多重「人格」のこと(6.1)
先日初登場した人格、「希死念慮さん」。言葉をほとんど発しないが、その存在感たるや、私本体よりも大きい。
思えば、「希死念慮さん」と出逢う前から、その存在には気付いていた。というより、その圧倒的存在感は、気付かない事の方が難しい。
「希死念慮さん」に背を向けながら、気丈で軽薄な人物を演じていた時ですら、半身で、その存在を感じていた。
「希死念慮さん」は、冷たい海のようだ。曇った日の日本海のように暗く、湖のように静かだ。深い悲しみの涙で出来ているような様相で、こちらをじっと