引きこもりの人は、家族を守っていると思う

引きこもりの友達が何人かいる。
時々、そのご家族の方にも話すのだけど、納得をいただくこともあるので書いてみようと思う。
彼らが家族や社会から邪険に扱われないために。つまり彼らの名誉のために。
気に入らない人もいると思うけど、一つの捉え方として。

これを説明するために、幾つかの話をします。

見えないもの

幽霊、魂、神様、言い方はなんでも良い。
とにかく目に見えないものは存在しないと言う人がいる。
では、その人が亡くなったとき、遺体はゴミと一緒に焼かれてもいいのだろうか?
当然普通はそうしない。
目に見えないものがないならそれで構わないはずなのに、無神論国家を目指した旧ソ連でさえお葬式はしていた。
親戚や家族がそうするからという理由以上に、お葬式は大切な場だと思う。
生きる事を考えるために死を思ってみると、空気のように当たり前に感じている見えない何かが少しだけ見えてくる。

今の日本は社会の建前上、宗教的なものを分離されているに過ぎない。
そういう存在を、今の常識よりも少しだけあるものとして考えてみたらどうでしょう?
というのが第一のお話。


妊婦さん

妊婦さんはお葬式に行かない方が良い。
もしも行くなら、お腹に鏡を入れた方が良い。
昔はそういう風習が方々にあったし、今でも残っているらしい。

お葬式は故人をあの世へ送る場であり、異界の扉が開かれる場。
悪いものもやってくることもあり、それらは弱者を狙う。
お腹の中の赤ちゃんは一番弱い存在だから狙われてしまう。
だから、妊婦さんはお葬式に行かないか、悪いものを鏡で反射させる。

もう一つの例として、背守りという文化もあった。
着物の時代、着物の材料である反物(布の巻物)は幅が決まっていた。
大人の着物は背中に縫い目がくるけど、子供は体が小さいから縫い目がない。
わざと縫い目を入れてみたり、親が首筋のあたりに目や星などの紋様を刺繍した。
悪いものは弱い人の首筋を狙っているという。
そういえば、仏画でもキリスト教の絵でも神聖さを表す輪は、首の後ろあたりを中心にして描かれていたりする。
(それをもやもや状に捉えたら羽衣になるのかな。とも思ったりする。羽衣と光の両方を絵にするとやり過ぎな感じがするし、入れ替えみてもいい具合に見えるんじゃないかと想像する。)


物忌(ものいみ)

平安時代、陰陽師が活躍していたころ。
星の巡りなどの暦を読んで行われる、物忌という文化があった。
あなたはこの期間引きこもって、誰とも会ってはいけない。というもの。
部屋から出てはいけない場合もあれば、家の中は大丈夫という場合もあるし、
ある程度人と会っても良かったり、行ってはいけない方角があったりなど、さまざまな方法や度合いがある。
とにかくそうやって悪い事を避けるという知恵があった。


芸能と儀礼

地元・銚子出身の能楽師の安田登さんの著書に、「すごい論語」という古代中国の思想家・孔子の論語を読み直してみよう、という内容の本がある。
お能は幽霊の話を扱うので、それに倣って実は孔子も幽霊や見えないものを扱っていたのでは。
孔子は、「楽」と「礼」を特に大切にしていた。
楽は、単にパフォーマンスではなく、神の力のようにものすごくパワーのある芸能。
礼は、人に対する礼ではなく、見えない世界への儀礼。
という内容で驚いた。

それを読んで、儀礼は異界の扉を開閉し、芸能は家事や仕事などさまざまなことにもその要素は含まれるものではないかと考えてみた。
芸術家、小説家、音楽家が鬱になって自殺してしまうのは、儀礼の扉の開閉の問題ではないかと思う。
開けたら閉めるはずが、開けることに夢中で閉め忘れているのではないだろうか。
家庭や社会の環境的に開けざるを得ない場合もあると思う。
自分の鬱と重ねてみて、そういう風に見えてきた。


引きこもりの話

ここまで書いてみて、やっと引きこもりの話ができる。
霊感があるとかないとか言うように、体質のようなものがある。
耐性があるかどうかは人によって違う。

家族の誰かが異界の扉を開けっぱなしにしてしまい、家に悪いものがやってくる。
一番弱い人が一人で抱えて閉じこもることで、家族にもっと悪いことが起こらないように守っている。
家の中の魔物が怒り狂わないように、ひたすらに静かにする仕事をしているとでも言えばいいのだろうか。
それは子供の責任でも、親の責任でもない。
家族の伝統や共同体から見えないものに対する知恵が失われてしまったことが問題ではないかと思う。
誰かの責任を追及するよりも、今の常識では捉えにくいことだから、これから取り組んでみよう。という姿勢が良いのではないかと思う。

例えば、神社でのお祓いやお寺でのご祈祷などもいいと思う。
とにかく彼らが元気に過ごせるようになると、長い目で見たときに家族全体が良い状態になると思っています。

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