見出し画像

いい夢をみる(2) オレンジのダンゴムシ

庭に放置していたブロックを持ち上げた。ブロックの下には、すごい数のダンゴムシがいた。びっくり仰天して逃げていく。「えー!?」という声が聞こえる。いきなりで申し訳ないことをした。ブロックは宙に浮いているし、ダンゴムシも宙に浮いている。僕は土に足を突っ込んで、木の根っこになった。空を飛ぶ千匹のダンゴムシを見上げる。ミミズやハサミムシも浮かんでる。彼らも飛ぶことを知っているから、驚いただけで別に困った事にはならない。ただ、「ごめんね」と思っていると、「別にいいよ」と帰ってくる。ブロックは片付けてしまったけれど、ダンゴムシ達は次の家に飛んで行った。僕はしばらく根っこになって地面の養分を分けてもらい、そのまま昼寝した。

夢の中ではブロックが嫌に重たくて、一瞬なぜかと思ったけど、疲れるから気にするのをやめた。西日が気持ち良くて目が覚めた。空はすっかりオレンジ色。オレンジのダンゴムシが一匹だけやってきた。小さなダンゴムシと僕の大きさは全然違うけど、手を取り合あって踊る。輪になっているような感じで、空に浮く。そのままどこまでも登っていって、地球を見下ろすくらいになった。全然息苦しくも怖くもない。太陽はスッパリと半分に割れていて、西日でもあり、昼間でもあった。少し眩しいから帰ろうと言うと、ダンゴムシも頷いてくれた。太陽を二人で元どおりの一つに戻す。接着剤にはごはん粒を使った。いい匂いだったから、太陽も喜んでくれたし、オレンジのダンゴムシは、夏休みの少年のように歯が欠けていて、満面の笑顔だった。夕方の涼しい風に乗って、地球に向かって降りる。エレベーターと同じくらいゆっくり降りていったけど、だんだん飽きてきたから滑り台みたいにして降りた。途中でダンゴムシが遅くなってしまったので、やっぱりそのまま飛び降りた。地面がどんどん近づいてきて面白い。服はバタバタ言ってる。目が乾くのがちょっと嫌だと思って、乾かないようにした。ダンゴムシが全然違う方向に飛ばされても、また僕の近くにいた。だから、近くにいるように思ったら、飛ばされなくなった。そのまま二人で降りていく。地面に潜ってしまったり、ぶつかってしまったりはしない。そろそろ地面に降りたいなと思ったら、最後の階段を降りるところみたくトントンと、地面に降り立った。その間に何があったのかは知らない。地面は土の匂いがしていて、夏だった。お別れに、ダンゴムシの大好きなごはん粒をあげた。オレンジ色の友達は糸みたいな小さな手を大きく振って、仲間達のもとへ帰っていく。僕は少し海を散歩してから帰ろうと思った。

結局海には一瞬寄っただけだった。暗いから怖かった。いろんなおばけがいた。彼らは悪いおばけじゃないけど、ダンゴムシがびっくりしたのと同じ感じで、僕は驚いた。次からはもう少し大丈夫だと思ってから行こうと思う。海は少し寂しそうにしてくれたけど、足元の草は気持ちよさそうに送り出してくれた。足についた草の汁が嬉しい。海を後にして、砂浜だけのところを歩く。海はあるけど、ちょっと遠い。向こうのほう、かすかに見えるくらいのところ。ここは大きな砂浜で、まだ暖かかった。おばけはいないけど、カニがいた。カニは砂の穴から出てきて、片手をあげる。「よっ!」という感じ。僕も片手をあげて挨拶を返す。カニはそれが嬉しかったらしくて、左右に踊ってみせる。僕も同じく左右に踊る。僕たちの踊りにつられて海の方からお化けがやってきた。いつの間にかぐるっとおばけに囲まれていて、それが全然怖くない。みんなで一緒に踊る。海もだんだん近づいてきて、僕たちを囲むようにして過ごしている。今日は満月で、月も楽しそうに踊っている。月からウサギも降りてきてた。ウサギはつきたてのお餅を配る。みんな二つずつ、赤と白か、白と黄色の餅をもらった。すごくおいしくて、ほっぺが落ちたけど、すぐに餅でくっつけた。おばけ達も満足したようで、半分が成仏していた。もう半分のおばけ達とは、来年も踊ろうと約束して、僕はウサギと一緒に月に登っていった。カニは砂浜がすきだから来なかったけど、来年は準備して待っていると言ってくれた。こうして僕は、毎日明日から餅をつく修行に明け暮れることとなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?