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20230327の日記『残り香』


・2ヶ月ぶりに、東京へ行きました。

・4年間住んでいただけの東京に、一年しか離れていない場所に、実家に帰るような気持ちになりながら戻っている。

・私はたしかに東京の、都営地下鉄のにおいとか、下水臭い街とか、都心外れの錆びた空気や、甲虫とネズミがそこら中を這い回っている雰囲気を、別段愛していたわけではないが、でもなんだろうね、あのかっちりと歯車が合わさって、その瞬間になんとなく自分の中の冷ややかな感じが刺激されて、周囲を歩く人間が全部敵に見えて、歩くスピードが徐々に早くなる感覚が、やはり東京にいないと味わえないなと思わせてくる変化の機微は。

・考えてみると、じゃあ東京にいたその4年間のなにが良かったのと言われると、本当に分からない。周りの人間という人間が私の悩みの種で、生きれば生きるほどお金がなくなっていって、アルバイトと大学の繰り返しで、遊びも大学生らしお遊びといえば、実績解除率全プレイヤー50%超えの遊びしかしてこなかったわけだから、自分の抱いている愛着の意味も分からない。

・だが、好きな人がたくさんいる街だし、好きな人たちと歩いた場所がたくさんあるし、泣かず飛ばず意味も分からず生きてきた私が、大学生という立場を得て向かった都市であるから、私が孤独のうちに獲得して、とりわけ開示してこなかったアイデンティティの発散の場であったことは、間違いないわけだよね。

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・メイド喫茶、行ったぜ。人生初。こういうとき、自意識が邪魔しそうで嫌だなと思っていたからメイド喫茶って行かなかったけど、行ってみると意外と周りの多くの客(ご主人様やお嬢様)も自意識を捨てきれず、なんか最後まで照れ臭そうにしている感じがあって、むしろ安心した。

・照れや引きはあるんだけど、でも楽しもうと思ってきた空間で、公共性を保ったままはっちゃけるみたいなことを皆していた。「おいしくな~れ、萌え萌えキュン」をした食べ物は、本当に美味しくなるのかと思って、「それをする前に一口だけ食べてもいいですか?」と聞こうとしたが、一緒に行った友人に止められました。

・メイドさんがライブの形でダンスを披露してくれた。私がそれを見て思っていたのは、一つにはダンスが上手で、笑顔で物凄く可愛いということで、もう一つは、私がやっている仕事も、こういうことだな……ということだった。生徒のために、授業考えて45分間詰まらず話せるようにひたすら練習して、笑顔でやり切る、みたいな。いや、たぶん全然違うんだけど、でもなんかそう感じた。アプローチの仕方が違うだけで、みんなさ、例えばプレゼンの用意をするとか、駅前演説の練習をするとか、やるわけでしょ。そういうことをより可愛くポップにした仕事が、メイド喫茶のメイドさんだなと思って、そこに立っていたのは、可愛いメイドさんでありながら、ある種の職人であったなと感じたわけですね。

・たぶん、違うけど。

・他には、国立科学博物館とか行きました。友人は、化石が好きで、それに興奮してた。私が一番興奮したのは、古い時計が展示されている空間でした。

・で、トルコ料理屋でケバブとワインを嗜んで(こういう嗜みができるようになったのが、社会人って感じするね)、そのあとスカイツリーに行った。

・スカイツリーは、たしか高校生くらいの時に東京旅行へ行った際、登ったことがある。でも記憶も薄くて、最上階までは行かなかった気がするから、せっかくなので行きました。いまさらだけど、いいね、ああいった高いところは。そこでも、展望台のカフェでカクテルを飲みました(こういう嗜みができるようになったのが、社会人って感じがします)。


・帰り、さわやかに行って帰ってきました。楽しかったな。


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