2024 愛のもうひとつの名前2
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私はあいかわらず他人とは違うレイヤーにいて、周りからは無視されている。必要なときだけ存在を認識するようだ。
私は幽霊のように彼らのそばにいて、彼らの話に笑ったり不快になったりするけれど、彼らの恐怖を他人事だと感じる。
重い感情のリンクが切れていて、私は淡い光のなかでふわふわと幸せでいる。
どうやってこの世界を生きながら外に出ようかと考えている。
この貨幣経済はチートで、上はいくらでも紙を数字で生み出せるのに、私たちは紙に人生を支配されてしまう。
紙に取り憑かれ、振り回される馬鹿馬鹿しさを理解していない。
紙を貯めておくよう常に恐怖を煽られるのに、紙を貯めておけばインフレで目減りし、いずれ失われてしまう。
日々の稼ぎも政府に吸い上げられ、刻々と失われてゆく。
何のために紙を増やそうとしているのだろう。真面目に働いても奴隷小屋をひとつかふたつ建てられるだけ、子供を育てることもままならないこの社会で。
私たちは何を楽しみ、喜びたかったのか。何をやりたくて生きていくのか、ほんとうの魂の表現を封じられている。
本当の私の望みは何だったのか。奴隷と気づかずに、インスタントな幸せに目隠しされて生きていけばよかったのだろうか。
あなたの、私の望みはいったい何だったのだろう。
小さな箱にはなぜ、私たちの恐怖を煽る予言者しかいないのだろう。
子供のころ、死とは運の悪い人だけに訪れるものと思っていた。
運の悪い人が事故や病気になって死に、老人はまた赤ん坊に戻って人生をやり直すのだと。
そのころ、私は世界だった。私は私を食べ、私を浴び、私の温かさを全身に感じた。
が、ある日、私の運命が戸口でことりと倒れたまま動かなくなった。
運命が動かなくなったのに、私はまだ息をして動いている。
そのときに私は初めて私ではないものに出会った。
私の不幸の始まりだった。
そして私はそのころから学校に行き始めた。
同質であることを強要されながらほんの少しの違いでカーストを構成する、奴隷たちの学校だった。
愛といいながら区別を、規律といいながら服従を学ぶ、奴隷としての心得を叩き込むシステムの始まりだった。
私は常に上級生にいじめられていた。私は権威に服従しない、わきまえない子供だった。
私にとって彼らはどうでもいい存在で、私の視界に彼らは入っていない。彼らはそれが気に食わないのだった。彼らにとって他者とは支配者か犠牲者のどちらかであった。彼らは他者のパワーバランスを探るのがとてもうまかった。
空気のように他者を無視する私を不気味に思い、私を彼らに屈従させようとした。
私は彼らに従わなかった。勝ちはしなくても負けることがない私は、彼らを軽蔑しながら無視して歩いていた。
――○○ちゃんは入れてあげない。
ボスの言葉にふうん、と冷めた返事をして、私は砂場からグラウンドに遊びに行った。
あの人たちは弱いから集団でひとりをいじめるのだ。
ひとりでかかってこられると大分手加減しなければならない私は、馬鹿馬鹿しいと思いながら教室の隅でおとなしくしていた。
私は強いとわかっているので、他人をいじめて自分の力を確認する必要がなかった。
あとで、うっかり人を殺しかねないので、格闘技は習わないようにしようと心に決めた。
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