PTA役員の闇 250時間目(最終回)「PTA役員からの解放」
PTA活動の最終日、それは卒業式だった。
愛は静かに小学校の廊下をひとり歩いていた。
壁には過去の学校行事の写真が飾られ、その多くに愛の姿があった。彼女の表情は一枚一枚異なっていて、時には笑顔で、時には真剣な表情で子どもたちや他の保護者と向き合っている。
校舎の窓から差し込む日が、彼女の顔を柔らかく照らしていた。遠くから子どもたちの笑い声が聞こえる。それは愛にとって、PTA役員の活動をしていく中で、耳に馴染んだ声だった。
「あっという間だったけど、本当に長く長い間、PTA活動に関わってきた感じがする…」
愛はぽつりと呟いた。
卒業式でPTAの会長の最後のスピーチを聞いた。言葉は簡潔だが、感謝の気持ちがこもっており、愛も同じ気持ちだった。
式が終わり、小学校の玄関前にはPTA本部役員や教師たちが集まっていた。愛は促され挨拶をした。
「私たちの活動が、子どもたちの成長に少しでも役に立ったとしたら幸いです。次の役員の皆さんには、このバトンを渡します。また、新たなチェンジ・プラスでPTA活動にとりくんでいただければと思います。」
スピーチが終わると、多くの保護者たちが拍手を送り、何人かは涙を拭いながら彼女に感謝の言葉を述べた。それを受けて、愛は心からの笑顔を見せた。
家に帰る道すがら、愛はこれから始まる新しい生活に思いを馳せていた。これまでの経験を生かしながら、もっと自分の時間を大切にする生活を。そして、家族や自分自身にもっと向き合う時間を持つと決めていた。
「新しいスタート、ね。」
彼女は静かに呟き、前を向いて歩き始めた。夕暮れの空が、新たな章の始まりを告げるかのように美しく広がっていた。
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