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地歌 里の暁 歌詞 単語分解 3 後半部分

里の暁の後半の歌詞です。

たちまさりたる 思寝(おもいね)の 
亡き魂(なきたま) かへす 唐土(もろこし)の 
其(その)故事(ふること)の しのばれて
空(そら)だきならぬ 煙の末(すえ)も 
妙(たえ)に かほりし 雲の端(は)の 
いづちゆくらん 
短夜(みじかよ)の空

● たちまさる … 回数が増える。程度がはげしくなる。 / すぐれる。
● 思寝(おもいね)… 思い続けながら寝ること。

行としての訳は、もの思いを続けながら寝ることが多くなった。

● 亡き魂(なきたま) … 死んだ人の霊。
● かへす … 帰らせる。戻らせる。/ 繰り返す。もう一度する。
● 唐土(もろこし)の … 中国の古名。
● 故事(ふること) … 古い言い伝え。 / 古い歌・文章 / 昔話 / 故事
● しのばれて … 思い出す・思い起こす / 思い慕う / めでる  

行としての訳は、死んだ人の霊を帰らせるという、中国の古い言い伝えを思い出して、となるかと思いました。

● 空(そら)だきならぬ … 空薫き。空だき=どこからともなく香ってくるように香をたいて匂わすこと。その香り。ここでは、空だきではない、なので、また、解説では蚊遣り火の煙となっているので、風情のある香らせ方ではなく、実用的な蚊を追い払う為のもくもくだきになるかと思われました。

● 煙 … 蚊遣り火(かやりび)の煙とのこと。(ウィキペディアより)蚊遣り火とは、よもぎの葉、カヤ(榧)の木、杉や松の青葉などを火にくべて、燻(いぶ)した煙で蚊を追い払う行為、あるいはそのために熾(おこ)された火や煙である。季語などで蚊遣火と書く。平安時代から、蚊取り線香が発明される大正初期頃まで蚊を追い払うための欠かせない生活習慣であり、江戸時代の庶民の間では夏の風物詩でもあった。古典の随筆、和歌、俳句にも「蚊遣火」の記述が散見され、現代俳句においても夏の季語として扱われている。なお蚊取り線香と蚊遣火は、全くの別物である。

● 末(すえ) … 先端、末端。

行としての訳は、もくもくとたいている蚊遣火の煙のはしっこも、となるかと思いました。

● 妙(たえ)に … 奥深く味がある・不思議・奇妙 / なんとも言えないほど美しいさま / 不思議なまでにすぐれているさま
● かほりし … (煙・霧などが)ほのかに立ちのぼる / よい香りがする / つややかに美しく見える
● 雲 … (雲に見立てて)火葬の煙。スマホ検索では火葬の煙と出ましたが、蚊遣り火の煙もおなじく雲にみたてたもの、と思われました。/ 雲のように見えるもの。遠くにあるたくさんの桜の花などに言う / 曇って晴れない心や心の憂いを例えることも多い。
● 端(は) … 一部分。切れ端
● いづち … どこ、どの方向

行としての訳は、奥深く味があるようすで、ほのかに立ちのぼる蚊遣り火の煙の一部分もどこへゆくのだろうか、といった訳になるかと思いました。

● 短夜(みじかよ)… (夏の)短い夜


前半後半とおした全体の訳

夕月がしずむ頃というのは慕わしい気分にさせる
橘のうつくしく咲いた春に
夏が来たことを伝えるように、ほととぎすが一声鳴いて飛んでいった
ものの区別がつかないほど真っ暗な闇夜になれば
闇夜を照らす蛍の光さえも、あるかないかわからないはかないものに見える

もの思いを続けながら寝ることが多くなり
死んだ人の霊を帰らせるという、中国の古い言い伝えを思い出す
もくもくとたいている蚊遣り火も、煙のはしは、
奥深く味があり、ほのかに立ちのぼるようだ
まるで雲の一部分のようであるが
どこへ流れてゆくというのだろうか
夏の短い夜の空に

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