーストラリア)

 Eddieは2012年にYouTubeに授業動画をアップロードし始め、彼のYouTubeチャンネルは、今では登録者数は100万人を超えています。

 最初は、病気になって学校に来られなくなった教え子が、病院でも授業を受けられるようにと始めたそうです。そのうち、オーストラリアのみならず、英語圏を中心に彼の動画はどんどん広まり・・・2018年には、Australia's Local Heroという賞も受賞していました。

 個人的に私が好きなのが、TED×Sydneyでの彼のプレゼンテーション。Eddieが先生やったら、私の数学嫌いも、もうちょっとマシやったかな・・・

◆”Connection(つながり)”が教育の基本(カナダ)

 お次は、カナダのSean Robinson先生。2019年のTop50ですが、彼のConnection-based Learningという考え方は、それまでのファイナリスト(私を含め、Koenや2018年Top10のBarbara先生など)にも大きな影響を与えています。

 教員と生徒、生徒と保護者、保護者と教員から、国を越えたものまで、いろんな"connection(つながり)"が人を育てるという考え方。なんか、当たり前みたいなことなんですけど、普段校務で忙殺されていて忘れている感じがする話でもあります。

 2019年のGESFで会った時、ちゃっかりサインもらっちゃいました。

◆性教育をカリキュラムに(コロンビア)

 2018年Top10、コロンビアのルイス・ミゲル先生。私はこの人が受賞するんじゃないかと予想していました。

 貧困、ドラッグ、家庭内暴力、妊娠など、様々な課題を抱えた地域で奮闘している先生です。12才の教え子が妊娠してしまったことから、ルイスは真剣に性教育を取り入れ始めます。また、LGBTの子どもたちへのいじめを懸念し、多様性について考える機会も提供してきました。

 2013年には60件だった女子生徒の妊娠も、導入後の2017年には1件まで減少したとのことでした。

 実際会ってみたら、めっちゃくちゃ陽気な、いかにもラティーノ!な先生でした。動画にある真剣な表情とのギャップがすごい(笑)会うたびにスペイン語を教えてくれました。

◆社会貢献プロジェクト”Galaxy Bazzar”(インド)

 最後に、私の大好きなインドのBijal Damani先生。2015年のTop50です。まずはこちらの動画をどうぞ。

  彼女自身、MBAを取得後、マーケティングマネージャーを経て、教師になった経歴を持っています。

 Bijalはいつも笑顔。子供たちが、学んだことを地域の役に立てる機会をカリキュラムの中に埋め込み、"Galaxy Bazaar"という社会貢献プロジェクトを始めました。のぼった収益は120,000USドル(約12,481,440円)。インドの物価を考えると、相当な額です。

 バザールで得た利益は、恵まれない子供たちに教育機会を提供するために使っているそうです。動画の最後の方に映っている、Bijalが笑っている顔が、私が大好きです。

 他にもいっぱい、いーーーっぱいいますが、書き出すとキリがないので止めておきます。(2016年の先生達のことは、工学院大学附属中高の高橋一也先生が著書で紹介しておられます)

 私はアトウェル以外の優勝者全員と会ったことがありますが(2020年優勝者のランジット・ディサレにも、実は実際に会ったことがあります)どの先生も、凄まじくぶっとんでいてすごい先生達です。でも、普通の人達でもあります(笑)

 彼らと出会って、もっともっと色んなことを勉強していかないといけないと思わされました。それは今も変わっていません。

 次回は、よくある質問集(英語できないと応募できないの?など)について、自分なりの見解を書きたいと思います。


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