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大学病院2人目の主治医、M医師のこと [前編]


田舎暮らしの方にはわかっていただけると思うのですが、鉄道のローカル線は1時間に1本で(たまに2本)、しかも乗り換えの接続が悪かったりして、大学病院に11時に予約といっても、バカみたいに早い電車に乗らなくてはなりません(^_^;)

車で高速道路を行けばいいのに、わざわざ不便な電車で行くには訳がありまして、ビビリで高速の運転ができないのと、電車のひとり旅がめっちゃ好きだからです。

読みたい本、暗譜したい楽譜、書きかけの「教室だより」の原稿、生徒さんに頼まれた連弾アレンジの五線紙、など、そのときどき、いろんなものを持ち込みます。

高校の在る駅を過ぎてしまえばローカル線は乗客もまばら。何をしてもよし、目を閉じてぼーっとするもよし。


ディズニー映画「プーと大人になった僕(原題:Christopher Robin)」の中で、クリストファー・ロビンと電車に乗ったプーさんが、窓の外を眺めながら、「見えたものを言うゲーム」をする場面があります。

「いえ、くも、いえ、き、しげみ、ひと、いぬ、、、、」

これを見た時、うわー!今度電車に乗ったら絶対やるー!と思いましたね👍️そして実際やりました。声に出さずに、ですけどね。

秋には「柿、柿、柿、、、」
この辺り、こんなに柿の木のある家が多かったのね。

「田んぼ、畑、田んぼ、田んぼ、、、」
飽きるほど見慣れたはずの風景も、楽しすぎてニヤけてくるのが止まらない。

クリストファーロビンの吹替は
堺雅人さん
https://youtu.be/fSkooRiHTO0


最寄駅で降り、バスを待ち、15分ほど乗ってようやく大学病院です。

検査を済ませ、朝ごはん。いや、ブランチというのかな。ここにはレストランもあり、コーヒーショップもあり、その日の気分で診察まで好きな場所で好きなように過ごします。

毎月通っていた2018年~19年は、今の流行り病もなくこんな風にのんびり過ごすこともオッケーでした。小旅行と決め込み、1日ひとりの時間を楽しんでいました。


さてやっと本題、すみません。
もう少しお付き合いいただけますか?

ありがとうございます。


大学病院2人目のM医師の話。
広い廊下の待ち合いのあちこちに掲げてあるデジタルの掲示板には、診察室番号、医師名、次呼ばれる患者の受付番号、現在の遅れ時間、など表示されています。

M先生の遅れ時間が他の医師より多いのは通常のことで、1時間超えなんていうのもよくありました。他の記事でも書いたように、私は待つのはどうってことない性格だし、日頃溜めてしまった用事を集中してこなせて嬉しいし、私にとってはなんの問題もありません。

でもなぜこんなに遅れ遅れになるのかな?テキパキこなせない先生なのかな?と最初の頃は思いましたが、ある時なにか用事をして待ちながら、診察室を出入りする人々を観察するともなく見ていて、気付きました。

あれ、ここの診察室のドア、みんな入るときの表情と出てきたときの表情、全然違う!

ひとりで来た人、ご夫婦、娘さんかお嫁さんか付き添って入る人、いろんな患者さんがいらっしゃいますが、入っていくときの緊張感のある顔つきと違って、出てくるときの顔はみんなゆるんでいます。気持ちがほぐれたのか、安心したのか、なにかが決まってほっとしたのか。本当のところはわかりようもありませんが、ひとり残らずゆるやかになっているのです。

付近の別の診察室もいくつか眺めていましたが、進みも早く、人々の表情もさほど変化したようには見えません。

そういえば私もそんな顔をしていたんだろうと思います。
↓の冒頭にも書いたように、診察室を出てから1週間は余韻で頑張れましたから(笑)

https://note.com/mi_kokopi/n/n1ba0357f11a9


めっちゃイケメンというわけでもなく(失礼ですよ!)  カリスマ医師!という感じでもなく、声は「遺留捜査」の俳優 上川隆也さん似の優しいトーン。ああ、声や話し方って大事かもしれません。

手術に踏み切れない理由はなんだろう?
この人は何に困っているのだろう?
そのこだわりは何処からきているのだろう?
自分はどのような手助けができるのだろう?


いつもそんな風に考えながら目の前の患者(私)と向き合っていてくれたんだと思います。患者という感じではなく、人間として対してもらっている感じは、毎回しました。

副甲状腺機能亢進症。喉に4つあるうちの1つが腫れて過剰にホルモンを出してしまう病気。頭痛やだるさ、骨からカルシウムを血中に送り出してしまうため骨密度が下がる、などいろんな症状があります。

現代の医学では原因不明で根本治療は手術しかないという。かなりの高齢者や、若くても手術に耐えられないなにか他の病気がある場合のみ、薬で一生ホルモンバランスをとっていく。その薬も人によって合う合わないがあるらしい。

これまでは地元の病院も含めどの先生も手術しかない!の一点張りでした。

M先生も当然手術をすすめてくれました。
ただ私が何に困っているのか、なぜ迷っているのか、そこのところに耳を傾けてくれました。


月に一度の経過観察を続けていくうち、血中の副甲状腺ホルモン値は本人の頑張りや生活の工夫で下がるものではない、ということが実感として私にもわかってきました。

そして骨密度のグラフが骨粗鬆症のラインにちょっと突っ込んでいたのには驚いてしまいました。何年前からこの病気が始まっていたのかはわかりませんが、徐々に徐々に、血液にカルシウムが足りない!!と誤った命令を出して、過剰にホルモンを出して骨からカルシウム補給していたなんて。骨折の心配だけではなくて、将来歯も弱くなると困ります。

手術が出来ない患者さんにはどのような治療をしていくのかを尋ねると、高齢の患者さんを例に投薬など詳しく教えてくれ、具体的にひと月にかかる薬剤の金額も調べて次回に教えてくれました。そのような選択肢も無いわけではない、ということをこの先生が初めて提示してくれたわけです。

払えない金額ではありませんでしたので、かえって迷うのですが、人によって合う合わないがあるというのは賭けのようなもの。

また私が入院して家に置いていくのが心配な家族が当時いた、という事情もありました。
その辺のところも親身になって聴きとりつつ、このように考えてみてはどうか?と提案もしてくれました。

幸い、すぐに命にかかわり時間を争うような病気ではないため、宿題を持ち帰り、いろいろネットでも調べ、浮かび上がる自分の気持ちを大事にしてまた翌月診察室へ向かうことを繰り返しました。


辛抱強い先生だったなと思います。
一人一人にこんな丁寧な診療してたら、そりゃ時間も延び延びになるさ。
診察室に入るといつも第一声は

「たくさんお待たせしてしまって、本当にごめんなさい!」

でしたが(笑)、待たされて不満に思うは人はほとんどいなかったのではないかな。
笑顔で部屋を出てくる人を見ながら、ああよかったですね、といつも思っていました。

そして先生はいつもお昼ごはんを食べそこねて引き続き午後診療分に突入していきました。



やがて手術することを決めて内分泌外科も併診することとなりますが、そこでまた問題が起こります。

長くなってしまいましたので今日はこの辺で。最後までお読みいただいたみなさま、感謝でございます💧🙇‍♀️✨またいつか続きを書きますね!






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