顔を覆いながら観た悍ましい映画「ミッドサマー」(ネタバレ有り)

ネットで話題になってたので軽い気持ちで「ミッドサマー」を観てしまった。
あのような胸糞悪くなる悍ましいと思った経験は初めてだったのだが、せっかく観たし感想を書いておこうと思う。
私の好みとかけ離れた作品だというのに、感想を書いている時点で魅力は満載なのだと思う。

ただ、人には勧めない。
セラピーだ救われたなどの感想を目にして、軽い気持ちで観に行くことはやめたほうがいい。
私は「考察するのが好きな人は好きかも」という感想に釣られてしまったが、過去に戻ってチケット購入を止めてやりたい。記憶を消したい。

とても批判的に見えるが、「私の好みではなかった」というだけで、作品自体は素晴らしかった。オススメはしない。






〜〜ここからネタバレがあります〜〜


この作品の魅力というのは、様々な角度で見ると作品の見え方が変わってくるところだと思う。

オカルト的なホラーがあるが、主人公のダニーからしたらセラピーでハッピーエンドだし、ルーン文字の設定の細かさが凄いと感じれば、村の構成を考えた時には新興宗教や全くの嘘という説が出てくる。
私は「正しく狂っている作品」だと思った。

未開の地での常識から外れた習慣は恐ろしく映る。
セレピーだと感じた人はダニーに感情移入していてダニーが救われたことで追体験をしている。
設定の細かさは作中の衣装や文字、建造物を見ると全てに意味があるので一つ一つ伏線を拾うのも楽しいだろう。
村の維持や写真の枚数、作中に散りばめられた嘘から90年に一度では成立しないのではと嘘のラインを探し始める。

どこにフォーカスを絞るかによって見え方、感じ方、考え方が変わるからこの作品はこれ程に話題になっているのだと思う。

私が感じた「正しく狂っている」というのは、「本当に狂っている人は自分が狂っていることに気がつかない」ため、全てがおかしいのにおかしいことに気がついてなく、誰にも感情移入ができず、ただ1人正常な自分が取り残された感覚になったからだ。
こうやって正常だと思っているが、ホルガの民からすれば私の方が異常であるし、常識が常識ではないことが恐ろしくなる。
また、映像や音で鑑賞者を狂わせてくる仕組みが多数あったので意図的に行なっていると分かりつつも、より不安感が増してしまった。

映像の明るさと共感することへの強制、輪郭が掴めなくなる感覚、何度も手で顔を覆いながらも最後まで観てしてしまう没入感、全てが緻密に計算されていることがさらに恐ろしい。

映画でここまで感情が動いたことはないくらい胸くそ悪かった。(褒め言葉)
絶対二度と観ないが。


クリスチャンをクズと読んでいる人もいたが、私はそうは思わなかった。
男3人に対しては誰にでもあるまあ人間らしい感情で動いているなと思っていた。それが過度に出ているところもあったがまあそんなもんだろうと思っていた。

それに引き換え、ダニーの精神的な自立ができておらず自立に向けて努力してなさそうところが無理だった。
最初から一貫してダニーは「私のことを分かってよ!」という姿勢を崩さず、相手のことを理解して別れるという発想が見えなかった。
だからこそ、全てを同調してくれるホルガに溶け込めてしまったのだと思う。

すまんがメンヘラ(依存心が強い方の俗称として使わせてもらう)じゃねーから1ミリも理解できんわ。


ダニーが大声を上げて泣き叫んだ時ホルガの少女達が同じように泣き叫び、同調しているシーンでは複数の人間が一つの違う生物に見えて気持ちが悪かった。
「人は誰しもが個であり完全に理解し合えることはあり得ないし、だからこそ理解しようと努力することが大切」だと思っている人間からすると、あんな泣き叫ぶポーズをして理解した気になってるのも、救われた気になってることも、浅ましく見えてしまう。
ホルガの民は過敏に感情を読み取れるのでは、とも考えたがそれぞれの意思を感じるシーンは所々あるし、一々全てに同調してたら生活が成り立たないと思う。

やはりあれは本気で信じてるのと演技が混ざってる気がする。


考察としては、ダニーはあの後結構早く殺されると思うし、カルトやりたくて集まってる感じするので新興宗教説を推しています。

絶対二度と観ないし、記憶を消します。

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