爆発的な流行ってカルトみがあって怖いよねって話

 皆さんはMBTI診断を知っているだろうか。最近よく耳にする単語かと思う。実はこれ、最近VTuber界隈にも蔓延しだしていて少し恐怖を感じたので今回のテーマにした次第である。

 私は都内の大学で社会心理学を専攻していた。そこでは質問紙に慣れるため、1年のころから様々な理由で様々な性格診断をさせられる。しかしながら自分たちが研究するためにまず性格分析の項目を入れようと思ったとき、真っ先に思い浮かぶのはBig-Fiveであった。要は、心理学界隈で信憑性・信頼性があるとされている性格分析はBig-Fiveくらいなのだ。(これは過言か?)

 このBig-Fiveだって大体5件法で、お互いの項目が作用しあわないよう項目を並べて、点数を取ったら統計分析をして、「Aさんは~が有意に高く、~が有意に低いことから○○な性格といえる」など、【有意性】が出たところしか断言できないような厳しいルールがあるのだ。それ以外のところは統計的な信頼性がないから言及ができない。してもいいが、判断材料にはならない。断言もしてはいけない。結局は人間の作った分析法だから人間の裁量でしか上手く測れないんだ。私はそう解釈している。

 さて、今回のテーマはMBTI診断だ。
 私がなぜ「怖い」と感じたのか。先ほどから言っているように、心理学部生であれば在学中に聞いたことがあるかもしれない。はたまた大学のキャリアデザインか何かの授業でやらされたという人もいるかもしれない。これは「血液型占い」や「星座占い」よりは有用性がある性格診断だったのである。……数年前までは。

 先ほどから私が呆れ返っているのが文章から滲んでしまっていたら申し訳ない。中高大学生が流行らせたらしい今回のMBTI診断、発端は韓国の大流行らしい。
 最近の日本人若年層はやけに自分にコンプレックスを持っていて韓国人に対して憧れを抱いているようで、単純に心配になる。憧れのアイドルへの「同一化」「同一視」(防衛機制の一種)などはよくある話だ。しかしBMIを考えずに「目標体重40キロ」だのなんだの言ってる女たち、現実を見ろよ。日本人は韓国人のようなスタイルにはなれん。一握りしか。残念ながら。というか、そうやってK-POPに憧れがあって化粧やら食事法やらを真似ている人たちほどちゃんと可愛かったり、すでにスタイルがよかったりするんだ。ならば、その時間を少しだけ、毎日ほんの5分でもいいから国語の勉強とネットリテラシーの学習に充ててほしい。切実に。闇バイトで人生を棒に振る頭の弱い人が増えすぎてる。
その片鱗が、このMBTI診断の流行だと言ったら怒られるんだろうなぁ、、、と思いながら書くぞ。

MBTI診断とは

まずMBTI診断とは何ぞや、という話。
簡単に言うと、自己を認識するための診断だ。
就活なんかでは自己PRの時の判断材料にするためにやらされることが多い。この診断の使い方はそれでいいのだ。あくまで、自問自答の可視化。わかりやすくかみ砕いて教えてくれた文章の中から、自分の性格に合った箇所を掬い出して、エピソードと絡めて自己PRの文章を書いていく。
ちなみにこれは「今の自分」を知るものなので考え方が変わると結果も変わる。当たり前だ。その揺れに関しては別に「軸がない」とかいう話ではなくて、単純に「ポジティブになっている」「少しネガティブになっている」くらいの差なのでその結果をしっかりと自分の中で咀嚼する時間も必要である。

それがどうだろう。なぜか流行り出したMBTI診断は質問こそほぼ変わらないものの、受け止める側が「16タイプ」に自ら「ハマりに行っている」のである。

「○○さんってMBTI診断やった事ある~?私ね、INFPだったの~」
「私ESTJだったよ~」
「え、相性最悪じゃん」

?????????
相性??????????
あの……それ、ただの自己認知テストなのであなたとの相性をはかるためのものでは……なくて…ですね……

 ただ流行っているだけなら見過ごせたが、こういう類型論になると日本人って途端に、良く言って「素直」、悪く言うと「馬鹿」になるのでめちゃくちゃ頭を抱えた。
 16個もタイプがあったって1億3千万人を16個に分けられるはずがないでしょう。人間の性格は生まれつきの部分よりもその後の周囲の環境や育ち方に因るところが大きい。つまり千差万別、十人十色、みんな違ってみんないい、なんだ。MBTIの場合自分は確かに結果の特性に近い性格だと思う。「A型だから~」「ねずみ年だから~」という類型論のように無根拠というわけではないところが憎くて面倒なんだ。でも近い性格というだけであって、「完全に」記載通りの性格ではない。でも「結果」と出されるとあまり当てはまらない文章を読み飛ばして見ないふりをして「この診断は当たっている!」と言う。それ、確証バイアスだしバーナム効果だから思い込むな……!

相関関係なんて解析もしてなさそうな「MBTI相性一覧!」みたいな名前の画像がいたる所で使い回されていてまた頭を抱えた。

こうして無事16個の性格に分類された中高大学生たちは今度は自分の推したちへその矛先を向けた。ライバーに「MBTI診断」をしたことがあるかを聞き、優しいライバーたちはその場でパパっと自己分析をし、結果を出してリスナーは「おぉ~!」と称賛を送る。なんなんだ。ライバーの性格を知ってどうするんだ一体。
配信のコメ欄で「○○はINFJだもんねぇ~」とか言ってる人が居たらブロックしてしまうかもしれない。いや、しないけど。


何が怖いのか

 冒頭から私が言っている「怖い」だの「カルト」だのというのは、「個」である人を「多くの人間が属する型」に嵌めて考え、それを押し付ける風潮になってきているなと感じたからだ。先ほど話に出した「配信内でのコメント欄に~」のやつ、おそらく正常なライバーなら「あ?」となるだろうが、少しでも心が弱っていたらそのコメントひとつで「MBTI診断の結果らしい行動」をとり始めてしまう人がいるかもしれない。それがリスナーから求められているものだと思って行動してしまうかもしれない。言葉って怖いのだ。

 これが顕著に表れている例として、日本の古き悪し習慣であるジェンダー論である。
「男は泣くな」「女は涙を武器に」
「男は黒や青」「女は赤やピンク」
「男はズボン」「女はスカート」
というような意味で「INFJはこういう性格だからそういう行動したのかぁ」なんてコメントが始まったら「うるせぇ!型に嵌めるな!」なんて自治してしまいそうで怖い。絶対しないけど。

そしてタイトルにある「カルトみがある」。
カルトも入り口は「みんなもやってるんだけど」とかそんな感じに「型に嵌める」ことをよくするのだ。それから、こうして爆発的に流行ることで、怪しい「MBTIコンテンツ」をちょこちょこ見るようになった。「MBTI別〇〇」というのは全くの信用性のないページなので娯楽として使用しよう。

まとめ:お願い

君たちが信用しているそのMBTI診断に信頼性はない。再現性がないから。
参考程度で留めて、内省のための材料にしてほしい。
他者に対してその結果を開示するのはいいが、そんなもので相性を決めようとしないでほしい。相性なんて、その結果からじゃ分かるはずがない。信憑性のないページの言うことなんかに従わず、目の前で話して笑って遊んでいるあなた自身でその子との相性をはかってほしい。

まぁ、この記事だって「心理学を大学で専攻していただけの社会人」が書いているだけなので、大学のころの記憶なんか間違っているかもしれない。そういう意味では信憑性のかけらもないのだが、これは私のいつもの書きなぐりなので赦してほしい。

MBTI診断もここまで人気になるつもりはなかったと思うので
早くこの流行が下火になって押し付ける人が出てこないことを祈る。