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BTSと私と、介護

私は今、義母の介護をしている。

義母の病気はパーキンソン病。
もう10年以上、闘病生活を続けている。

と、言う事は、私も10年以上介護生活を続けているのか。

徐々に動かなくなって行く身体を抱えて、一番辛いのは義母だ、それは頭の中では理解できている。

理解できてはいるのだが、私はそんなにできた人間ではなかった事を、介護を通じて思い知らされる。


イライラする。
口調が荒くなる。


そして、そんな自分に嫌気がさして、夜の最後のお世話をした後、トイレに篭って泣く日が出てくる。

義母は、息子には下の世話をしてもらいたくないと言う。

私は人に頼る事が下手くそだ。
下手なんてもんじゃなく、下手くそ。

義母にそう言われれば夫に
何もしなくていいよ。
私がやるから。
特にやる事もないでしょ?

可愛げのない妻だと、我ながら思う。

やる事は、実はたくさんある。
ゴミ処理、簡単な掃除、体位を整える、ベッドメイキング…細かな名もなき家事が存在する。

が、そう言った手前、今更頼るのも…
凝り固まった不要なプライドが、頭をもたげる。

本当に可愛げがない。


フルタイムで働き、介護をする。

パーキンソン病の投薬は、時間が決まっている。
義母の場合は、6時、9時、13時、17時の4回だ。

朝5時過ぎに起きて、朝ごはん、お弁当の用意をして薬を飲ませる。
ここ数ヶ月は、目覚ましが鳴る随分前の、4時には目が覚めるようになった。
やらなくてはいけないと言う思いが、どこかに残っているのだろう。

これは愚痴だな。
愚痴を言ったところで、なんの解決にもならない。
マイナス。


世の中にはもっと大変な介護をしている人もいる。
自分だけが不幸と思ってはいけない。

わかっている。
そんな事は分かりきっているのだが、感情が先走る。


信号待ちで。
暴走車が突っ込んでこないかな…

駅のホーム。陸橋。
誰か背中にぶつかってこないかな…

死にたいわけではない。
現実逃避の不謹慎な妄想。
逃げたかった。現状から。

いや、死にたかったのだろうか。
よくわからない。

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そんな状態を救ってくれたのが、BTS バンタンとarmy達だった。

BWLでハマってから、彼らの過去の動画や画像、記事を漁る日々が始まる。

そして、情報を得るためだけに登録していたTwitterを、ちょっとした空き時間に覗くようになる。

そこには、バンタンを語る楽しそうなarmy達がいた。

本当に楽しそうに映った。
推しを語るその様が、イキイキとして見えた。

だが、その世界に身を投じるまでには、しばらく時間が必要だった。

この年ですよ?
ホビとナムさんの倍近く生きてるのに。

ただ、眺めてニヤニヤするだけでも十分満足感は得られていた。


そして、様々な情報を仕入れて行くうちに、私はある言葉に出会う。

ナムさんのLove yourselfツアーの最終公演でのスピーチだ。

一つだけ言います。
ぜひ僕を利用してください。
ぜひBTSを使ってください。
あなた自身を愛するために。

最初はよく意味がわからなかった。
利用する?
利用って何?

咀嚼して行くうちに、なんとなく意味が掴めてきた。

あそこの皆がイキイキして見えたのは、BTSを利用しているからなんだ。

私も利用してやろう。
思う存分。

Twitterアカウントを綺麗にし、バンタン専用にしたのと、その言葉を見たのと、どちらが先だったのかはもう覚えてはいない。

覚えてはいないけれど、ナムさんの言葉のおかげで、私はたぶん、イキイキしているTwitterの中の人になれたと思う。

若干…Twitter依存気味なので自制しなくてはいけないが。

そして。

私を一番救ってくれたのはジン君の言葉だった。

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一つ我慢すれば二つ得ることが出来る
二つ我慢すれば四つも得ることが出来る
だから僕はその時まで黙々と頑張り続けるだけ

これからも本当に頑張るだろうけど
あなたのその頑張りは僕が知っているから
あなた自身の頑張りはあなただけ知ってればいい


なんて人だろう。

20代で、人の痛みを理解し寄り添える。
ある意味、闇を感じなくもないが、
あの顔であの声で、こんな事言われたら、泣いちゃうでしょ。

我慢するたびに、この言葉を唱える。
頑張るたびに、この言葉を思う。

バンタン、そしてジン君は
私の生きる糧。

大袈裟でもなく。
生きる意味とかまで言っちゃうと、大袈裟だけど。


明日また、新しいエピソードを知るかもしれない。
明日また、新しい顔を見せてくれるかもしれない。
明日また、新しい声が聞けるかもしれない。

たったそんな事、と思う人もいるだろう。くだらない、と。

なんの趣味もなく、ただ家と職場を往復し、家事と介護。

「たったそんな事」は、そのまま老いて行くだけだったかもしれない私の光。

明日もまた生きてみよう、と思うのだ。


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