音楽が消えた街Tr5の考察
歌詞編
『魘されて覚める夜を数えた』
アリアが死んでしまったことによって寝れなくなった、というのならまだ分かるけれど、『魘されて起きる』というのが気になった。
そこで私の仮説は、警察官であるジョシュアはアリアが飛び降り自殺した現場に駆けつけたのではないか、というものだ。
目の前で愛する妹の(家出しているため探していた可能性もある)死体をみてしまえば、トラウマになるだろう。それも飛び降り。決して綺麗なままの妹ではないはずだ。
うなされるような夢を見る原因としては充分だろう。
『そう思って背負った《政府の紋章》』
アリアの曲の歌詞で、『音楽だけが唯一の楽しみだったのに 奪われた 国に家族さえ』というものがある。個人的にこの一文を、「唯一の楽しみだった音楽を国に奪われた。そして家族さえも国に奪われた。」と解釈していた。
「家族さえも国に奪われた」の意味は、警察官として働くことになった兄は「政府(国)の為に働く」事になるため、家にあまり帰ってこなくなったことを指していると思っている。
しかし最近は、ジョシュアが【政府の紋章】を背負ったことにより、アリアの大好きな音楽を奪う側になってしまったという意味の、「唯一の楽しみだった音楽を国に奪われた。家族にさえも奪われた。」という解釈の仕方もあるな、と思い立った。
ただあのジョシュアの後悔の仕方を見ると、彼がアリアから直接音楽を奪ったという線は薄い気がする。どちらかというと、察しがよく周りをよく見れるアリアが、自分が音楽を好きでいることが兄に迷惑をかけると判断して出ていったように見える。「家族さえも私から音楽を奪う」という言い方は、アリアはしないんじゃないかなと思っている。
『俺に残る最後の使命』
この『最後』の意味は2つの解釈がある。
1つは警察官としての使命が最後。
もう1つは自分が生きていることの意義という意味の使命が最後。
警察官としての方であればそもそも警察官になった理由が「少しでも生活が楽になればいい」と思ったことであるから、守るべき対象で大切な存在であっただろうアリアが死んでしまった今、続けていく理由がほぼ無くなってしまったに等しい。
この事件の真相がわかったら命を絶とうとしているとしたら、それは彼にとってのアリアの存在がどれほど大きかったかが分かる。
アリアがナイフを持って家を出た理由が、居場所を見つけられなかったら命を絶とうとしていたのであれば、とても悲しい兄妹になってしまう。
『黙した儘で語ること無き《運命の女神》』
【運命の女神】の部分は歌唱だと『アトロポス』になっている。アトロポスはギリシア神話の女神であり、運命の糸を切るハサミを持った描写が有名。
となると、事件概要が『私刑によるリンチ』であるフェミニィが死んでいないという事であるのなら、彼女がアトロポスなのではないか。リンチによる精神的苦痛からか口を閉ざしてしまった彼女から得られる情報が、「運命の糸を切るハサミになるのではないか」
『ならば旋律を通して聞こえるはずだ。君の妹が、何を思っていたのか。』
この曲を買って聴いたときからずっと気になっていたことがこれ。
「なぜ、アマデウスはジョシュアにアリアが何を思っていたのかを教えてくれたのか?」
MV公開以前までは、「アマデウスがターゲットとした人物の中で、唯一アリアが音楽を大好きだったから」だと思っていた。
アマデウスも考え方は異なるとはいえ、音楽を愛しているのは事実。そしてカサノバの事を『誰かさんと違って』と、あまり良く思っていなさそうな描写から、音楽が好きな人も好きなのではないかと考えた。
だから全ての不満や憤り、言いたいことを飲み込んで自分の居場所を求めて死んでいったアリアへ情けをかけて、その兄であるジョシュアに彼女が伝えられなかったことを伝えて”あげた”のだと思っていた。
でもたぶんこれは違う。
私はアマデウスの事を、良心のある神だとなぜか思っていた。おそらく、違う。彼なりの正義に従っているだけであって、人間からみる良心とはかけ離れている。ただこの神は、音楽に狂っているだけだ。
その点を踏まえると、そもそもターゲット(要は実験台)に情けをかけることなどありえない。よって先程の考察は違う。
アリアのことを伝えたのはジョシュアを音楽で殺すために必要だったから、というもっと単純な理由だったんじゃないかと思う。ジョシュアとアリアという兄妹に私自身が「可哀想に」という感情を抱いているから無意識に、救いのある方向にしたかったのかもしれない。
ジョシュアはアマデウスを追い詰めるまで、「妹を殺したのはこいつだ」という仇討ちをモチベーションとして行動している。それによってきっと、精神も相当強い。
それが、アマデウスにとって邪魔だったということ。その燃えるような怒りを鎮めるには、「妹の死に、妹を追い詰めたことの一因は自分である」という絶望的な事実を教えることが最高の手段だった。
今の私の心情は「そういえばこいつ人外だった」である。私もアマデウスの旋律に取り込まれているのかもしれない。『人の負の感情操り』とか言ってたわ、と思っている。
『人を殺す音楽なんざクソくらえだ!!』
例えばアリアが飛び降りる前に、アマデウスがメールで送ってきた旋律を書き起こしていたとしたら。『書きかけの楽譜』が、【静謐なる虚飾楽園】を書き起こしたものであったとしたら。
『飛び降りた妹がのこした【メール履歴】』の【】は歌唱では『もの』となっている。だからMV公開前の私は、『もの』は【書きかけの楽譜】だと予想していた。しかし結果はメール履歴。楽譜はどこにもない。
身内が事件の被害者になったことにより捜査から外されたからジョシュアがその証拠品を見れていないのか、そもそも発見されていないのかはわからない。
もしその楽譜を民衆に広める都合の良い手段としてアマデウスが利用していたとしたら。
カサノバのFileでの『秘密裏に大流行中の楽曲』やフェミニィの『校内放送で流れた楽曲』はアリアの手によって書き起こした楽譜が形を変えたものだという見方ができる。
つまり、アリアは『人を殺す音楽』に加担しているということだ。ジョシュアの言う『クソくらえ』に最愛の妹が含まれていることを彼は知らない。
『パパとママを裏切ることも』
『ふざけた名前しやがって』
『誰かさんと違って、音楽に興味がないわけじゃあないらしい』
『小さい頃から大好きだった 兄さんが褒めてくれたピアノが』
上の3つのセリフや歌詞から、この兄妹の家庭には音楽が浸透している事が分かる。
まず、アマデウスの名が音楽家と同じものであることが分かること、そしてそれを冒涜だと感じていること。
次に、音楽を奪う側である警察官でありながら、アマデウスにもわかるくらいの音楽への興味があること。
そして、小さい頃からピアノに触れ合う事ができる環境があること。
この二人は、音楽家一家に生まれたのではないかと考えた。そうすれば、芸術が禁止された街で『少しでも生活が楽になればいい』とジョシュア思うほどに裕福ではないことも筋が通る。
きっとアリアに音楽の『才能がない』ことが『パパとママを裏切ること』に繋がるんだろうと考えた。才能がある音楽家の両親のもとに生まれ、その子どもが才能がないということが裏切りになるのではないかと思う。
元々『才能がない』と音楽の道を諦めていながら、大好きだから音楽からは離れられなかったアリア。
『小さい頃から大好きだった』というのは『兄さん
』と『ピアノ』という二重の意味があると思う。
大好きな兄さんが褒めてくれたピアノきっかけで音楽も大好きだったけれど、大好きな兄さんが政府側の権力を持つ職に就いたことによって(しかもそれは家族のため)、迷惑をかけないように家を出ていったんだと考える。
この兄妹は精神的に大人すぎる。
MV編
アマデウス
なんか、赤くなってた。髪と羽根が赤く染まってた。あと指揮棒も。
あれは彼の音楽によって人が死ぬと赤くなるのかな。血が汚いとは感じないんだなと少しズレたことを考えてしまった。
『人を殺す音楽なんざクソくらえだ!』
思っていたよりも強い言い方だった。たぶんあの時はアマデウスの旋律を跳ね返せていたんだと思う。それくらい強かった。吐き捨てるような感じだと思っていたから意外で良かった。
アリア
Tr5に出てきたアリアは左を向いていた。Tr2は基本的にアリアは右を向いていたと思ったので、これは生死を表してるんじゃないかと思う。
Tr2はもう居場所が見つからなかったら死ぬ気でいただろうと思うので、死に向かって右。
Tr5は家を出る直前だと思うので生きているから左。
最後に
この曲に関わった全ての方々と、夢追翔に心からの感謝。物語音楽って聞いたことがなかったけど、今回のアルバムで興味が湧いた。
次のMVも楽しみにしています。
いつか、円盤として手に取れますように。
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