見出し画像

KACオタク赤飯炊き部門

KONAMI Arcade Championship。
それはKONAMIのアーケードゲームを愛し、KONAMIのアーケードゲームに愛されたプレイヤーたちの頂点を決める年に一度の戦いまつりである――。

というわけで、今年の10th KACも非常に素晴らしいものだった。
まずは各機種のファイナリストの皆様、難しい状況の中で開催してくださった関係者の皆様にお礼を申し上げたいと思う。
毎年KACを楽しみにしている一般プレイヤーです。本当にありがとうございました。
そして見事チャンピオンに輝いたプレイヤーの皆様、本当におめでとうございます!


さて、今回のKAC。何が起こったかと言うと。
結論から言えば、私は赤飯を炊いた。


KACは毎年2月頃に開催される。年が明けると、KACはもうすぐそこだ。
今年の10thは当初2021年春の開催を予定していたが、新型コロナウイルスの影響でズレにズレ込み結果的にこの時期の開催となった。
KACの開催が近付くとオタクは震え始める。
ああ、今年もKACが来る。来てしまう。
出場なんて夢のまた夢。親しい知り合いに出場者がいるわけでもない。もちろんKACをぼぎわんか何かと思っている訳でもない。
私は「いつかファイナリストになって全世界に推しを見せびらかしてぇ~!」と妄想する一般ポップンミュージックプレイヤーの端くれである。
しかしオタクはKACが近づくと吐き気・胃痛・動悸・息切れ・手の震えに襲われる。命の母の効能みたいだな。前日はだいたいあまり眠れないまま夜を明かす。
何故出場者でもなんでもないただの一般プレイヤーがここまで激しく緊張しているのか。

KACポップンミュージック部門決勝は推し再登場ビッグチャンスだからだ。

この世のイオ・ロア推しは全員「推し再登場部門ファイナリスト」なのである。


(なお上記の体調不良等は私の場合であって、すべてのイオ・ロア推しの方に同様の症状が出ているとは限りません。たぶん私が死ぬほど拗らせているだけです。)

イオ・ロアは2015年に開催された4th KACのポップン部門決勝新曲「RINИE」で初登場した、天命を遂行する天使の二人組という設定のキャラクターだ。
KONAMIのコンポーザー PONとAkhutaによるユニット「GeMiNioИ」の楽曲を担当しており、2018年の7th KACでも「K∀MUY」という曲が決勝新曲として登場している。どちらもかっこよくて最高の曲なのでみんなやってください。
オタクは公式からそう言われたわけでもないのに、4th KAC以降「GeMiNioИとイオ・ロアはKAC決勝でしか登場しないもの」だとずっと信じ込んでいた。これ今思えば本当になんでだったんだろう……。一応7thでの再登場でその説が正しいことが証明されたのだが。
4th KACは私が初めて現地で見たKACだった。
当時はJAEPOのKONAMIブースで2つのステージを使ってKACが行われていた。
Akhutaさん推しの私は、ポップン決勝が行われている隣でAkhutaさんが出演するミライダガッキのステージが始まるのを待っていた。
何やらポップン側のステージが騒がしい。決勝課題曲4曲目はどうやら完全新曲のようだ。
モニターに表示される、見知らぬ二人組のキャラクターのシルエット。
当時ポップン筐体で遊ぶことができたVENUSのバレンタインデーストーリーに頭をやられていた私は「あれVENUSだ。ぜってぇ~~~~VENUSだ」と思ったことを覚えている。
隣のお姉さんの「烈と風雅?」という声で正気に戻った。
決勝課題曲4曲目が発表される。新キャラクターと並ぶ推しの名前。GeMiNioИ――PON&Akhuta。
推しが出るステージ待ちをしていたら隣のステージで推しの新曲が出た。そんなことがあるか?
推しの新曲を担当するそのキャラクターに対する第一印象は「顔色悪いな」「Akhutaはまた宇宙人なのか」「そんなに好きにならないだろうな~」だった。
今思えば壮大なフラグ、どの口が言うとんねんほんまに案件である。

そのキャラクターの名前が「イオ・ロア」であることを知ったのは、決勝から数日後の話だ。
地方に住む私はその次の日にフォロワーと遊び、新幹線に乗って帰った。そのまた次の日は休みを取っていて、「そういえば新曲ちゃんと聴いてないや」と思い立ち軽い気持ちでYouTubeを開いた。

BADアニメである。
BADアニメがすべてを狂わせた。

元来性格正反対ニコイチ大好きニコイチ過激派オタクであった私は、「髪の長い中性的なほうがムキムキパワータイプっぽいほうを攻撃から庇う」BADアニメに完全に狂った。
すぐさま彼らの名前を調べ、Twitterに「ヤバイ」と呟いた。
その後は転がり落ちるようにあれよあれよとハマっていったのである。
またここまでの拗らせを決定付けたのは、間違いなく2Pカラーが原因だろう。
詳しく書くと本当に長くなるので割愛するが、2Pイオ・ロアを初めて見たときにイオのはちみつ色の瞳に心を打ち抜かれ、「あぁ、これからはずっとこの子たちと頑張ろう。この子たちとRINИE EXに辿り着こう」と決意した。今でも私の相棒だ。

オタクは「イオ・ロアはKAC決勝でしか登場しない」と根拠もないのになぜか確信していた。
翌年の5thは仕事の都合で現地に行けず泣く泣く配信を視聴したが、それ以降は必ず足を運んでいる。
イオ・ロアが再登場するかもしれない。現地で見届けたい。ただそれだけのために。
毎年決勝新曲発表の瞬間は親しいフォロワーに手を握ってもらい、万が一のことがあれば面倒を見てくれと頼んでいる。非常にめんどくさいオタクだ。
7th KACでの再登場時はふらふら歩く私をフォロワー二人が左右から支えてくれた。決勝終了後は会場の外で呻く私の背中をさすってくれた。
こう文章にするとなかなかにキマっている。フォロワー、本当にありがとう……。

そんなオタクが吐き気・胃痛・動悸・息切れ・手の震えに見舞われながら迎えた今年の10th KAC。
前回の9th KAC決勝新曲では、最高難易度のレベル50を冠する曲が満を持して登場した。そのため今年の決勝新曲は何が来るのか全く読めなかった。
また50が出るのか、それとも例年通り50に近いクソむず49が出るのかあるいは。
前日から何かあったときのイメトレをしながら(何かあったときのイメトレをしておかないと受け身を取れずに死ぬ)予想していた。
おそらく昨今のポップンミュージック事情から完全新規アニメはないだろう。
新アニメがあったとしても、一部アニメがラピストリア版イオ・ロアと共通で一部アニメが書き下ろしとかそんな感じだろう。
50が来るとすればRINИEかK∀MUYのUPEER譜面か。じゃあ大丈夫だな。(一体何が大丈夫なんだ)
一番恐ろしいのは新曲・新衣装・新アニメの3コンボだ。
これが来たら死にます!と言いつつ、やはり昨今のポップンミュージック事情からはあり得ないだろうなと真っ先に候補から外した。
ここ数年新衣装新アニメが与えられたキャラクターは、長い歴史を持つポップンミュージックの中でも屈指の人気キャラばかりだ。
そうそうたる顔ぶれの中にまだ登場して7年しか経っていない、Deuilやつぎドカと並ぶ人気キャラとまでは言い難いイオ・ロアが選ばれるとはとても思えなかった。まぁ私の中では大人気覇権キャラなんですけど……。

当日はリモートで手を握ってくれるフォロワーとスペースで話しながら配信を視聴した。
緊張のあまり決勝新曲発表まで記憶を消したい……とぼやく私も女子部門決勝に完全に見入って一瞬記憶をなくしていた。
3曲目の「L-an!ma」の意味不明なラストを見ながら「エ!?これ3曲目!?」と驚いていたらフォロワーから「記憶なくしてるじゃん!!」と冷静に突っ込まれた。
女子部門決勝4曲目。指定課題曲の新曲が発表される。
おびえるオタクの前に現れたのは「世界の果てに約束の凱歌を」、担当キャラクターはミミ・ニャミだ。
心底安心した。「ハァ~命拾い!」と思った。
しかし同時に、次に控えるフリー部門の新曲は「これ」ではないなという予感もしていた。ミミニャミが二人並ぶアニメに胸がざわついた。
「これさ、フリー部門のほうGeMiNioИカバーの凱歌で担当イオ・ロアだったらどうする?」
まぁそんなことはあり得ないだろうとエヘエへ笑っていた。オタク、フラグを立てるのがお上手すぎる。
フリー部門。こちらもハイレベルすぎるプレイに完全に見入って記憶をなくしていた。TATSUさんの「Chaos:Q」は本当に凄まじいものだった。

フリー部門決勝4曲目。指定課題曲の新曲。

世界の果てに約束の凱歌を -Advent- GeMiNioИ

新衣装のイオ・ロアがそこにいた。

真っ先に候補から外した「それ」だった。
頭が真っ白になった。「ゥエェエ!?」という素っ頓狂な悲鳴のあと、何も言葉が出てこなかった。感極まって泣いた。
唯一出てきた言葉は「殺して……」よりによってなぜ??
フォロワーの「(何かあったとき用に線画まで描いていたイオ・ロアのイラストの)服を描き変えなければならない」と戸惑う声がぼんやりと聞こえる。
あとスペースにいきなり人が増えた。たぶんみんなオタクの死体を見に来ていたのだと思う。Twitterでスタンドバイミーすな。
新アニメをガン見しているうちに曲が終わった。視覚に全神経を集中させていたのであまり曲は聴けていない。
あらゆる情報がぼんやりとしか入ってこなかった。TATSUさんが優勝したことだけはなんとなくわかった。
Twitterで「殺して」と呻いていると、私がイオ・ロアに狂いまくっていることを知っているフォロワーからおめでとうリプが来た。
あとイオ・ロアのファンアートがめちゃくちゃいっぱい流れてきた。ありがとうございます……世界、美しすぎない?
最高の日だった。絶対走馬灯にこの日のことが出てくると思う。
なお、後日落ち着いてからゆっくりと見返して、「みなさん曲聴きたいと思うので解説控えめにしましょうか」という荒木さんの神配慮があったことを知った。
荒木さん、本当にありがとうございます。オタクの命が救われました。

長々と書いてきたが、イオ・ロアは私の10年という短くて長い音ゲー人生のうち、7年をともに過ごしてきたキャラクターである。
楽しいときも嬉しいときも、悲しいときも悔しいときもつらいときも、ずっと一緒だった。当然思い入れも深い。
こうなるともはや推しを通り越してのような気持ちで見てしまう。それがオタクのサガだから……。
今回の晴れ舞台は祖母目線で言えば七五三や入学式、あるいは成人式のようなものか。

こんなにめでたいことがあるか?いやない。

めでたいときにやるべきことはひとつ。


赤飯だ。

画像1


炊いた。

イオ・ロア本当におめでとう。






みんなも推しにめでたいことがあったら赤飯炊こうな。