異性の友達と排気口の劇を観に行った話

異性の友達と排気口の劇を観に行った。

えっ、それって観劇デートに行ったってこと?と思われるかもしれないが、まあ二人で観に行ったわけだし、デートかデートじゃないかって聞かれたら「どちらかといえばそう」という感じだ。いつも思うけどあのアンケート項目って参考になるのだろうか。「どちらかといえば楽しかった」みたいな回答をしたら四捨五入で「楽しかった」の人と同じカウントにされるんだろうか。知らんけど。

観劇デートというのはそもそもとても難しい。何が難しいかっていうと一番難しいのは何を観に行くかどうやって決めるかということ。同じ映画を観に行くのだって、メンズノンノの定番デートコースにあるくせしてだいぶハードル高いのに、演劇ときたら。いつも面白い劇団の劇を観に行って、その時だけつまらなかったら一体どうしたらいいんだ。いつも面白いだけに、その時がハズレでも責めるに責められないし。

なのでわりとすごく今回は誘うかどうか考えた。でも、今回誘った女性は邦ロック好きだったしTwitterで裏垢持ってそうな感じがしたし時折ポエミーなツイートにいいねしてたので排気口の劇も合うんじゃね?って思った。排気口は自分自身ワークショップに行ったこともあったし実際に観に行ったこともあったし、控えめに言ってただの大ファンだったので絶対的信頼感があった。排気口だったら劇団員が総辞職でもしない限り排気口らしい劇をつくってみせてくれるだろうと思った。そんなわけで手始めに排気口のnoteを何個か紹介してみたら感触も良かったんで、観に行こうよということで彼女のシフトが出た後に予定を聞いた。そしたら「9日の19時〜か10日の14時〜がいいです〜」と顔文字付きでラインが来たので、帰りに飲みに行けるかな〜という87%不純な動機で「じゃあ9日の19時にしよっか!」とラインを返した。

そのあとは排気口さんが観劇デートをテーマにしたnoteを上げてくれたのでそれをラインに送ったりした。情緒揺さぶる良いnoteだった。本筋と関係ないけどここに残しておく↓

当日になって「そういえば待ち合わせ場所とか連絡してなかったな」と思ってラインをしてみた。が、なかなか返信がない。あれ〜?と思ったが、よく考えたら今日は夜の回じゃないといけないって言ってたし、日中仕事なのかなと思ってマイナンバーカードの受け取りに行こうかなと思って時計を見た。そしたら時計の針は区役所の受付終了の時刻を指していた。まあ別の日に行けばいいや。

特にやることもなかったので早めに阿佐ヶ谷に行ったら思いのほか早く着いてしまった。カフェで時間をつぶそうかとも思ったが最近お金を使いすぎてるのでそれはやめようと思って、劇場近くの公園まで歩くことにした。そしたらめたくそに暑かった。でもこれはこれで、大学の時に好きな後輩とセカンドストリートまで自転車押して歩いた思い出を思い出すきっかけになって、なんかいい感じだなと思った。

公園に着いたら思ったよりめっちゃ蚊がいてムカついた。僕は蚊に刺されやすい。多分前世で蚊を殺す仕事をしていたのだと思う。なので公園で2分くらいベンチに座ったあと、さっさと待ち合わせの駅に戻ることにした。途中、球技場で野球をしている少年たちがいたので「おっさん!ちょっと審判やってくれない?」って言われるドラマみたいな展開を期待したけど当然のように何もなかった。

駅に戻るとわりといい感じの時間だった。阿佐ヶ谷駅の改札前で待っていたら彼女が現れた。赤のボトムスが鮮やかでよく似合っていると思ったがそれをいちいち言うのもなぁと思って言わなかった。日中は仕事だったらしいが、今日が連勤のラストで明日は休みらしい。いや別に、この情報には特に何の意味もない。全くもって。

本当は南阿佐ヶ谷の方が劇場に近いのは知っていたけど、阿佐ヶ谷から劇場に向かう道の方が僕は好みだったので待ち合わせは阿佐ヶ谷にしていた。劇場までに話したことはなんだったかあまり思い出せない。「僕は面白いと思うよ、でもあんまりハードル上げてもあれだから、適度にね」などと適当なことを言っていた。

会場に着くとちょうどいい感じの時間だった。靴裏の消毒もするんだースゲーと思いながら言われる通り消毒をした。劇場に入ると席の空間がだいぶ広めだった。「前来たときは結構満杯だったんだよ」と、知ったようなことを言ってみたりした。

パンフの文章や主催挨拶文は、長めに書かれている方が観るまでの暇つぶしができて僕は好きだ。排気口も、良い感じに長い文章を書いてくれていた。でも何が書かれてたかはほとんど覚えてない。「『元気でいようね〜』っていうのが難しいっていうのはなかなか大変なことだと思うんだ」みたいなことが書かれていて、確かにそーだなと思った。

換気があるよー、とか休憩があるよー、終演後挨拶がないよー、みたいな話を制作の人がしていた。制作の人の話が終わって、時折隣の彼女と話しつつ、開演を待った。

1作目が始まった。1作目は「明るい私たちのりびんぐでっど」という話だった。ゾンビホラーなので、着ている服と簡単な会話で話が飲み込めてわかりやすいなーという印象を持った。それから、あきら氏のやたらモテて女性を切って捨ててそうな感じ(ド偏見)がすごくリアルでよかった。そしてラストの村上さんの演技は素晴らしかった。儚い希望からの、美しい諦念だった。

休憩になった。2、3分なので感想を話すのも躊躇われ、パンフレットで1作目のキャストを確認するフリをして再開を待っていた。実際はキャスト表読むのなんて30秒くらいしかかからんのだけど。

2作目は「サッド・ヴァケイションはなぜ死んだのか」だった。思い切り風俗嬢の話で唐突に下ネタぶっ込んでくる感じの劇だったので、今回はそういうの普通に観れる系の人を誘っててよかったなと思った。でも別に下ネタが悪かったとは全然思っていなくて、物語自体もとてもよかった。世界を救うという厨二病的にも聞こえる宣言と、一方で狭いところに留まっている私たちの経済圏。でも小さな世界を救うことにも確かに意義はあって、そして世界の一部を失うことは誰にとっても決して簡単に受け入れられるようなものではない。でも往々にしてそういうのって、失って初めて気付いたりするものだね。と思った。

今回の休憩になった。隣を見たら、一瞬目が合った。一瞬だったのでよくわからなかったが、少なくとも「つまらん今すぐに帰りたい」ではなさそうだったので安心した。

3作目「右往私達左往」は、個人的に一番好きな作品だった。言ってしまえばベタな展開だった、ともいえるかもしれない。最初の方はハカセとヤスまじうぜーなwwwと思って、かおりの容赦ないツッコミで鬱憤を晴らしていたが、だんだんと物語の中でハカセやヤスの役割というか、存在感みたいなものが出てきて結構好きになった。いや、ハカセは最後まで結局あんまよくわかんなかった。そもそもなんでお腹の中の赤ちゃんなのに見た目浪人生なんだよ。血のつながった親子にしては顔似てなさすぎだろ。とか思ったけど、そんなものに意味なんてないのかもしれない。世の中に意味のないことはたくさんある。カラスが今日は電柱に止まってて明日は止まってないのにもどうせ意味なんてない。穂波さんがツイキャスで言っていたけど、意味のあるものだけで世界が構成されていたら僕たちは窒息してしまう。

ヤスの「俺は『普通』を手に入れるために必死になって頑張った」って話が個人的にはぐさりと来た。普通というのはいつもいつでもあるものではなくて、普通を維持するための努力というのが多かれ少なかれあったりする。そしてこれも、いざ失う時になって初めてそのありがたみを知るのだ。ヤスの一人カラオケ、めっちゃよかったなぁ。最初の方がヘタクソでサビになって調子が出てくるところが、すげえ俺じゃんってなってしまった。

ラストに流れるあの曲はなんだっただろうか。なんだっけなーコレ。声的にaikoではねーよな、でもサビはすげえ聞き覚えあるんだよなー、、と思っていたが結局思い出せなかった。

終演後はさくっと帰ろうと思ったが、そういえばボリボリ先生にステッカー買うよってツイキャスでコメントしてたのを思い出して、ステッカーを買った。500円でステッカー3枚は安い。てか台本も3本で500円かよ。やっす。排気口はチケ代も安いし、なんつーかもう少し商売っ気があってもいいんではないかと心配になる。ありがたいけども。

会場から出て駅に向かう。彼女に感想を聞いてみると「すごく面白かった!」と言われたのでとても安心した。せっかく誘ったのに楽しんでもらえなかったら非常にあれなので。役者さんもよかったし脚本も良かったねー、などという話をした。

阿佐ヶ谷で飲もうかとも思ったけど、話してるうちに商店街を抜けてしまったのでとりあえず電車に乗って新宿まで行くことにした。新宿に着いた後、山手線の駅名を見ながらどこで食べていくかを話した。韓国料理が好きということだったので新大久保に行くことにした。

新大久保の彼女行きつけのお店に行った。ご飯はスゲー美味しかった。サムギョプサルはサンチュを無料でおかわりできるってことを知った。あとは観劇後の感想を話したけど、思ったより言葉が出てこなくて、結局8割は「タカシまじヤバかったよね」という話をしていた。ありがとうタカシ。

思うに、排気口って日常に溶け込む不思議な劇をつくっているような気がする。排気口の公演は劇場を出てぱっと終わる感じではなくて、とても不思議だ。けれども内容を忘れてしまったわけではなくて、ふとした時に「あの人があんなこと言ってたよな」って、偶然覚えていた夢の登場人物みたいに思い出すことがある。

ちなみに気になっていた3作目ラストの曲名は、二人でELTだっけ?なんだっけ?とか言って探して、My Little Lover「Hello, Again」だったことがわかった。こういう体験込みで排気口なんだろうな。

排気口、次は来年らしいけど。また観ようと思う。


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